はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第19章 脳梗塞の最新治療

2017(平成29)年5月20日午後、札幌市医師会館で開催された札幌市医師会主催の家庭医学講座「脳梗塞の最新治療」と題した4人の専門医師の講演「血圧を下げて得する内科治療、血管を広げてつなぐ外科治療、脳梗塞と魔法の薬、脳を救え!」の要約です。

1 血圧を下げて得する内科治療

講師は中村記念病院診療本部長で脳卒中センター長の上山憲司先生です。

 1-1 本邦の高齢者率

西暦2010年から2015年を境目としての日本の人口は減少に向かうと考えられています。人口減少の大きな原因は、19歳以下の急激な人口減少と20歳~64歳までの人口の自然減少です。ところが2015年以降は65歳~74歳までの人口現減少はほぼ一定ですが、75歳以上の高齢者の人口割合は微増していきます

本邦の高齢者率のグラフは、2010年までの数値は総務省の国勢調査結果に基づいています。2015年以降は国立社会保険・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果です。ただし、平成24年度の高齢社会白書1950年~2010年の総数は年齢不詳を含みます。

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 1-2 脳卒中患者は今後も増加

日本の脳卒中有病者数の推測値は、秋田県の実態調査結果として得られた脳卒中発症登録データの数値を利用して、全国の脳卒中の推計値を算出したものです。2010年の推計患者数は、発症者数が年間291千人、有病者数が約310万人、要介護者数は185万人と推測されています

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 1-3 脳卒中のタイプ

脳卒中には、「血管が詰まるタイプ」と「血管が破れるタイプ」の二種類があります。血管が詰まるタイプは脳梗塞と言われ、ラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞・心原生脳塞栓症の三種類があります

ラクナ梗塞は直径15mm以下の細い血管が詰まる小さな梗塞で、高血圧が主な原因であるといわれています。アテローム血栓性脳梗塞は、頭蓋内や頸動脈などの太い血管の内部がアテローム(粥状になったコレステロール)による動脈硬化で狭くなり、そこに血栓ができて詰まります。心原性脳塞栓症は心房細動で心房内にできた血栓が血流に乗って脳の太い血管に詰まります。

血管が破れるタイプには、脳出血とくも膜下出血の二種類があります。脳出血は、脳内の血管が何らかの原因で破れて脳内に出血した状態をいいます。脳出血が起きると、意識障害・運動麻痺・感覚障害などの症状が現れます。

脳は3層の膜(まく)でおおわれ、脳の表面を直接おおっている軟膜(なんまく)、軟膜の上をくも膜、くもの上を硬膜(こうまく)がおおっています。くも膜と軟膜の間に隙間があり脳脊髄液(のうせきずいえき)が循環しています。血管が破れて脳脊髄液が循環している隙間に出血するのがくも膜下出血です。

下の写真は、2015年10月28日にMRIで撮影したはげちゃんの写真です。右内頸動脈が動脈硬化で3分の2が詰まり、狭くなった部分に血栓ができて完全に血流が止まりました。このため右内頸動脈は写っていませんが、血流がある左右内頸動脈は太く写っています

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 1-3 脳卒中と脳梗塞の内訳

脳卒中の約95千人の患者のうち、脳梗塞が75.5%、脳出血は18.5%、くも膜下出血は5.6%でした。脳梗塞の約3万人の患者はラクナ梗塞が最も多く31.2%、心原性脳塞栓症が27.7%、アテローム血栓は26.7%、その他の脳梗塞が8%、アテローム塞栓は最も少ない6.4%でした。

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 1-4 脳梗塞の危険因子合併率

脳梗塞を引き起こす危険因子(リスファクター)が多くなるほど、脳梗塞を発症する危険が高まります。脳梗塞を起こした患者が抱えていた危険因子を調べると、次のような病気を合併していました。

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  1-4-1 ラクナ梗塞

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  1-4-2 アテローム血栓性脳梗塞

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  1-4-3 心原性脳塞栓

ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞と異なり「心房細動」が増加しています。

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 1-5 高血圧と脳卒中

脳卒中は脳の血管が破れたり詰まったりし、その部分の脳の働きが失われてしまう状態です。脳卒中のリスクファクター(危険因子)には、高血圧・糖尿病・心臓病や不整脈・高脂血症・喫煙などさまざまな要因を挙げられますが、この中で最大の危険因子は「高血圧」です

