はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第21章 星が消えるとき

もし恒星がすべて無くなったとしたら、真っ黒な宇宙は想像の世界ではなく現実に訪れる未来です。空を見上げても輝く星が見なくなる時が、いずれ必ずやってきます。恒星は宇宙のすべての生命の源です。それが永遠に消え去ろうとしています。

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1 壮大なドラマ

 1 太陽はいつかは死ぬ

恒星を死へ追いやるものとは、光を失った生命はどうなるのでしょうか。46億年前からわたしたち地球を照らし続けてきた太陽、地球の生命はその恵みを受け繁栄しました。宇宙には暗い運命をたどった惑星系も存在します。

私達が毎晩見上げる宇宙には星の亡骸も浮かんでいるのです。地球から400光年のところにある恒星、SBSSG1228の周囲はチリなどが浮かぶ円盤に囲まれています。SBSSG1228は白色矮星と呼ばれる死んだ恒星です。

外装が剥がれて中心核だけになり、大きさは地球ほどなのに質量は太陽の半分ほどもあります。2018年5月、世界最大のカナリヤ光学カナリヤ光学大望遠鏡大望遠鏡でSBSSG1228の観測が行われました。すると白色矮星を公転する天体が見つかりました。

直径650キロにも満たないその鉄の塊は、破壊された惑星の中心核のようで、死を迎えたかっての惑星のようでした。宇宙に浮かぶ墓場となってしまったこの惑星系は、私達の太陽系の未来の姿でもあります。太陽系もいずれあのようになるのです。

太陽もいつかは死を迎えます。その時は地球も道ずれです。銀河系のすべての恒星も、この運命から逃れることはできません。太陽は銀河系によくあるタイプの恒星で、つまり他の恒星も太陽と同じく白色矮星になり、それらを公転している恒星も同じ運命をたどります。

2018年7月、太陽系物理学者が変わった試みに挑みました。恒星の音を聞こうとしたのです。恒星の内部ではガスが対流したり、その流れが乱れたりすることで音が発生しています。大勢が叫んでいるような音です。

この音波が恒星の表面を震わせて、音がその星の奥深くで何が起こっているのかを教えてくれるのです。地球では地震波から地球の地中の様子を知ることができます。同様に音波から恒星内部の様子が分かるのです。

内部を調べれば、その星がどのように生きているか、そしてなぜ死にゆく運命にあるのか分かります。恒星は中心核で軽い元素を反応させて、重い元素を作り出すことでエネルギーを得ています。水素爆弾と同じです。

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 2 惑星の末路

水素は圧縮すると高温になり核融合反応を起こします。すると、ヘリュウムが生成されて熱エネルギーが生み出されます。これは恒星共通の仕組みです。恒星は質量が大きく、自らの強大な重力によって収縮しようとしています。

それでもつぶれないのは、核融合反応によって生成されたエネエルギーのお陰です。押しつぶそうとする重力と、それを押し返えそうとする核融合エネルギーがせめぎあっているのです。恒星というものは、宇宙空間に絶えずエネルギーを放出しているので、一見重力に負けてしまいそうです。

でも、内部で起きている核融合反応でこうしたエネルギーは補充されます。それによって、内部の熱と圧力が保たれるため、重力とのバランスは簡単には崩れないのです。この均衡を維持できるのは太陽ほどの恒星ですが、100億年ほどで核融合の燃料が尽きてしまいます。

燃料を使い果たした恒星を待ち受けるのは死です。例えば、J2821は1億年ほど昔に死と向かい合い始めたとされています。最初の段階は膨張と巨大化です。中心核の水素が尽きると、外側の層が膨張して赤色巨星になります。

赤色巨星になったJ2821の半径は、6500万キロ以上あったと推定されます。太陽のような恒星は決して静かに死んでいきません。その過程は荒々しいものです。赤色巨星になった後は、自身のガスをそこら中に吐き出し飲み込まれる惑星ます。

膨張するJ2821は、徐々にその周囲を回る惑星へと迫ってきます。惑星は飲み込まれるか、灼熱地獄と化すしかありません。大気は失われ、海は干上がります。それでも何度か消滅を免れた惑星がありました。

2018年に見つかった惑星は生き残りです。恒星の死を乗り切り、次の展開を待つかのように宇宙をさまよっていました。赤色巨星の外側の層は、膨張した末に失われます。残された中心核は収縮し、白色矮星に変換します。

そしてついに、有一生き残った惑星に魔の手を伸ばします。白色矮星は重力が非常に大きいので、惑星は徐々に引き寄せられていきます。白色矮星に向いている側と向いていない側で、かかる重力の差が生じ惑星は引き裂かれます。

