はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第18章 ブラックホール

ブラックホールの解明が進んでいます。2019年に巨大ブラックホールの観測・撮影に成功すると、2013年にはコンパス座銀河で、プラズマ・原子・分子の全ての相において定量的に測定することに世界で初めて成功しました。

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1 ブラックホールとは

 1) ブラックホールの誕生

「Rekisiru」に「ブラックホールとは?」という京藤一葉さんの記事が掲載されていましたされていました。ブラックホールの仕組みや大きさ、でき方を詳しく説明されています。わかりやすい内容のため、要約してご紹介します。

ブラックホールという言葉が世界中に広まったのは、実は1967年のことです。ブラックホールは非常に重く、重力の強い星で、そのほとんどが銀河の中心にあります。

謎の多いブラックホールですが、実は近年の探査船の調査により多くのことが判明しています。星などの大きな天体が自分自身にかかる重さに耐え切れなくなると、重力により縮小していきます。これを「重力崩壊」と呼びます。

この現象は物理学的な観点により、星を構成する物質が縮んでいくのではなく、時空が歪んで縮んでいくと考えられています。そしてこの時空の歪みが光よりも早いスピードで起こった場合、この歪みに到達した光は歪みから逃げることができず、その場所は真っ黒な空間となります。

一般的にブラックホールとなり得るのは大きな質量を持った恒星です。恒星の中心では水素同士による核融合反応が行われ、大量のエネルギーを外へ放出しています。この時に生成される放射量と重力のバランスが保たれることにより、恒星の核は安定して活動を続けます。

しかし恒星内部の水素はいずれ枯渇し、星はバランスを維持するために、水素同士の核融合反応でできたヘリウムなどの重い原子を使った核融合反応が起きるようになります。ヘリウムがなくなれば、ヘリウム同士の反応で起きた原子、この原子がなくなればさらに次へと、核融合反応を起こすようになり最後には鉄ができます。

他の原子とは異なり、鉄は核融合反応が起きてもエネルギーを放出しません。エネルギーが放出されず、放射量と重力のバランスが崩れ中心核が重力により小さく圧縮します。

それにより、非常に重い質量を持つ中心核が生成され、星の終焉である超新星爆発が起きます。超新星爆発の後は、中心核があった場所には高温かつ高密度の中性子星が誕生します。この星が重力崩壊を起こしブラックホールとなるのです。

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 2) ブラックホールの寿命

現在判明しているブラックホールの中には非常に質量が大きく、太陽の何十億倍もあるものもあります。一つの天体がこれだけ質量の大きいブラックホールを生み出したとは考えにくいため、ブラックホール同士で合体・融合して大きく成長しているのではないかと考えられています。

光でさえも飲みこんでしまうブラックホールですが、研究・調査により、どんなブラックホールであっても永遠に成長しつづけることはなく、寿命があることが判明しました。これは天文学・物理学において高名なスティーヴン・ホーキング博士が導き出した考えです。

一般的に天体は自分自身から熱エネルギーを放射しています。それはブラックホールも例外ではなく、少しずつエネルギーを放射しており、このエネルギーの喪失で徐々に縮小していきます。時間の経過とともに縮小していったブラックホールは、やがて蒸発してなくなってしまうと考えられ、これを「ホーキング放射」と呼んでいます。

ブラックホールの消滅には非常に長い時間が必要です。太陽程度の質量を持つブラックホールが誕生後してから、蒸発し消滅するまでに約10??年必要とされています。私たちの概念をはるかに超えた時間が必要となり、ブラックホールの終わりを見ることのできる人はいないでしょう。

ブラックホールは実は非常に単純な天体です。他の天体や惑星、銀河はその質量や構成している原子・物質、距離など調べなくてはならないことが山ほどあります。それに対しブラックホールの性質を決めるためには3つのポイントで十分だからです。

どんな天体にも質量はありますが、ブラックホールも例外ではありません。しかし一般的にブラックホールとなるためには非常に大きな質量が必要です。

地球ほどの質量を持つ天体がブラックホールになったと仮定します。アインシュタインやシュバルツシルトたち先人の残した計算式に当てはめて計算すると、わずか9mmのブラックホールが誕生することになります。これはピンポン玉よりも小さいサイズです。