厚生労働省の調査によると、収縮期血圧が140から159mmHgの軽症(Ⅰ度)高血圧の人では、脳卒中により死亡する危険度が至適血圧者(110~119mmHg)の約3倍になります。収縮期血圧が180mmHg以上の重症(Ⅲ度)高血圧になると、この危険度は7倍以上にもなります。

血管の内壁は血液に含まれている脂肪などが付着して、年齢を重ねるにつれて狭くなっていきます。狭くなった血管内を必要な量の血液を流すためには圧力が必要になります。血液を流すために圧力が上がると血管壁を押し広げ、圧力に耐えられなくなった血管壁が破れると脳出血が起こます。

血管壁が破れなくても、年齢を重ねるにつれて狭くなった血管の内壁にさらに脂肪などが付着して細くなり、血管が詰まってしまう状態が脳梗塞です。脳梗塞が起きると、その先に酸素や栄養が届かないために脳細胞が壊れてしまいます。

甲斐の武田信玄と北信濃の支配権を巡って川中島で戦った越後の上杉謙信は、厠(かわや=トイレ)で意識を失いました。上杉謙信は寒冷地の越後を居城としていたことから、かなり塩分の多い食事を取っていたようで、脳出血を起こしたものと考えられます。

そのうえに多量の飲酒癖があり、度重なる合戦のたびにストレスが重なり、左足を引きずっていたことから右脳に軽い脳出血があったと思われます。厠で踏ん張ったときに、血管が裂ける脳出血が起こったのでしょう。享年49歳でした。

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 1-6 脳卒中の予防

高血圧治療ガイドライン2014によると、目安で示す診療室血圧と家庭血圧の目標値の差は、診療室血圧140/90mmHg未満、家庭血圧が135/85mmHg未満が高血圧の診断基準であることから、この二者の差をあてはめました

診療室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合は家庭血圧による診断を優先します。

降圧目標

       項目  診療室血圧  家庭血圧
若年・中年・前期高齢者の患者140/90mmHg未満135/85mmHg未満
後期高齢者の患者150/90mmHg未満145/85mmHg未満
糖尿病の患者130/80mmHg未満125/75mmHg未満
蛋白尿陽性の患者130/80mmHg未満125/75mmHg未満
脳血管障害の患者・冠動脈疾患の患者140/90mmHg未満135/85mmHg未満


 後期高齢者の患者の場合、忍容性があれば診療室血圧は140/90mmHg未満、家庭血圧は135/85mmHg未満となります。

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脳卒中患者の降圧目標

  項目  診療室血圧  家庭血圧
脳卒中の患者140/90mmHg未満135/85mmHg未満

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降圧療法を行うための脳卒中患者のカテゴリー分類

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脳卒中患者の降圧目標

     項目  診療室血圧  家庭血圧
脳卒中患者で抗血栓薬あり130/80mmHg未満125/75mmHg未満
脳卒中患者で糖尿病患者
脳卒中患者で蛋白尿陽性
脳卒中の患者
  かつ
抗血栓薬なし
  かつ
糖尿病なし
  かつ
蛋白尿陰性
140/90mmHg未満135/85mmHg未満

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 1-7 家庭内血圧測定

自宅で血圧を測定するときは次の条件を守ってください。

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  1-7-1 装置

上腕カフ・オシロメトリック法に基づく装置。

  1-7-2 測定環境

① 静かで適当な室温の環境。
 ② 原則として背もたれ付きの椅子に足を組まずに腰かけて1~2分の安静後。
 ③ 会話を交わさない環境。
 ④ 測定前に喫煙・飲酒・カフェインの摂取を行わない。
 ⑤ カフ位置を心臓の高さに維持できる環境。

  1-7-3 測定条件

a 朝 起床時1時間以内
     排尿後
     朝の服薬前
     朝食前
     坐位1~2分安静後

b 晩 就寝前
     坐位1~2分安静後
     夕食前
     晩の服薬前
     入浴前
     飲酒前

・ 高血圧:朝と晩のそれぞれの平均値が135/85mmHg以上の場合です。

・ 正常域血圧:朝と晩のそれぞれの平均値が135/85mmHg未満の場合です。

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 1-8 夜間血圧変動タイプ

一般的に血圧は活動している昼間は少々高く、睡眠中は若干低くなる「ひしゃく型」になります。ところが、睡眠中に血圧が変動しない「平坦型」や、極端に血圧が低下する「過度のひしゃく型」がある一方で、睡眠中の血圧が上昇する「上昇型」があります

