はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第65章 自律神経を正常に2

WHOの定義で、45歳以上を中高年齢者、55歳以上を高年齢者、65歳以上を高齢者、75歳以上を後期高齢者、85歳以上を末期高齢者という。信長公記に、織田信長が幸若舞の敦盛「人生50年」と詠ったとあるが、寿命はずいぶん延びたものである。

トップへ戻る

1 自己催眠術

 1-1 予備知識

平井富雄博士が推奨される自己催眠術は、シュルツ博士の自律訓練法が土台としているが、だれにでも手軽に実行できるよう、平井富雄博士が工夫改良を加えたものである。自己催眠術の訓練は六段階に従って進める。

第一段階 ウデガオモイ(腕が重い) 完了

第二段階 ウデガアタタカイ(腕が温かい)

第三段階 シンゾウガシズカニウッテイル(心臓が静かに打っている)

第四段階 コキュウガラクダ(呼吸が楽だ)

第五段階 オナカガアタタカイ(お腹が暖かい)

第六段階 ヒタイガスズシイ(額が涼しい)

これらの六段階は一つ一つが独立したものではなく、一段階をマスターできれば次の段階への移行が容易になるというように、難易度や安全度を勘案したうえで合理的に配列されている。従って、第1段階からひとつずつ順を追って進んでいかなければならない。

トップへ戻る

 1-2 練習場所

最初は外的な影響を受けやすいので、自分の部屋など静かで落ち着けるところが良い。自分の部屋に閉じこもるのが理想的で、明るすぎないこと、熱くも寒くもないこと、通風状態が良いこと、などの条件を考慮できれば一層よい。

少し慣れてきたら、電車の中や公園のベンチなど、外的刺激の多いところでもできるようになる。ただし、どんな場所でも一定時間同じ姿勢でいられるところでなければならない。

なお、外的な刺激をなるべく少なくするために、練習中はメガネ、ベルト、ネクタイ、腕時計、靴下止めなど、身に着けているもので窮屈なものはすべてゆるめるか、取り外すことが望ましい。

トップへ戻る

 1-3 姿勢

練習を進めていくには姿勢がひじょうに大切である。少なくとも、最初のうちは指示通り正しい姿勢で練習してほしい。姿勢が悪いと、どんなに練習しても催眠状態に入ることができないし、練習中や練習後に、不快感や凝りに悩まさ腰掛姿勢れることがある。

姿勢は「腰掛姿勢」で硬い椅子はさける。椅子にふかぶかと腰掛け、足を床に着けて手を膝の上に軽く起く。両手は触れ合わないように少し離しておく。足のつま先をいくらか開き、両かかとはわずかに離す。体が左右どちらにも傾かず正面を向くようにする。

体全体の力を抜き、だらしなくならない程度に全身をリラックスさせる。頭が前へ少し垂れ気味で、背中が丸くなっていても全身の力が抜けているようなら良い。

なお、原則として練習中は目を閉じる。肢体への注意集中はうまくいくが、雑念が起こりやすく眠り込んでしまうことがある。できれば、半分目を開けた状態の「半眼」をお勧めする。

トップへ戻る

 1-4 練習中の心構え

基本的な暗示をたえず念頭に持ち続けることが大切で、「ウデガアタタカイ」と思うとき、これを言葉だけで考えず実際にそう感じるようにいつもつとめることが重要である。別なことを考えても催眠にかかるだろうか、という試みは好ましくない結果を生むことがあるので決してしてはいけない。

練習中に、腕の皮膚がくすぐったくなったり、蟻の走るような感じがしたら、直ちに催眠を終了・覚醒して、初めからやり直そう。

30分~1時間以上も練習しても成功しないようなら、体が催眠にかかりずらい状態にあると考えられるから、半日なり1日の期間をおいて再びやり直すとよい。毎日1セッション(3分~20分くらい)練習すれば、3日ないし7日間で「ウデガアタタカイ」感じを会得できる。

トップへ戻る

 1-5 練習回数と時間

自己催眠開始から終了・覚醒にいたる一回の練習時間は極めて短く、普通30秒から90秒(慣れてきたら、さらに1分、3分とふえる)くらいである。この短い練習を、何回か間を置かずに集中的に繰り返すのである。このように短時間の練習を何回か繰り返すことを1セッションという。

