はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第4章 中国のスパイ活動

スパイ防止法を定めている国々で、表現の自由、言論の自由が制約されている国があるだろうか。スパイ防止法が制定されたら、最も困るのはマスコミとスパイのような中国や韓国に媚びる一部の国会議員だろう。安全保障の課題はスパイ防止法の早期制定である。

トップへ戻る

1 日本でのスパイ活動

 1) 日本はスパイ天国

スパイにとって「天国」とは、重要な情報が豊富なこと、捕まりにくく万一捕まっても重刑を課せられないことである。日本は最先端の科学技術をもち、また世界中の情報が集中している情報大国でもある。

しかも、日本ではいくらスパイ行為を働いても罪にならず、スパイ活動はまったく自由である。つまり、スパイにとっては何の制約も受けない「天国」だということを意味している。

米国に亡命した旧ソ連KGB少佐レフチェンコ氏が、日本はKGBにとってもっとも活動しやすい国だったと『KGBの見た日本』で証言している。また、旧ソ連軍の情報部将校、スヴォ―ロフは「日本はスパイ活動に理想的で仕事が多過ぎスパイにとって地獄だ」と、笑えない冗談まで言っているほどである。

昭和29年(1954年)にKGBの前身・MVD中佐のラストボロフ氏が、アメリカに亡命して証言した「ラストボロフ事件」で一大スパイ網が明らかになった。それによると、旧ソ連に抑留された日本人の中から八千数百人をスパイ要員として、日本や米軍の秘密情報収集のため操っていたという。

その全貌はスパイ防止法がないこと、また関係者の相次ぐ怪死や自殺によって未解明のままである。当時、事件を扱った岡嵜格(いたる)氏(元大阪高等検察庁検事長)は、「スパイを取り締まる法律がないので、国家公務員法などを適用せざるを得なかった。

スパイ防止法がないから(国家公務員法などで容疑者の一部を有罪にできたが)検察側の敗北に終わったようなものだった」と述懐している。

トップへ戻る

 2) 日本での軍事スパイ活動

警視庁公安部は2007年2月、防衛庁(現防衛省)技術研究本部の元技官を在職中に潜水艦に関する資料を持ち出した窃盗容疑で書類送検した。資料は中国に渡っており、単なる窃盗事件ではなく中国によるスパイ事件だったことが明らかになった。

元技官は1971年に防衛庁に入庁し、技術研究本部で潜水艦を造る鉄鋼材料の強度向上の研究などを担当していた。2002年、同本部第一研究所の主任研究官で定年退職。資料を持ち出したのは在職中の2000年のことで、「高張力鋼」と呼ばれる潜水艦の船体に使われる特殊鋼材や加工に関する技術報告書をコピーし持ち出していた。

報告書は防衛庁が自衛隊法で定める防衛機密と指定していなかったので、警視庁は自衛隊法違反容疑ではなく、窃盗罪で書類送検したという。防衛庁は甘過ぎると多くの専門家が呆れ果てた。

と言うのも「高張力鋼」情報の漏えいは、潜水艦の潜航深度や魚雷などによる破壊程度を教えるばかりか、それを「敵」の潜水艦建造に利用されれば、わが国への脅威が増すからである。まさに国を売ったようなスパイ活動と言うほかはない。

元技官は中国大使館の武官らと付き合いの深い、貿易会社元社長の要求に応じて報告書のコピーを渡していた。元技官は現職中の2001年末に元社長に誘われて中国・北京に渡航しているばかりか、国内では在日中国武官らと再三、飲食を共にしていた。

明らかに元技官は金につられてスパイに成り下がったのである。元社長は防衛関係者と広く接触し、2004年までの10年間に約30回も中国に渡航している。中国の海軍力増強は、実にスパイ活動によって日本の技術を盗み出して行っているのだ。

トップへ戻る

 3) スパイ防止法がない日本

国家の安全保障を脅かすスパイにはどの国も厳罰で臨んでいる。にもかかわらず、日本はスパイ罪すら設けていない。スパイ行為そのもので逮捕できないのは、世界で日本一国だけである。