夜間血圧変動タイプ別の24時間血圧推移

夜間血圧変動タイプ別の脳卒中発症率

高血圧症患者575例にABPM及び脳MRIを実施して、平均で1ヶ月の間追跡調査しました。夜間血圧と脳卒中の発症頻度について比較検討すると、過度のひしゃく型と上昇型は脳卒中の発症リスクが高くなりました。

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 1-9 早朝血圧と脳卒中のリスク

40歳以上の脳卒中既往歴のない一般住民1702名に、早朝家庭血圧値と脳卒中の危険度との関連を10年間追跡検討しました。血圧が135mmHg以上になると脳卒中のリスクが格段に上がります

脳卒中のリスを解消する様々な薬がありますが、もっとも最良の方法は食生活を改善することです

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2 血管を広げてつなぐ外科治療

講師は、中村記念病院副院長の大里俊明先生です。

脳血管のバイパス手術では血管吻合術が行われます。心臓バイパス手術や臓器移植手術などにも欠かせないのが、血管同士をぴたりと合わせてつなぐ外科医の技術です。この血管手術はひとりの青年の努力から生まれました。

1894年にフランス南東部の都市リヨンでアレクシス・カレルが研修医として働いていた病院に、博覧会に来ていたフランス大統領が暴漢に腹部を刺されて救急移送されてきました。

腹部の大血管が傷ついて大出血を起こしているのを見た外科医たちは、血管の縫合は不可能と判断して救命を断念しました。カレルは「皮膚や腸を縫えるのだから、大血管も縫えるはずだ」と主張しましたが、研修医の主張は受け入れられずに大統領は命を落としました。

その事件をきっかけに、カレルは血管の縫合法を徹底的に研究しました。リヨンは絹織物業の盛んな都市だったので、彼は街の刺しゅう師やレース編みの女性職人たちから裁縫や運針を学び、腕を磨きました。その努力は実を結び、血管と血管の口を隙間なく合わせる「三角吻合(ふんごう)術」を完成したのです。

これにより大血管からごく細い小血管までの吻合が可能になりました。血管のつなぎ替えやバイパス術、そして臓器移植に至るまで目覚ましい業績を残し、アレクシス・カレルは初のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

アレクシス・カレルの三角吻合術は「端端吻合」とも呼ばれ、最も基本的な吻合術として今日でもよく使われています。体温計や血圧計で有名なテルモのWebページより、カレルの三角吻合術の写真を転載しました。ありがとうございます。

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 2-1 動脈硬化

現代はファーストフードなど食事が欧米化したために、高血圧や高コレステロール血症さらに糖尿病が増加しています。

下の写真はアテローム性動脈硬化症の進展状態です。左端の血管は内壁に脂肪が付着して層ができ、血管が少々細くなっています。中央の血管はさらに内部が細くなりはじめています。右側の血管は内部がほとんど詰まってしまいました

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 2-2 血管吻合のバイパス術

脳神経外科手術の歴史で画期的なことは、1960年代に手術用の顕微鏡が導入されたことです。これにより細い血管をつなぐというバイパス手術(血管吻合術)により、「浅側頭動脈と中大動脈バイパス術」が可能となりました。

脳梗塞・もやもや病・アテローム血栓症・心原性脳塞栓などを患った場合は、内頸動脈高度狭窄又は閉塞、中大脳動脈狭窄又は閉塞などで、その狭窄又は閉塞部位よりも末梢側の脳血管の血流が少なくなるために脳虚血状態となり、この部位の血流障害が更に加わると脳梗塞になります。

脳梗塞になるかどうかのギリギリの血流状態の患者の場合は、脳梗塞を予防するために脳血流を増やすバイパス術が有用です。前頭葉側と側頭葉側のそれぞれ1本ずつ、計2本の血管を吻合します。また、後頭動脈と後下小脳動脈のバイパス術などでは1本の血管を吻合します。