1セッションは5分ないし2時間である。1日に3度、朝・昼・夜に行うのが理想的である。それが無理なら朝と夜の二セッション、あるいは朝か夜の1セッションでもよい。大切なことは1セッションでもよいから、毎日継続させることである。とくに、練習を始めたばかりのときは、なるべく一日でも中断しないほうが良い。

初心者は一セッションで3回練習する。1回は30~90秒である。1回の練習が終わったら、催眠の自覚がなくてもきっぱり終了・覚醒し、直ちに第2回目に入る。そしてその終了・覚醒後、ただちに3回目にうつる。

1回の練習に連続して3回分の時間を費やすよりも、短く断続したほうが効果的である。もちろんこれは初心者の場合で、少し訓練に慣れてきたら各階に練習を長く続けたほうが効果的である。かつ、1セッションの練習回数も3回に限らず自由に増やしてよい。

なお、練習はいつ行ってもよいが、朝起きたときと就寝前が最も効果的である。要は練習するときを、食事前とか就寝前というように、きちんと決めておくことである。

トップへ戻る

 1-6 終了と覚醒

一定の練習が終わったら自分で覚醒する。目を開けて、まず両腕、次に両足を2回強く屈伸し、次に頭を2回左右に傾けてから深呼吸を2回行う。終了・覚醒の順序を狂わせると、めまいなど好ましくない結果が出ることがあるので、めんどくさがらずにきちんと守ってほしい。

練習を進めていくと、同じ催眠に入るまでに要する時間は次第に短くなり、外的刺激にあまり影響されずに効果的に暗示を受け入れるようになる。そして、ある段階の自己催眠術をマスターすると、その催眠効果は以後の段階にうつっても持続する。

つまり、第1段階をマスターしたときには、第2段階の催眠の時に同時に第1段階の催眠も起こっているのである。第6段階の暗示が短時間で実現されるようになれば、自己催眠はいちおうマスターしたことになる。

6段階の基本催眠は、毎日効率よく練習していけば、約四週間でマスターすることができる。練習の継続性や個人差によって、四週間より長くかかることもあるが、練習回数を増やしたり、練習中の条件の改善に留意すれば、案ずるほど長くはかからない。

練習者はまず、最初の1段階を完全にマスターすることに努力してほしい。というのは第1段階「ウデガオモタイ」と第2段階「ウデガアタタカイ」の2段階をマスターして強化訓練を続行するだけでも、自己催眠によってもたらされる、ほとんどすべての効果を享受することができるからである。

第1段階と第2段階をマスターすれば、後の段階は比較的容易に習得することができる。第1段階の訓練で、最初に本格的な自己催眠の状態を経験できるまではちょっとした忍耐が必要である。

練習中に眠り込んでしまったら、目覚めた後に必ず最初からやり直すことである。とくに、練習終了・覚醒の手続きを完全に行うこと。四股の屈伸は怠ってはいけない。

トップへ戻る

2 第二段階

 2-1 自己催眠に入る準備

第2段階は自己催眠術は、筋肉の末梢血管の血行をよくすることによって、体全体と心の緊張をとく自己催眠術である。

正しい姿勢をとったら軽く目を閉じて、30秒から1分くらいこのままの状態で、頭の中から雑念を追い払う。何も考えてはいけない。すべてを忘れて頭を空白にしてしまう。ただし、眠ってしまわないように。あなたの心は少しずつ落ち着いてきた。

トップへ戻る

 2-2 ウデガアタタカイ

自己催眠に入る準備はできただろうか。右利きの人は右腕、左利きの人は左腕に暗示をかける。まず、利き「ウデガオモイ…ウデガオモイ…(つづけて)ウデガアタタカイ…ウデガアタタカイ…ウデガアタタカイ…」と何度も繰り返す。

「思う」というより、そう感じるようにつとめるのだ。すぐに腕がだるくなってくる。腕の筋肉に注意を集中しよう。しばらくして、自分の周囲がシーンとしてくるように感じられる。そうすると脳裏に自分の腕の姿が写ってくる。