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 3 恒星の寿命

死んだ恒星が自分の惑星をむさぼるように破壊していくのです。私達の太陽もいずれはそうなります。J2821の餌食となった惑星は中心核を除いてバラバラになり、恒星を取り囲む円盤の一部となりました。地球も同じ運命をたどるのでしょうね。

飲み込まれる惑星

あの惑星の残骸は未来の地球です。この先地球は大気も地殻もマントルも奪われて中心核だけの星になるのです。太陽に焼きつくされた上に引き裂かれるのは、ずっと先のことです。太陽は現在45億歳であと50~60憶年の寿命が残っています。

恒星は生まれた時の質量によって寿命がきまります。宇宙では常に何かが破壊され死を迎えています。恒星も死ぬ運命にありますが、一斉に死に絶えるのではありません。あちこちの部分でポツポツと光が消えていくように見えるでしょう。最後に一つが消えたら真っ暗になります。

恒星の一生は生まれたときの質量によって、どんなふうに死ぬかも含めて決まります。太陽程度の大きさの恒星は、100憶年の寿命だと云われます。一方、大質量の恒星は早く死に至ります。

太陽は恒星の中では中くらいの恒星です。多くの星の中には1000万年の寿命というものもあります。大きな質量を持った星、大質量星が運される仕組みは、まだ解明されてはいません。すべての恒星は、チリとガスの雲が重力によって収縮して生まれます。

でも、大きかったり小さかったり、サイズがバラバラなのです。なぜそんな違いが生じるのか、何が大きさを決定づけているのかは不明です。謎を解き明かそうと、1万光年先にあるけ赤外線暗黒星雲へアルマ望遠鏡が向けられました。

そこには恒星の材料となる物質が高密度に集まっていて、恒星が誕生するに十分な広さも備わっています。しかし、恒星は見つからず意外な物質が見つかりました。重水素です。重水素は核融合反応の燃料となる物質です。

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 4 超新星爆発が生命の材料に

重水素は恒星に取り込まれて核融合に使われるので、すぐになくなってしまう傾向にあります。つまり、星雲の中に重水素が残っているというのは、星雲は恒星を生み出したことがないまっさらな状態だと云えるのです。

材料が豊富にあるにもかかわらず、恒星を生み出している様子が見られない星雲。何が原因なのでしょう。例えば、あまり動きがない穏やかな星雲では、重力により粒子が他の粒子を引き寄せることは比較的簡単です。超新星爆発

でも、もし内部で粒子が乱れ飛んでいたら、星雲内の乱流は重力とは逆の外向きの圧力を生み出します。そのため、星の形成を妨げるとされています。乱流が生み出す圧力が加わると、重力は劣勢に立たされます。収縮を起こすためにより大きな力が必要になってきます。

これにより星雲内で収縮が食い止められ、星が生まれにくくなっていると考えられます。しかし、重力が乱流の抵抗に打ち勝つことができれば、大質量の星を生み出すことが可能です。大質量星は時に、太陽の数百倍の質量を持ちます。けれども、寿命は長くありません。

大質量星が核融合に使える水素は中心核にあるものだけです。外側にある水素は燃料になりません。大質量星は重力も強大です。収縮するのを防ぐにはどんどん核融合を行わなければなりません。巨大な恒星の一生は刹那的です。

まぶしく光り輝き明るく死んでしまいます。燃料を使い果たすと、大質量星は自らの重力に耐えきれず収縮を始めます。そして爆発します。宇宙でもひときわ大きい爆発、超新星爆発です周囲の惑星は一瞬で蒸発してしまうでしょう。

しかし、爆発がもたらすものは破壊だけではありません。超新星爆発によって、恒星内で生成された重い元素が放出されます。新たな元素が作り出さ出ることもあります。こうした重い元素が生命の材料になるのです。

今存在しているのは、大昔の恒星のお陰なのです。遠い昔の恒星が生命の材料をもたらしたのです。2018年5月、これを裏付ける証拠が発見されました。遠方の銀河MAX1149JD1です。ここである波長の赤外線が発見されたのです。

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 5 暗くなる宇宙

それは酸素イオンの存在を示す波長でした。この銀河から光が届くまでには33億年の歳月を要します。このことから、ビックバンのわずか5億年後には、恒星の中心核で酸素が生成されていたことが分かります。

宇宙の創成期には初期世代の星が存在し、水素やヘリウムなどから酸青や炭素などの重い元素を造っていました。その恒星が爆発して、星間物質等に酸素などを供給したのです。

炭素や窒素も同様に生み出されます。こうした物質は超新星爆発でまき散らされ、新たな構成の材料となります。それは、人類の材料でもありました。星の死が私達人類を生んだのです。暗くなる宇宙