左内頸動脈の狭窄

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 2-3 脳梗塞の治療

脳梗塞の治療は、症状によって内科的治療と外科的治療があり、外科的治療には開頭手術(切る手術)血管内手術(切らない手術)があります

下の写真は、バイパス術(血管吻合術)の手術後CT血管写真です。


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 2-4 こんな症状が出たら

下に書かれているような症状を感じた時は、すぐに救急車を呼んでください! 大したことはないだろう、少し時間をおけば治るだろうと考えていたら、手遅れになることもあります

脳卒中は時間との勝負です。どうしたのだろうと考えている暇があったら、すぐに救急車を呼んでください。

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3 脳梗塞と魔法の薬

講師は、柏葉脳神経外科病院院長の丸一勝彦先生です。

 3-1 脳卒中

脳卒中は「つい今まで元気だったのに、卒然として中(あた)る」という意味で、脳の血管におこる病気(脳血管障害)ですZ。脳の血管が急に破れたり、詰まったりして脳の血液の循環に障害をきたし、様々な症状を起こす病気です。

現在国内では23秒に1例発症し、発病率は10万人に110.8人となっています。

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 3-2 脳卒中予防十か条

① 手始めに 高血圧から 治しましょう。

② 糖尿病は 放っておいたら 悔いが残る。

③ 不整脈 見かけ次第に すぐ受診。

④ 予防には タバコを止める 意志を持て。

⑤ アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒。

⑥ 高すぎる コレステロールも 見逃すな。

⑦ お食事の 塩分・脂肪 控えめに。

⑧ 体力に 合った運動 続けよう。

⑨ 万病の 引き金になる 太りすぎ。

⑩ 脳卒中 起きたらすぐに病院へ。

番外編:お薬は 勝手にやめず 相談を!

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主要疾患別死亡率の年次推移

厚生労働省の平成26(2014)年の人口動態統計で、脳卒中は日本人の死因の上位を占めます。

 3-3 脳出血から脳梗塞へ

厚生労働省の平成24(2014)年人口動態統計によると、1960年に脳卒中で死亡された方の死亡原因の1位は脳出血、2位が脳梗塞でした。2012年に脳卒中で死亡された方の死亡原因の1位は脳梗塞、2位が脳出血になっています

1960年に76.8%を占めていた脳出血は、2012年になると27.6%に減っています。1960年に13.3%だった脳梗塞は、2012年には59.2%に増加しています。脳卒中の主役は脳出血から脳梗塞へ移りました。

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 3-4 脳血管疾患分類における臨床病型分類

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 3-5 頸動脈の手術

  3-5-1 頸動脈の閉塞状態

血管壁にこびりついたコレステロールをプラークといいます。MRIやX線写真で見ると血管の詰まって細くなっているいる様子が分かります

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  3-5-2 頸動脈内膜剥離術

下の写真は、頸動脈の内壁に張り付いたプラークを取り除く手術のようすです。

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  3-5-3 頸動脈から剥離したプラーク

頸動脈内から取り出したプラークを開いた写真です。

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 3-6 心原性脳栓症

心原性脳栓症(しんげんせいのうせんしょう)は、心臓の中で出来た血栓(けっせん=血の固まり)が首の左右に位置する頸動脈(けいどうみゃく)を通って脳の太い動脈に詰まってしまうことで起こる脳梗塞です

脳梗塞の約25%を占め、高齢者の増加に伴ない増加傾向にあります。高齢となって心房細動という不整脈が発生し、心臓内に血栓ができて脳梗塞を発症することが多く、心筋梗塞・人工弁・心筋症・感染性心内膜炎や心臓腫瘍なども原因と考えられます。

心原性脳塞栓症は、比較的太い血管が急に詰まるために脳梗塞の範囲が広く、意識障害や重度の麻痺が生じて一回の発症で寝たきりとなるなど、重篤な脳梗塞となることが多いです。

ワルファリンという薬は安価ですが、一緒に飲む薬や食物で効き目が大きく左右され、定期的に採血で効き目をチェックしなければならないのが欠点でした。これらの問題がほぼ解消され、しかも脳出血の危険が少ないといわれている魔法の薬「t-PA」が最近発売されました。