次に太陽ほどの質量を持つ天体がブラックホールになったと仮定しましょう。先ほどと同様にして計算すると、誕生するブラックホールの大きさは3kmとなります。

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 3) クェーサーの発見

しかしながら、現実では地球や太陽がブラックホールになることはありえません。いずれも質量が軽すぎて、重力崩壊が起きないためです。

実際に存在しているブラックホールは太陽の数十万倍、数百万倍もの質量を持つ天体が重力崩壊によって誕生しています。これまで観測された中で一番大きいブラックホールの質量は、なんと太陽の約100億倍もあります。

どんな天体にも自転による回転運動がみられます。回転をしているということは回転するための運動量が発生していることになります。そして回転する運動量を持った天体がブラックホールになったとき、そのブラックホールには必ず運動量が残ると考えられています。

ただし回転する運動量はその天体によって異なってきます。速度の速い天体があれば、非常にのんびりとした速度の遅い天体もあるでしょう。そのような回転の遅い天体がブラックホールになった場合、運動量はほぼゼロに近いケースがあります。

全ての星を構成しているのは原子で構成されています。原子は陽子、中性子から成る原子核と、それを取り巻く電子でできています。陽子はプラスの電荷、電子はマイナスの電荷を持っており、星がブラックホールになった時、電荷を取り込むことになります。そのためブラックホールは電荷を持った状態であることが推測されています。

アインシュタインやシュバルツシルト、ほか多くの研究者たちにより、ブラックホールの理論的な研究は進みました。しかし実際に観測することは叶わず、誰もが本当にブラックホールが存在するのか不透明な中で研究は続けられてきました。そしてこの研究は意外な形で実ることとなります。

1963年、マーテン・シュミット(1929~)により非常に強い電波を発する天体の情報が発表されました。天体というのは強弱の差はあれ、すべて何らかの電磁波を発しています。観測された天体は今まで発見したことのない電磁波を発しており、非常に遠く地球から約40億光年も離れていることが判明しました。これを新種の天体とし、「クェーサー(quasar)」と呼ばれるようになりました。

クェーサーの調査をする中で、新しく判明したことがあります。クェーサーは膨大な電磁波エネルギーを発していること、またエネルギーを放射している部分が非常にコンパクトだということです。クェーサーのエネルギー源は何なのか、多くの研究者たちが頭を悩ませました。

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 4) クェーサーの正体

そして3人の研究者によってクェーサーの正体が判明しました。その3人とはエドウィン・サルピーター(1924~2008)、ヤーコフ・ゼルドヴィッチ(1914~1987)、ドナルド・リンデン・ベル(1935~2018)です。

彼らが研究によって導き出した結論は、クェーサーは天体ではなく、中心のブラックホールによって引き寄せられた大量のガスであるというものです。ブラックホールによって引き寄せられると、円盤状にガスが集まりこれを「降着円盤」と呼んでいます。

降着円盤によって周囲に集まったガスは、絶えずブラックホールに供給されてエネルギーを生み出します。さらに生み出されたエネルギーが、周囲のガスによって電磁波へ変換されその電磁波で明るく輝くのです。

ブラックホールの観測はできなかったものの、初めてブラックホールに迫る発見ができたと大きく話題になりました。

その後も多くの研究者によって観測が続けられる中で、いくつかの天体がブラックホールではないかと候補に挙げられました。中でもはくちょう座V1357(V1357Cyg)という恒星は連星系をなしており、そのパートナーがブラックホールといわれています。

理由として、この星が発している放射線量が星の質量に見合わないためです。また、ガリレオ・ガリレイが初めて天体観測に望遠鏡を用いてから、多くの科学者や研究者たちがより高性能な望遠鏡の開発に携わってきました。

2016年、米国に設置された最新鋭のレーザー干渉計型重力波天文台LIGO)が、ブラックホール同士が合体するときに発するわずかな重力の歪みを感知しました。その歪みを発した天体の名はGW 150914といいます。

ブラックホール同士が合体するときに発する歪みのことを重力波といいます。そして重力波はブラックホール同士が近づいていった時が最も大きくなり、合体と同時にゼロになり、この現象を「リング・ダウン現象」と呼んでいます。