自衛権は国際法(国連憲章第51条)で認められた独立国の固有の権利で、国家機密や防衛機密を守り、他国の諜報活動を防ぐのは自衛権の行使として当然の行為である。世界のどの国もスパイ行為を取り締まる法整備を行っている。それが諜報対策の基本である。

ところが、わが国にはスパイ行為を取り締まる法律そのものがない。このため他国ではスパイ事件であっても日本ではそうはならない。初代内閣安全保障室長で、警視庁公安部や大阪府警警備部などで北朝鮮やソ連、中国の対日スパイ工作の防止に当たってきた佐々淳行氏は次のように述べている。

我々は精一杯、北朝鮮をはじめとする共産圏スパイと闘い、摘発などを日夜行ってきたす。いくら北朝鮮を始めとするスパイを逮捕・起訴しても、せいぜい懲役一年で執行猶予がつき、裁判終了後には堂々と大手をふって出国していくのが実体だった。

なぜ、刑罰がそんなに軽いのか。どこの国でも制定されているスパイ防止法が日本には与えられていなかったからである。ちゃんとしたスパイ防止法が制定されていれば、北朝鮮による悲惨な拉致事件も起こらずにすんだのではないか。罰則を伴う法規は抑止力として効果があるから。

佐々氏は「他の国では死刑まである重大犯罪であるスパイ活動などを出入国管理法、外国為替管理法、旅券法、外国人登録法違反、窃盗罪、建造物(住居)進入などの刑の軽い特別法や一般刑法で取締らされ、事実上、野放し状態だった」と話している。

世界各国では、CIA(米中央情報局)やFBI(米連邦捜査局)、SIS(英情報局秘密情報部)などの諜報機関を設けて取り締まるのが常識である。ところが、わが国にはそうした法律や諜報機関が存在しない。

トップへ戻る

 4) 日本にスパイ防止法がない理由

1985年に自由民主党から立案されたスパイ防止法は廃案になった。この時の法案は「公務員」の守秘義務を定め、第三者へ漏洩する行為防止を目的としたものだった。既遂行為はもちろん、未遂行為や機密事項の探知・収集、機密書類の紛失などによる漏洩なども罰則の対象に含まれていた。

マスコミは「憲法が保障する表現の自由に抵触する」として批判した。当時の野党(日本社会党・公明党・民社党・日本共産党・社会民主連合など)も猛反対して審議拒否を貫き、国会閉会に伴い廃案になった。まさに良識を捨てた亡国のヤカラ達である。

企業には「企業秘密」があり、社員には「守秘義務」がある。企業秘密を守らなければ企業は存続できず、新技術も新製品すらも出すことができない。国であっても国家機密は必ずあるべきで、それを漏洩するようなことがあれば罰せられて当然ではないだろうか。

国民に開示すべき重要な情報が隠蔽される可能性や、機密でもない情報を機密とすることもできてしまいかねない点は否定できないが、少なくとも国家機密は存在し、全国民に開示すべき情報ではないものがあるのは事実である。

マスコミや野党は「拉致被害者の帰国を進めるべき」としているが、スパイ防止法がないため拉致を未然に防げなかった。スパイ防止法が制定されたら、最も困るのはマスコミと一部の国会議員だろう。安全保障の最大の課題はスパイ防止法の早期制定である。

警察庁は2009年版「治安の回顧と展望」で、中国の対日スパイ活動について先端科学技術をもつ企業や防衛関連企業などに研究者や留学生らを派遣し「長期間にわたって巧妙かつ多様な手段で、先端科学技術の情報収集活動を行っている」と警告を発していた。

中国のスパイ活動はプロの情報機関員だけでなく、あらゆる階層の中国人を情報収集員として使い、とりわけ近年は軍事科学技術の収集に力を注いでいる。的はずれな反対意見を持つマスメディアとスパイ活動をしているような政治家が国を亡ぼす。

スパイ防止法を定めているその他の国々で、表現の自由、言論の自由が制約されている国があるだろうか。アメリカやイギリスなど、いずれもスパイ防止法が制定されているが同時に言論の自由も保障されている。言論の自由がないのは中国とロシアぐらいだろう。