急性期: t-PAを投与します。血栓除去・血栓溶解術。

急性期~慢性期:血の塊ができにくくなるような治療。(ワルファリン・DDAC)リハビリ加療。

心原性脳栓症の発症から3時間以内に使用すると、劇的な効果が見込めます。2012年10月に脳卒中学会はt-PA適正治療指針で、虚血性脳血管障害患者は発症後4.5時間以内に使用することと延長しました。

t-PAの有効率

・ 内頸動脈(ICA) 11.0%

・ 脳底動脈(BA)  23.6%

・ distal M1  37.8%

・ 中大脳動脈     40.7%

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 3-7 FASTの呼びかけ

国立循環器病研究センターの「新しい脳卒中医療の開発と均てんのためのシステム構築に関する研究」班が、平成22年度循環器病研究開発費で作成した「FASTを呼びかけるポスター」をご紹介します。公益財団法人循環器病研究振興財団の「知っておきたい循環器病のあれこれ:脳梗塞が起こったら」より転載しました。ありがとうございます

何かへん……おかしいな……もしかして……「脳卒中では!?」と思ったら、時間との勝負です。すぐ救急車を呼んでください。

日本人向けのポスターですが、英語を使って「FACE(顔の麻痺)・Arm(腕の麻痺)・Speech(言葉の障害)に気づいたら、Time(発症時刻)を確認して」救急車を呼びましょう。チェック内容の頭文字を取り「FAST」としています。

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4 脳を救え!

講師は、社会医療法人医翔会札幌白石記念病院脳血管内治療センター長の野村達史先生です。

 4-1 脳卒中の障害部位

ラクナ梗塞は、多くは穿通動脈の病変による小梗塞です。アテローム血栓性脳梗塞は、粥状硬化による狭窄や閉塞が起きます。心原性脳塞栓症は、心内血栓が流れてきて太い血管が詰まる症状です。脳出血は細い血管からの出血で、くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂によりくも膜の隙間に出血したものです

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 4-2 脳梗塞で現れる症状

  4-2-1 小さな血管の場合

片麻痺、感覚障害、ごく軽い麻痺と同じ側の運動失調、構音障害などが現れます。

  4-2-2 大きな血管の場合

失語、言語障害、同名半盲、半側空間無視、失行、失認などが現れます。

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 4-3 脳梗塞の病巣の拡大

心源性脳塞栓症の病巣の拡大は、時間の経過とともにどんどん梗塞は大きくなっていきます。発症から24時間後には脳のおよそ4分の1にまで梗塞が広がってしまします。治療は時間との勝負になります。

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 4-4 脳梗塞の事例

自宅で倒れていたところを家族に発見された72歳の女性の脳の写真です。左内頸動脈が詰まって左脳への血流がありません。発見されたときには意識障害があり、右片麻痺が見られました。脳梗塞が発症してから数時間が経過していたため、残念ながら助けることができませんでした。

脳梗塞は時間との勝負になります。早期に異常を発見すれば助かります。顔・腕・言葉に違和感があれば、すぐ救急車を呼んでください

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 4-5 脳梗塞の症状

脳梗塞は「突然、意識を失って倒れる病気」ではありません。このようなひどい症状はごく一部だけです。血流が減ることでダメージを受ける脳の場所やその程度により様々な症状が起こります。

脳卒中の症状は突然現れ、脳卒中が起こった時間がはっきりしています。症状が短い時間のうちに軽くなり、消えることもあります。様子をみているうちにどんどん悪化し、他の症状が加わり、いったんは消えた症状が再び現れて、元に戻らないこともあります。

直ちに119番に電話して救急車を呼び、脳梗塞の専門病院で診てもらうことです。重症の場合はもちろん、軽症と思われる時も救急車を利用してください。これは一刻も早く搬送するためであり、また途中で症状が悪くなる危険性もあるからです。

脳梗塞の最も効果的な治療は、脳梗塞が起こってから時間があまりたっていない時(早期)にしか行えません。効果があるかどうかは時間との勝負であることをよく覚えておいてください

覚えておきたい脳梗塞の症状のイラストは、国立循環器病研究センターの循環器病情報サービス「脳梗塞が起こったら」より転載しました。ありがとうございます。

覚えておきたい脳梗塞の症状

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謝辞:文中に掲載した写真は、プロジェクターで投影されたものを撮影して転載しました。ありがとうございます。