生命が誕生するには、一定の元素が揃わなければなりません。炭素や窒素、これらが基礎となって生物が形作られ、生きることができます。そんな重要な物質を生み出したのが、初期の宇宙で生まれ死んでいった恒星なのです。

大質量星は短期間で死を迎えますが、最後の爆発で新たな恒星や生命、命をつなぐのです。しかし、恒星の生と死のサイクルは永遠のものではないかもしれません。

観測する限り現在の宇宙では恒星が生成されずらくなっています。恒星の形成活動は急速に衰えています。宇宙は今、暗くなっていっているのです。いずれ材料が使い果たされたて、恒星が生まれなくなります。

地球の一日は同じパターンの繰り返しです。毎日太陽が昇っては地平線に沈み、真っ暗な夜空に星が輝く。2015年世界中の望遠鏡を使って、10万個以上の銀河を観測する試みが行われました。すると、過去20憶年で宇宙の明るさは半減していたことが分かりました。

恒星が消滅するごとに、夜空は暗くなっていたのです。宇宙が最も明るかったのは、100億年ほど前だと思われています。当時は様々な星が輝き宇宙を照らしていました。それがここ20憶年で大幅に光を失ってしまったのです。

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 6 クエーチングの謎

宇宙が暗くなったのは恒星の死ばかりではありません。新たな星の形成ともかかわりがありそうです。この謎を解くヒントは銀河団銀河団にあるかもしれません。銀河団は何百もの銀河が重力によって集まった大集団です。

ここに新たな銀河が引き込まれる際に不可解な現象が起こります。実は、銀河団が他の銀河団に落ち込むと星の形成が止まるのです。これをクエーチングといいます。クエーチングが起こる原因は長い間不明でした。

2018年10月、国際的な天文学者のチームがその解明に一歩近づきました。彼らは14の銀河におけるクエーチングの違いを調べ、一つの仮説を導き出しました。銀河が星を形成する能力は、その銀河が置かれている環境に左右されます。

銀河団では多くの銀河が互いを集荷しており、銀河からガスやチリが引き離されてしまうと考えられます。恒星の材料が銀河の外に失われるのです。銀河は恒星の生成に欠かせない、高密度の冷たいガスで満たされています。銀河団に引き込まれると状況が一変します。

銀河団には高温のガスが存在しますが、恒星の形成に必要とされるのは冷たいガスです。銀河団がこの高温のガスの中を通過すると銀河内の冷たいガスは引き離されます。もし、銀河団が恒星を生み出すガスを剥ぎ取っているのであれば、新しい恒星は簡単には形成されないでしょう。

宇宙にどれだけのガスがありどれだけ残っているのか、それを考慮すると形成可能な恒星の量はすでに誕生していると考えるべきです。古い恒星が死にゆき、新たな恒星も生まれないとなれば、いずれ恒星は宇宙から消滅します。

真っ先に姿を消すのは大きな星です。宇宙のガスが尽きて恒星が造れなくなると、まずは大質量星、次に太陽のような中ぐらいの恒星が死に絶えます。宇宙の恒星の数は少しずつ減少しています。宇宙かっての輝きを失います。

未来の生物は薄暗い中で生きなければなりません。新たな星が生まれないからです。そこは、闇に包まれた恐ろしげな世界、不気味に変貌した一千億年後の宇宙は、モンスターの住み家となります。

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 7 ダイヤモンドは役に立たない

いまの宇宙は恒星が光り輝いていますが、この先に待つのは恒星の亡骸がさまよう宇宙です。恒星の亡骸はすでに様々な形で宇宙に存在しています。ブラックホールやパルサー、白色矮星などです。しかし、生きている恒星より亡骸でけが増えてしまったらどうなるのでしょうか。

2019年4月、白色矮星15000観測衛星個の観測結果を元にした論文が発表されました。白色矮星は太陽のような星の亡骸です。太陽のような恒星は死ぬと中心核だけになります。反応は起きていないので後は冷えていくだけの状態です。

でも、まだ少しだけ輝けます。白色矮星は通常100億年以上かけて輝きを失います。しかし、観測データからは異なる結果がもたらされました。古い白色矮星が光り輝いていたのです。白色矮星が別のエネルギー源を持ち輝き続けていることが分かったのです。

白色矮星に光を与え、ゾンビのように蘇えさせるエネルギーは、白色矮星の結晶化だとする説が最も有力です。白色矮星の内部にある酸素と炭素は、最長60億年かけて冷却され結晶化します。それがエネルギーになると考えられるのです。