トップへ戻る

 5) 世界各国の防諜機関

アメリカの諜報機関は中央情報局CIAと連邦捜査局FBIである。ロシアの諜報機関はプーチン大統領が長官を務めた連邦保安庁FSBと対外情報庁SVRで、イギリスの諜報機関はジェームス・ボンドで有名の内務省保安局M15と秘密情報部M16である。

ドイツの諜報機関は連邦情報局MABと軍事保安局MADである。フランスの諜報機関は対外治安総局DGSEと軍事偵察局DRMで、イタリアの諜報機関は軍事保安庁SISMIと民主主義保安庁SISDEである。

スペインの諜報機関は国家情報センターCNIである。イスラエルの情報機関はイスラエル諜報特務庁とイスラエル参謀本部諜報局 、スウェーデンの情報機関は軍情報部MUST、ノルウェーの情報機関はノルウェー情報部NISである。

中国の諜報機関は、中華人民共和国国家安全部、中華人民共和国公安部、中国共産党中央統一戦線工作部、中国人民解放軍総参謀部第二部である。北朝鮮の情報機関は朝鮮人民軍偵察総局、朝鮮人民軍保衛司令部、朝鮮人民軍総政治局敵工部である。

韓国の諜報機関は、国家情報院 ・国家情報院・国軍情報司令部である。中華民国(台湾)の諜報機関は国家安全局NSB、インドの情報機関は合同情報委員会JIC、フィリピンの情報機関は国家情報調整局はNICAである。

主な国のスパイ罪の最高刑は、アメリカ(連邦法典794条=死刑)、ロシア(刑法典64条=死刑)、イギリス(国家機密法1条=拘禁刑)、フランス(刑法72・73条=無期懲役)、スウェーデン(刑法6条=無期懲役)。

中国(反革命処罰条例=死刑)、北朝鮮(刑法65条=死刑)。

トップへ戻る

2 中国の非合法活動

 1) 在日中国大使館員の疑惑

2012年5月、読売新聞のスクープ(5月29日付)によって在日中国大使館の1等書記官李春光(当時45才)のスパイ疑惑が国民の前に明らかになった。

1989年6月に人民解放軍傘下の外国語学校を卒業後、中国人民解放軍総参謀部第2部(情報担当)に所属。93年5月、福島県須賀川市の友好都市の洛陽市職員を名乗り、「須賀川市日中友好協会」の国際交流員として初来日。約4年間、福島県内に滞在し、福島大学大学院に通っていた。

その後、帰国し中国の調査研究機関「中国社会科学院」で日本研究所副主任を務めた。毎日新聞の金子秀敏氏は、李書記官は総参謀部の「出身」だが、「所属」は国家安全部と見ている。

国家安全部、略して「国安」は中国の代表的な情報機関で、国家安全相以外の職員の氏名は一切公開されていない。ホームページもない覆面組織で、「国安職員」という名刺もない。海外で人と会うのに不便なため、大使館や研究所、新聞社などに出向し、在外研究員や海外特派員として政財官の要人に接触している。

李書記官は99年4月に再来日し、松下政経塾に海外インターンとして入塾。同期生には後の民主党国会議員もおり、政界や財界に幅広い人脈を広げていった。2007年に「経済担当」の1等書記官として駐日中国大使館に赴任した。

民主党の筒井信隆・農水副大臣(当時)の副大臣室に出入りし、日本の農産物などを北京の施設で販売を計画する「農林水産物等中国輸出促進協議会」と深く関わり、鹿野道彦農水大臣(当時)にも接触していた。

同事業の事務は鹿野農相グループの衆院議員の公設秘書(当時)が担当し、2010年12月に鹿野農相から農水省顧問に任命され中国側と交渉。この人物を通じて農水省が「機密性3」「機密性2」に指定した文書20枚近くが漏えいした可能性が高い。

李春光書記官は外国人登録証明書を不正に使って銀行口座を開設し、ウィーン条約で禁じられた商業活動を行っていた。警視庁公安部が外務省を通じて中国大使館に書記官の出頭を要請したが、書記官は逃げるように帰国した。