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2 新ブラックホールを発見

 1) ブラックホールを撮影

2019年4月10日にイベント・ホライズン・テレスコープという国際協力プロジェクトチームは世界6か所で同時に行われた記者会見において、巨大ブラックホールを観測・撮影に成功したと発表しました。

今回撮影されたのは、おとめ座銀河団の楕円銀河M87の中心にある巨大ブラックホールです。このブラックホールは地球から約5500万光年離れた位置にあり、その質量は太陽の65億倍にもなります。ブラックホール

ブラックホールの撮影は人類史上初の快挙であり、今日まで観測を続けてきた取り組みの賜物でした。現在撮影された画像を用いて、さらなる解析が行われており、新しいブラックホールの一面が見えてくるかもしれません。

宇宙が誕生した直後はガスが不安定で、密度の薄い部分もあれば、逆に濃い部分もありました。ガスの濃い部分が重力崩壊し、最初のブラックホールである「原始ブラックホール(primordial black hole)」ができたと考えられています。

この原始ブラックホールは宇宙初期の限られた中で作られたため、地球とほぼ同じ程度の質量であったと考えられています。そのため形成されたブラックホールはわずか9mm程度の非常に小さいブラックホールのため、「マイクロ・ブラックホール」や「ミニ・ブラックホール」ともいわれています。

恒星からできたブラックホールと超大質量ブラックホールでは大きさが違い、その差は数桁以上にもなります。この広大な宇宙で、ブラックホールを探すときに大きな手がかりとなるのが、電磁波の観測です。スターバースト銀河M82で強い電磁波が観測されました。

降着円盤から発する電磁波と合わせて量を測定した際に、太陽と比較すると1千倍程度の質量で恒星起源のブラックホールと比較すると約100倍以上もの質量がありました。このブラックホールは「中質量ブラックホール」名付けられ、ブラックホール同士の合体により生成されると考えられています。

宇宙が誕生したばかりの頃、宇宙空間に漂うガス雲の主成分は水素とヘリウムでした。この水素とヘリウムは熱放射しにくい性質を持っていたため、ガス雲がより多く集まって放射していました。大量のガスが集まったことにより、その部分は重力崩壊し、ブラックホールが誕生します。

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 2) ブラックホールがない銀河

この時にできたブラックホールは太陽の質量と比較すると、およそ百倍程度といわれ、中質量ブラックホール程度の大きさでした。大質量ブラックホールの生成にはいまだ謎の多い部分があり、解明しきれていないのが現状です。

そんな中、英国のマーティン・リース(1942~)によって大質量ブラックホールの形成機構が発表されました。それによると大質量のガス雲が直接重力崩壊し、超大質量ブラックホールを形成するパターンと、大質量のガス雲から星団が生まれ、その星団が進化して超大質量ブラックホールを形成するパターンの2つの方法が大質量ブラックホールを形成するルートではないかとされています。

しかし最初の大質量のガス雲から超大質量ブラックホールが形成されるパターンは、実現しないと考えられています。なぜならば、ガス雲が集まって高密度になった場合、重力崩壊によって大質量ブラックホールが形成される前に恒星が誕生してしまうからです。

後者のガス雲から星団ができ、その星団が超大質量ブラックホールを形成したと考えるのが理論的に可能とされています。こちらは作られたブラックホールが周囲の星を飲み込み、どんどん巨大化していったパターンや中質量ブラックホール同士が合体して超大質量ブラックホールになったパターンなど、さまざまな可能性が考えられています。

超大質量ブラックホールの形成過程が判明した時、人類はよりブラックホールの謎に迫ることができるでしょう。一般的にブラックホールの多くは銀河の中心にあると考えられています。

アンドロメダ銀河や天の川銀河など知名度の高い銀河もそれぞれ中心部には超大質量ブラックホールがあります。例外もあり、銀河にはその形を模して円盤状や楕円などの構造をしていますが、この構造を持たない銀河にはブラックホールはないとされています。

例で挙げると、天の川銀河の衛星銀河である大マゼラン雲や小マゼラン雲です。これらは銀河としては規模が小さく、小さい銀河の場合は中心部にブラックホールを持ちません。

ブラックホールは周囲のガス雲や星を飲みこむことで、質量を増していきます。近傍銀河の中心部にあるブラックホールたちを検証してみると、それぞれ40億~120億ほどの年齢差があることが判明し、年齢を重ねたブラックホールの方が年齢の若いブラックホールよりも重い質量であるということがわかっています。