この輝く白色矮星は、生命の存続に不可欠の熱源となり得ます。死んでなおエネルギーを放つこの白色白色矮星に、私達生物はすり寄るべきでしょうね。結晶化は白色矮星を蘇えさせるだけでなく、その周りをも割る惑星に新たな景色を見せてくれるでしょう。

冷えて結晶化した炭素には特別な名前があります。ダイヤモンドです。遠い未来の宇宙ではそこかしこでダイヤモンドが光っているかもしれません。宝石のようにキラキラと輝く星は美しいでしょうが、生命の助け舟になれるという保証はありません。

たしかに白色矮星は最後の力を振り絞ってエネルギーを供給してくれますが、それも永遠には続きません。星全体が結晶化してしまえば、結局は冷えて輝きを失います。力尽きた後はほとんど光を放たなくなるでしょう。

しかし、ゾンビのような星はまだほかにも存在します。大質量の恒星は死を迎えると大爆発します。その際に中心核が収縮しきわめて高密度の小さな単体となります。まさに、宇宙のモンスターと言える存在です。

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 8 ゾンビのようなパルサー

その天体とはパルサーです、直径が20キロほどしかないにもかかわらず太陽と同じくらいの質量を持つ、時にはそれ以上の質量を持つきわめて高密度な天体です。高速で回転しながら両極から放射線のビームを放ち、死後も輝パルサーいています。

また、このゾンビ星は惑星を持ちうることもわかっています。2017年にあるパルサーの周囲で見つかった惑星の質量は地球の2倍ほどでした。とは言え、パルサーの周回する惑星も生命を育むことはできません。この環境は過酷のものだからです。

パルサーが放つ放射線は強烈で、大気を吹き飛ばしてしまいます。もしかしたら、生命の未来を救うのは、宇宙で最も謎めいた天体かもしれません。褐色矮星は恒星のなりそこない、大きさや質量が足りず内部で核融合反応が起こせなかった天体です。

褐色矮星は太陽よりもはるかに小さく、一定の熱を発しており惑星を持てるだけの重力もあります。ただ、完全な構成と比べると微々たものです。褐色矮星が惑星を持つ可能性はありますが、惑星が褐色矮星から十分な熱エネルギーを得られるとは考えにくいでしょう。

熱の届かない極寒の惑星に生命は宿りません。しかし、恒星になり損ねた天体には奥の手があります。褐色矮星は非常にありふれた天体で、度々連星を形成しています。二つの褐色矮星が融合するかしないかというギリリギリの距離で連星をなしているとします。

それが時と共にぐんぐん接近して、最後に衝突し一つの星になるかもしれません。なりそこない同士が一つになって輝きだすのです。合体によって生まれる恒星、まるでフランケンシュタインの怪物です。衝突で完全な。恒星が形成されることはあり得ます

光を放ち惑星を温めることができる恒星です。とはいえ、生物にとって恒久的な解決策にはなりません。宇宙が暗くなっていく現実からどうあがいても逃れられないのです。

夜空を隅々まで照らす恒星の光。私たちの目に届くの光はそのごく一部です。太陽と同じぐらいか、それよりも大きい恒星は明るく光るので遠くからでもよく見えます。もっとも数が多いのは赤色矮星と呼ばれる恒星です。とても小さくて暗いため、私たちの肉眼では確認できません。

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 9 赤色矮星が救いか

赤色矮星の質量は小さなものだと太陽の十分の一、暗くて人の目では見れませんが、銀河系の恒星のおよそ4分の3以上を占めると云われます。また、大きな恒星とは違い赤色矮星の死は確認されたことがありませんが、生命の未来を託すには最適な存在です。

宇宙のあちこちで恒星が死を迎えているにもかかわらず、赤色矮星が生き続けているのはその小ささが有利に働いているからです。大きい星は高温ですが赤色矮星は比較的低温です。その分核融合反応はゆっくり進みます。褐色矮星

さらに、赤色矮星は大きな恒星より豊富な燃料を持っています。太陽のような中型の恒星の内部は内側から、中心核、放射層、対流層の三層に分かれています。この場合、対流層に水素が存在しても放射に阻まれて燃料となれません。

利用できる燃料は全体のわずか10%に留まります。中心核に含まれる水素がなくなるとあとは死を待つだけです。一方赤色矮星はすべての水素を燃料として使えます。質量の小さな恒星では、中心核の外側はすべて対流層です。

ということは、中心核と表面の間を物質が常に循環していることになります。つまり、表面にある水素も循環してすべて燃料に使いエネルギー源にすることができるのです。これにより赤色矮星は信じがたいほど長い寿命を獲得しました。