李書記官が開設していた口座には日本企業から顧問料などが振り込まれ、工作資金に充てられていた模様である。警視庁公安部は2012年5月31日、外交官の身分を隠して外国人登録証明書を取得したとして外国人登録法違反(虚偽申告)容疑などで東京地検に書類送検した。

トップへ戻る

 2) 中国スパイ活動に異例の警告

2020年7月7日、米連邦捜査局のレイ長官は、中国によるスパイ活動について「FBIは10時間ごとに中国がらみの新たなスパイ防止案件に接している」と述べた。現在取り組んでいる5千件近い事案のうち、ほぼ半数が中国に関係したものだと説明した。

シンクタンクのオンライン講演でレイ長官は「中国は米国の知的財産を何度も窃取してきた」と批判。「その標的は防衛装備品から風力タービン、コメやトウモロコシの種子に至るまで全ての研究だ」と指摘した。

ポンペオ米国務長官は6日放送のFOXニュースのインタビューで、米国内でのショート動画アプリ「TiKToK」の利用禁止を検討していると明らかにした。TiKToKの情報が中国政府に吸い上げられている可能性があると指摘した。

ポンペオ氏は「中国の携帯電話向けアプリの問題に関し、米国はきちんと取り組む。禁止を考えている」と語った。他の中国製アプリも使用禁止の対象になり得るとの認識を示した。

TiKToKは中国企業の北京字節跳動科技(バイトダンス)が運営し、米国内での利用者は3000万人以上いるとみられている。米議会ではかねて米国の利用者の情報が中国政府に渡っているのではないかとの懸念が指摘されていた。

TiKToKはインドが他の中国製アプリを含めて使用を禁止したほか、オーストラリアも禁止を検討している。運営しているバイトダンス側はこれまで「中国政府から個人情報の検閲の要請を受けたことはない」とコメントしている。

米国では、トランプ大統領が6月に南部オクラホマ州で開いた選挙集会にTiKToKの利用者らが欠席を前提に大量の申し込みを呼びかけたとされ、大量の空席が発生する一因と指摘されたことがある。

トップへ戻る

 3) 中国の技術窃盗

2021年11月1日、元CIA職員デビッド・ザウアー氏は、中国は軍事大国になるために社会全体で窃盗行為を働いていると警鐘を鳴らした。中国は米国の技術やイノベーションを利用して台頭し、米国を超える軍事力を構築しようとしていると強調した。

ザウアー氏はインタビューで「米国国家安全保障当局は、中国が米国の知的財産、研究開発、情報、技術を年間3000億ドルから6000億ドル盗んでいると推定する」と指摘している。

中国は情報を盗み「自国の経済や国有企業、そして軍事に統合している」と述べ、中国の軍事システムの中には、米国の複写のようなものが存在すると語った。また、中国共産党政権は、学生や学者、ビジネスマンなどを利用して「最先端技術へ触手を伸ばしている」と権威主義体制を敷く政権を非難した。

米国家防諜安全保障センターは22日、中国政府が人工知能、量子コンピュータ、半導体、自律移動ロボット、バイオエコノミーの関連技術などの分野で主導権を握ろうとしていると警告する報告書を発表した。

同報告書は「中国は戦略的な目標を達成するために、米国やその他の国から合法的や違法的な様々な方法を採用して技術やノウハウを獲得している」と指摘した。日本や欧州連合(EU)、韓国も標的にされていると懸念を示した。

トップへ戻る

 4) 逮捕されたスパイ

米国の検察当局はこのほど、米企業から機密情報を盗んだとして起訴されている中国人スパイ徐延軍容疑者について、2014年の仏航空会社へのハッキングにも関与したと指摘した。

徐容疑者は、中国情報機関、国家安全部(省)の江蘇省国家安全庁の副処長を務めていた。米政府は同容疑者は複数の米航空企業の機密情報窃盗に関与したとしている。2010年4月ベルギーで逮捕され10月に米国へ身柄を引き渡された。第三国から米国に引き渡された最初の中国人スパイだ。