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3.ブラックホールの新事実

 1) 世界で初めて成功

東北大学大学院理学研究科理学部の説明によると、国立天文台の泉拓磨助教を中心とする国際研究チームが、アルマ望遠鏡を用いて、近傍宇宙にあるコンパス座銀河を約1光年という非常に高い解像度で観測していました。

この観測で、超巨大ブラックホールの周辺わずか数光年の空間スケールでのガス流とその構造を、プラズマ・原子・分子の全ての相において定量的に測定することに世界で初めて成功しました。

この観測で、超巨大ブラックホールへ向かう降着流を明確にとらえ、降着流が「重力不安定」と呼ばれる物理機構により生じていることをも明らかにしました。

さらに、降着流の大半はブラックホールの成長には使われず、原子ガスか分子ガスとして一度ブラックホール付近から噴き出た後に、ガス円盤に舞い戻って再びブラックホールへの降着流と化す、あたかも噴水のようなガスの循環が起きていることも分かりました。

超巨大ブラックホールの成長メカニズムの包括的な理解に向けた重要な成果です。左のブラックホール写真は、アルマ望遠鏡で観測したコンパス座銀河の中心部です。

中密度分子ガスを反映する一酸化炭素(CO)の分布を赤色、原子ガスを反映する炭素原子(C)の分布を青色、高密度分子ガスを反映するシアン化水素(HCN)の分布を緑色、プラズマガスを反映する水素再結合線(H36α)の分布をピンク色で示しています。図の中央には活動銀河核が存在します。

この銀河は外側から内側にいくにつれて傾いた構造を持つことが知られており、中心部では高密度分子ガス円盤を横から見る形に近づきます。

この高密度分子ガス円盤(図の中心部の緑色領域:右上のズームも参照)の大きさは直径約6光年程度で、アルマ望遠鏡の高い解像度で初めて明確に捉えることができました。プラズマ噴出流は、この高密度分子ガス円盤とほぼ直交する方角に出ています。

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 2) コンパス座銀河を観測

多くの大質量銀河の中心には、その質量が太陽の100万倍以上に達する「超巨大ブラックホール」が存在します。この超巨大ブラックホールはどのようにして作られるのでしょうか?

これまでの研究から提案されている重要な成長機構は、ブラックホールへの「ガス降着」です。これは、銀河に存在するガスが、銀河中心のブラックホールへ落ちていくことを指します。

超巨大ブラックホールのごく近傍に集まったガスは、ブラックホール重力により高速で運動し、ガス同士の激しい摩擦で数百万度まで高温化して輝きます。これは活動銀河核と呼ばれる天体現象で、その光は時に銀河の星の光の総量を凌駕するにまで至ります。

興味深いことに、ブラックホールめがけて落ち込んでいったガス(降着流)の一部は、この活動銀河核の膨大なエネルギーをあびて吹き飛んでしまう(噴出流)とも考えられているのです。

10万光年におよぶ銀河スケールから、中心の数百光年程度までのガス降着機構については詳しく理解されています。しかし、そのさらに内側、特に銀河中心数十光年以内でのガス降着に関しては、領域のあまりの小ささから詳細は謎に包まれていました。

たとえば、ブラックホールの成長を定量的に理解するためには、降着流の流量(どれくらいの量のガスが流入しているのか)を測定すること、また、噴出流としてどういうタイプのガス(プラズマガス・原子ガス・分子ガス)がどれだけの量で流出しているかを測定することが必要ですが、その観測的理解は進んでいませんでした。

国立天文台の泉拓磨助教(本研究実施時は国立天文台と東京都立大学に所属)を中心とする国際研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、超巨大ブラックホール周辺わずか数光年という非常に小さな空間スケールでのガス流とその構造を、プラズマ・原子・分子の全ての相において定量的に測定することに世界で初めて成功したのです。

多相ガスを観測することで、ブラックホール周りの物質の分布や運動に関する、より包括的で正確な理解を得ることができるのです。観測したのはコンパス座銀河という、近傍宇宙の代表的な活動銀河核天体です。達成した解像度は約1光年。これは活動銀河核に対する多相ガス観測として、これまでで最高の解像度です。