あるいは、腕の中の筋肉や血管の様子が頭に浮かぶだろう。もう少しだ。「ウデガアタタカイ」を繰り返し、腕の中の内部の様子を思い浮かべていると、なんとなく腕が温かいという感じがしてくる。

初めは徐々に、しかもほんの数秒かもしれない。しだいに温かくなる度合いが強くなり、継続的になってくる。「ウデガアタタカイ…ウデガアタタカイ…ウデガアタタカイ…」と何度も繰り返しつつ、腕の筋肉に注意を集中しよう。

いつでも一定の条件の下で、両腕両足に「温かい感じ」を、短時間(20~40秒)のうちに起こせるようになれば、第2段階の自己催眠術は完全にマスターしたことになる。

トップへ戻る

 2-3 催眠を解く

催眠を解こう。まず、そっと目を開ける。すわったまま腕と足を軽く2回屈伸し、頭を左右に2回ゆっくり傾け、次に深呼吸を2回繰り返す。この催眠終了の手続きは、第2段階以後も共通であるから、順序を誤らないようにしてほしい。

また、練習が終わったとき、座っている姿勢から急に立ち上がるようなことは決してしてはいけない。

 2-4 練習中の注意

練習中に、咳やくしゃみが出そうになったり、肌にアリが這うような感じがあったら、直ちに訓練をやめ、これらに刺激を十分に取り除いたのち、直ちに初めから練習を再開する。

第2段階も自己催眠の入口であり、この「ウデガアタタカイ」という自己催眠術さえ体得できれば、後の四段階はそれほど苦労なく進んでいける。そして、この段階をマスターすれば、あとはその強化訓練をするだけで、自己催眠による生理・心理的な効用をほとんど享受することができる。

全く初めての人は、本格的催眠状態を最初に体験するまでは少し時間がかかるだろう。無理に力まず試してほしい。最初のうちは1回の練習を30秒~90秒でやめなければいけない。1回が終わったら直ちに次の練習に入る。

そして、1セッションの回数も3回にとどめること。ただし、このような規則を守らなければならないのは、最初の数回である。少し慣れてきたら、2分、3分、5分と次第に延長していく。1セッションの回数も自由に増やしてよい。

すぐに催眠状態が体感できないからといって、焦ることは禁物である。とくに暗示効果を強めようと、1回の練習時間をむやみに伸ばすのはかえって逆効果となることが多い。焦ると取り返しがつかなくなることもあるので注意してほしい。

毎日少なくとも1セッション(3分から20分くらいが適当)ずつ練習すれば、7日から10日目には、最初の自己催眠を体験できる。第2段階の訓練がなかなか進捗せず、いくら練習しても催眠中や終了後に不快感が伴う人がいるかもしれない。

こういう人は、高・低血圧、脳貧血などの血圧関係に異常のある人と、喘息やジンマシンなどのアレルギー体質の人、女性では月経困難の傾向のある人たちであることが多い。これらの人は第2段階の訓練をやめ、すぐ第3段階の訓練にうつってほしい。特に持病のある高齢者はこの訓練を避けてほしい。

トップへ戻る

 2-5 強化訓練

右腕ができたら左腕、右足のつぎに左足、さらに両手両足という順序である。要領は右腕の場合と同じである。一方の腕ができれば、あとは簡単。あわてずに自信をもって練習することだ。

右腕→左腕→右足→左足、さらに両腕、両足とする。右腕が温かくなる自己催眠に成功したら、5日~7日の追加訓練で、温かい感じを四股から全身へと広げることができるだろう。

注意集中後20秒~40秒で両腕両足、さらに全身が温かく感じられるようになったら、第2段階は完成である。第2段階をマスターすると、チアノーゼ(紫斑)、冷え性、寒がり、血行不良からくる種々の障害に有効である。

第2段階終了後に、カラスの足跡、つまり目尻のしわが気になってきた女性は、「目の周りが温かい」という暗示が効果的である。「メノマワリガアタタカイ…メノマワリガアタタカイ…メノマワリガアタタカイ…」を繰り返すことにより、カラスの足跡は自然に消えていくだろう。

トップへ戻る

参考資料:新・自己催眠法(長尾盛之助、鶴書房)、自己催眠術(平井富雄、光文社)、公益財団法人長寿科学振興財団ホームページなど。