米オハイオ州シンシナティの地裁で、同容疑者に対する公判が始まった。地元メディア「WCPO」によると、26日の公判では、検察側は徐容疑者は米航空企業だけでなく、2013年からは各国の航空企業の情報窃盗にも関与したと訴えた。

検察官が提出した追加書類は、カリフォルニア州南部地区の地裁に提出された起訴状に基づき、徐容疑者は仏航空宇宙大手、サフラングループの「従業員に対して、同社のネットワークにマルウェアを植え付けるよう指示した。

徐容疑者はサフラン社へのハッキングに関与した」とした。サフラングループの幹部であるフレデリック・ハスコエト氏は検察側の証人として出廷した。2014年1月に中国へ出張した際、ハスコエト氏のパソコンがマルウェアに感染したと証言した。

中国にあるサフランの合弁会社はジェット機エンジンの部品を組み立てている。サフランのIT部門がハスコエト氏のパソコンを検査し、ハードドライブを交換する必要があるとアドバイスしたのが原因と考えられる。

米ボーイング社のIT部門の元社員李尚氏も証言を行った。李氏は2016年に徐容疑者から届いた電子メールを提出した。電子メールによると、容疑者は父親に会うために毎年中国に帰省する李氏に対して、ボーイング社の企業情報を提供するよう求めた。

李氏が情報を提供すれば「中国までのすべての旅費を負担する」と徐容疑者はメールで伝えた。李氏はこれを拒んだと話した。

トップへ戻る

 5) 中国のネパール土地占領

ネパール農業省調査局の報告によると、中国は国境を接する7つの地域で、ネパールの土地を違法に占拠している。報告によると、中国政府は侵入を速めておりネパールの境界線をどんどん押している。

ネパール共産党K・P・シャーマ・オリ政権は中国共産党の政策に融和傾向にある。また、北京の報復を恐れて中国の「不法占拠」を容認しており、実際の状況は農業省の報告よりもさらに深刻である可能性がある。

ネパール測量地図局によると、中国は国境をネパール側に1500メートル押し出したという。中国側は国境について対話方法も示さず、紛争の解決と管理に関する両国間議定書にも署名しないようネパール政府に圧力をかけたという。

ネパール測量地図局はまた、中国はゴルカ地区とダチュラ地区のネパールの村を占領したと報告した。かつてネパールにあった多数の家屋が中国に接収され、中国領に同化されているという。

ネパール農業省は最近、中国による複数の土地収奪事件を取り上げた報告書を発表した。同省は、中国が少なくとも11カ所のネパールの土地を占領していると報告した。

野党であるネパール国民会議の議員は下院で決議案を提出し、中国によって侵略された同国の領土を回復するようネパール政府に要請した。議員らは、中国が同国の64ヘクタールもの土地を侵害したと主張した。

ネパールと中国の間の1414kmの長い国境には、国境線を示す合計90本の境界柱があったが、ほとんどが「行方不明」になっており、存在する数本もネパール領土内へと移動させられたとしている。

ANI通信によると、駐ネパール中国大使はネパール共産党内の派閥争いに介入し、共産党に有利になるよう働きかけたと報じた。このため、中国のネパールに対する友好的な支援策は「中国による拡大政策の推進」であり、植民地政策の一部だと批判的に伝えた。

トップへ戻る

3 中国の新スパイ規制

 1) 自分はするけど他国はダメ

カナダの防諜機関であるカナダ安全情報局(CSIS)が2020年のスパイの動向を調査した報告書を発表した。報告によると、カナダに対する外国勢力によるスパイ行為が、冷戦期以来でもっとも高い水準だったことが明らかになったという。

新型コロナウイルス感染症の蔓延でスパイ工作は減っているかのように思われたが、中国に対する懸念が指摘されている。カナダに限らず主要な先進国では、中国がスパイ工作をコロナ禍でも実施していることを懸念しているということだろう。