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 3) 超巨大ブラックホール

本研究ではまず、銀河中心から数光年にわたって存在する高密度分子ガス円盤(図1の緑)において、超巨大ブラックホールへ向かう降着流を初めてとらえることに成功しました。実は領域の小ささに加えて、銀河中心部はガスの運動が複雑なため、降着流を特定することは長らく困難でした。

しかし今回、研究チームは、明るく輝く活動銀河核の光を手前の分子ガスが吸収して影になっている現場を、アルマ望遠鏡の高解像度観測で特定したのです。詳しい解析から、この吸収体は私たちから「遠ざかる方向」に動いていることが分かりました。

吸収体は、必ず活動銀河核と私たちの間に存在するので、これはつまり活動銀河核めがけて落ちていく降着流をとらえたことを意味します。さらに、この銀河中心部でのガス降着を引き起こす物理機構をも解明しました。

観測されたガス円盤自身の重力は、ガス円盤の運動から計算された圧力では支えきれないほど大きかったのです。この状態に陥ると、ガス円盤は自重で潰れて複雑な構造を形成し、銀河中心部で安定して運動することができなくなります。

そうすると、ガスは一気に中心のブラックホールめがけて落ちていくのです。この「重力不安定」と呼ばれる物理現象が起きていることをアルマ望遠鏡は明らかにしたのです。

本研究で活動銀河核まわりのガス流の定量的な理解も大きく進みました。観測されたガスの密度と降着流の速度から、ブラックホールへ供給されるガスの流量が分かります。その量は、この活動銀河核の活動性を支えるのに必要な量より、なんと30倍も大きな値でした。

つまり、銀河中心1光年スケールでのブラックホール降着流のほとんど全ては、ブラックホールの成長に寄与していなかったのです。では、その余ったガスはどこに行ったのでしょうか?

本研究はこの謎をも解明しました。アルマ望遠鏡の高感度観測により、中密度分子ガス・原子ガス・プラズマガスの全てのガス相において、活動銀河核からの噴出流が検出されたのです。

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 4) 記念碑的な成果

定量的な解析の結果、ブラックホールへ流入したガスの大半は分子か原子として噴出するものの、速度が遅いためにブラックホールの重力圏から脱出できずにガス円盤に舞い戻り、再度ブラックホールへの降着流と化す、あたかも噴水のようなガスの循環が起きていることも分かりました。

今回の成果について、研究をリードした国立天文台の泉拓磨助教は「活動的、すなわちまさしく現在成長中の超巨大ブラックホール周辺のわずか数光年スケールの領域で、ブラックホール降着流や噴出流を多相ガスで検出し、さらにはブラックホールへの降着機構をも解明することができたことは、超巨大ブラックホール研究の歴史における一つの記念碑的な成果であると考えています。」と、その重要性を述べています。

さらに、今後を見据え、「宇宙史における超巨大ブラックホール成長を包括的に理解することを目指すには、より遠くにある、様々な性質をもった超巨大ブラックホールを多角的に調べる必要があります。

それには高解像度・高感度の観測が必須であり、アルマ望遠鏡を駆使するとともに、次世代の大型電波干渉計計画にも強く期待しています。」と述べています。今回の観測結果に基づく活動銀河核の星間物質分布の想像図。銀河から高密度分子ガスが円盤面を伝ってブラックホールブラックホール方向へと流入します。ブラックホール周りに集積した物質が高温化することで生じたエネルギーで、分子ガスが破壊されて原子やプラズマへと変化します。

これらの多相星間物質の多くは銀河中心部から外部へと向かう噴出流(円盤直上方向へは主にプラズマ噴出流が、斜め方向へは主に原子や分子の噴出流が発生する)と化すものの、大半は噴水のように再び円盤に舞い戻ることが分かりました。

これらの観測成果は米国学術雑誌に2023年11月2日付で掲載されました。研究に関するご質問は、東北大学大学院理学研究科天文学専攻松本尚輝(まつもとなおき) 博士前期課程1年、Email:naoki.matsumoto.t5[at]dc.tohoku.ac.jpへお問い合わせください。ただし、研究の妨げになるようなご質問はご遠慮願います。

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参考文献:Rekisiru掲載の京藤一葉の紹介文、国際協力プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープの発表、。