宇宙の年齢にも届く130億歳以上でもまだ赤ん坊と言えます。10兆年以上もの果てしない寿命を持つ赤色矮星、生命にとって朗報と言える特徴はそれだけではありません。2017年2月にNASAが重大な発表をしました。

みずがめ座の方向にある赤色矮星トラピスト1に、地球ほどの惑星が7個も見つかったのです。赤色矮星は寿命が長いので、もしこれらの惑星に生命がいれば太陽系で暮らす生命より何兆年も長く存続できることになります。

期待は持てますがいいことづくめではありません。2018年10月、ハップル宇宙望遠鏡によるきょしちょう座時計座アソシエーションの観測から新たな新たな事実が判明しました。アソシエーション内の若い赤色矮星が赤ん坊のように癇癪を起していたのです。

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 10 新型恒星

その威力は、時に太陽フレアの1万倍にも達します。周囲の惑星はたちまち焼き尽くされるでしょう。出来たばかりの赤色矮星は高速で回転しており、その影響で生じる磁気活動によってフレアーが起こります。若い赤色矮星のそばで生命は生きるのは困難そうです。

ただ、赤色矮星が歳をとるにつれ磁場の働きで回転運動にブレーキがかかり、その速度が徐々に落ちてきます。フレアも治まります。ですから、時がたてば生命にも適した環境になるかもしれません。未来の宇宙で最後まで輝き続ける赤色矮星は、生命のよりどころとなる可能性を秘めています。褐色矮星

しかし、気が遠くなるほど長いその命も永遠ではありません。小さな赤色矮星の死に際は、大きな恒星と違ってとても静かです。まず、温度が上がります。高温になった矮星は青色になります。つまり赤色矮星は青色矮星に変わるのです。

180億歳の宇宙にはまだ存在しないこの青色矮星は、恒星の最後を見届けることになります。この青色矮星もやがて冷えて光を失います。こうして、結局恒星は宇宙からなくなります。恒星が亡くなれば、生命も死に絶えるしかありません。

しかし、もし恒星の代わりが現れたとしたらどうなるでしょうか。もう星の生成は不可能と考えていると、まだ切り札が残っていました。

遠い未来の宇宙は、恒星が一つも存在しない降りなき世界になっているでしょう。現在の宇宙とはもはや似ても似つきません。あり得ないほど寒くて寂しい空間です。恒星が死んで光が消えてしまったら、その光によって生命を維持していたものはすべて道連れになります。

真っ暗な宇宙に星の残骸だけが残されます。しかし、瓦礫ばかりの暗い宇宙で別の何かが誕生するかもしれません。宇宙では長い歴史の中で無数の恒星が生まれて死に、その過程で重い金属の元素が放出されてきました。

それを材料として新たに生まれた恒星は、前の世代の恒星とは異なる性格を備えています。恒星が金属を生成し、宇宙が多くの金属で満たされると、星が核融合反応を起こす温度が下がると考えられます。それは、非常に小さな天体でも恒星になれることを意味します。

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 11 消え去る宇宙

現在恒星になるには太陽の10%の質量が必要です。でもいずれは、4%の質量で十分恒星になれるでしょう。数兆年後には星の残骸から生まれた新しい星が、宇宙にきらめく有一の星になるかもしれません。かってないほど小さな冷たい星です。

この恒星はまだ仮説上にしか存在しない星ですが、この星は特に変わっています。形成されるのは極めて小さく低温の恒星です。中心核で核融合反応が起きているにもかかわらず、表面は冷たいはずです。この新型恒星の明るさは、現在の最も暗い恒星の1千分の一しかありません。

表面の温度は摂氏0℃、氷の雲が漂っていると考えられます。恒星はあまりにも温度が低いので、表面には氷が存在します。いまの宇宙は若すぎて氷の恒星ができることはきざしすらありません。真実は数兆年後にわかるでしょう。

恒星の存在なくして、生命の誕生はありませんでした。遠い将来、恒星が死に絶えたときには、生命も姿を消すかもしれません。しかし、赤色矮星が輝き続けている間は、何らかの生命が存続する可能性はあるでしょう。

とは言え、地球上の私たちは太陽がなくては生きていけません。太陽は地球の生命の源なのです。時々晴れた日には空を見上げて思い出してください。太陽も星もいずれは燃え尽きる運命なのだと。そして、この時代に生まれた幸運をかみしめてください。

このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。

約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう。

約1400億年後、ミルコメダは激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになり、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。

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参考文献:BS11ディスカバリー傑作選「解明・宇宙の仕組み」など。