そんな中国が、中国国内における外国のスパイ活動を防止する規制を発表した。インテリジェンスを追っている人たちからすれば「お前が言うな!」となるだろうが、中国はそんなことを気にする国ではない。

米TV「CNN」は、「中国は、アメリカとの関係が悪化するなかで反スパイ工作を強化しており、今年7月に中国共産党が100周年を迎える前に、国家安全保障の問題に新たに焦点を合わせてきている」と報じた。

中国国営の新華社通信は、中国国家安全部(中国の諜報機関)の高官による『国外の諜報やインテリジェンス機関、そして敵対勢力は中国への侵入を激化させており、さまざまな方法を使ってさまざまな分野で機密情報を盗む戦術を深めている。

それは中国の国家安全保障と利害に対する深刻な脅威となっている』という発言を引用した。中国初となるこの規制は、主に企業や団体などを対象にしている。

そうした組織が国家安全部によって「反スパイ対策」の重要拠点に指名されると、その組織はまず職員の調査を行い、訓練を施さなければいけなくなる。特に、海外に出張する前には、研修で国家の安全保障に関する懸案について説明を受ける必要があるという。

トップへ戻る

 2) 中国人スパイの亡命

2019年11月23日、香港、台湾、豪州で中国のスパイとして活動したという人物が豪州当局に政治亡命を申請すると共に、そのスパイ活動の内容や資金源など微細な情報を提供したことが報じられた。

豪メディアによると、香港と台湾、オーストラリアで中国のスパイ活動に関わっていた男性がオーストラリアへの亡命を希望し、中国の政治干渉活動に関する膨大な情報を豪当局に提供していたことが分かった。

亡命を希望しているのは王力強氏。王氏はオーストラリアの防諜(ぼうちょう)機関に対し、香港で活動する中国軍の情報将校の身元と、香港と台湾、オーストラリアで行われている活動の内容と資金源に関する詳細な情報を提供した。

香港で活動する中国軍の情報将校の身元や名前。香港、台湾、オーストラリアで行われている活動の内容と資金源など貴重な情報のようだ。彼は、オーストラリア人で中国の諜報機関に協力している人の名前も暴露したかもしれない。

王氏は有力紙のや報道番組とのインタビューの中で、中国政府が複数の上場企業をひそかに支配し、反体制派の監視と調査分析、報道機関の取り込みを含む諜報(ちょうほう)活動の資金を出させていることについて「微細にわたって」説明したそうだ。

中国政府が上場企業を支配し、反体制派の監視と調査分析を、道機関の取り込みを含む諜報活動の資金を出させている。中国では上場企業が諜報に資金を出しているそうだ。昔からいわれていることだが、中国のスパイ本人がいうと真実味が違う。

王氏は現在、妻と幼い息子と共に観光ビザでシドニーに滞在し、政治亡命を申請している。妻子が一緒ということでよかった。でも、亡命希望が却下されたら、王氏は「帰国すれば命はない」と通訳を介して述べ、中国に戻れば死刑に処されると訴えた。

トップへ戻る

世界はずっと、「チャイナマネー」欲しさに、この国の人権侵害、諜報活動、政治工作などを無視してきた。しかし、2018年にアメリカが「覇権戦争」を決意したので、中国のダークサイドが続々と暴露されてきた。

王氏は台湾で工作するように命じられ、他人のパスポートを用意された。そのために自分のアイデンティティーがなくなってしまうのではないかと心配になり、さらには自分の妻子の事も心配になってきてオーストラリアの防諜機関Aに自首することにした。

彼が台湾で命じられたのは、総統選挙で蔡英文の再選をネットを使って阻止すること。ネットはある程度の年齢にならなければ扱うのは無理である。王氏が27歳と若いわりにこのような重要な工作を任されたのは、年配の上司が彼に工作を丸投げしたからである。

彼は若い学生に金を与えてアカウントを作らせ、それを蔡英文陣営のサイトに集中させてサーバーをダウンさせた。また市民団体に入り込んで蔡英文の対立候補を支持させようとした。

王氏は中国が下記の四つの工作をやっているということを知った。・政治家の買収・世論操作・選挙への干渉・要注意人物の監視。

台湾で派手に活動したので、王はいつかは自分がスパイであることが当局にバレる、と考えるようになった。彼は台湾に大勢の中国共産党の工作員がいることを知っていたので、台湾当局に自首しても自分の身の安全が確保できないと考えたようだ。

その点、オーストラリアの方がまだましだと判断してオーストラリアの防諜機関に自首したようである。また、オーストラリアの国民や政府の反中姿勢を評価していたからのようでもある。

中国との関係を悪化させたくない国はひそかに王を拘束して彼を取引の材料に使う恐れもあった。その点、オーストラリアはそんなことはしないだろうと考えたようである。この事件が大々的に報じられたことで、オーストラリア国民の反中感情が決定的になった。

トップへ戻る

 3) 反習近平派が流した内部文書

2019年11月16日、中国当局が新疆ウイグル自治区で多数のウイグル族住民を拘束している問題など、中国共産党内部から400ページ以上の文書が流出したと米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。中国は文書が曲解されたと主張し、強い反発を示したが否定しなかった。

そもそも文書は本物なのかという疑問が起きるが、中国は「文書が曲解された」と主張している。つまり、文書は本物だが「曲解(ねじ曲げて解釈)された」ということは本物の証明みたいである。

16日付同紙が伝えた党の内部文書には、ウイグル族の大量拘束に関する党上層部の指示などが書かれている。ある幹部は部下らに「1人残らずつかまえろ」と命じていた。

ウイグル人を100万人強制収容している習近平(シーチンピン)国家主席が2014年に現地の職員らに対して、テロリストや分離主義者を「容赦なく」取り締まれと指示した未公開の演説原稿も含まれていた。

テロリストを容赦なく取り締まるのはわかるが、分離主義者は別だろう。スコットランドにはイギリスにとっての分離主義者がたくさんいるが、彼らが「強制収容所にぶち込まれている」という話は聞かない。

中国で拘束作戦に反対したり、拘束された人々の解放を試みたりした党員数人が粛清されたとの記述もある。残虐行為に反対する人は、たとえ党員でもあっても容赦しない。ナチスドイツやスターリン時代のソ連と変わらないことが行われている。

同紙によると、文書を持ち出したのは中国政界で一定の地位にいるメンバーで、ウイグル族への政策をめぐり習氏をはじめとする党幹部の責任を問うのが目的だったとされる。

政権幹部の中に習近平の残酷な政策に反対している人がいることになる。このことは、習近平に幹部への疑心暗鬼を呼び起こし、政権内で粛清が起きるきっかけになるかもしれない。クーデターの可能性もゼロとはいえなくなってきた。

アメリカは、トランプ政権も反トランプ陣営も「反中国」では一体化している。つまり、アメリカは「挙国一致体制」で「中国打倒」を目指している。

トップへ戻る

3 今世紀最大のスパイ

アメリカの主要都市はもちろんのこと、軍事基地やNASAの施設の周囲に中国はスパイを送り込んでいる。中国は初めて2003年10月15日に有人飛行を成功させてから、これまで宇宙を独占していたアメリカやロシアを追い抜いた。

中国はとても積極的に宇宙での足場を広げてきている。宇宙を制することができれば世界のトップに立てる。中国はその野望を持っている国である。アメリカにとっては青天の霹靂だった。しかし、あまりにも急激な進歩である。

一体どうやって成し遂げたのかという疑念がわいてきた。もしかしたら中国は反則技を使ったのかもしれない。宇宙に進出するためにNASA技術を盗んだのではないか。宇宙開発プログラムの内部にはスパイがいるのではという疑惑がわいてきた。

一刻も早く情報漏洩を止めなければとFBIは操作を開始した。そして、中国系アメリカ人の元エンジュニア、グレック・チャンが捜査線上に浮かんだ。チャンはエンジュニとしてまずロックウエル社に勤め、その後ボウイング社でも働いた。

両社ともスペース計画にかかわっている。チャンは墜落したコロンビア号のキャビンの設計に携わっている。機体の構造をテストするのが仕事だった。チャンはNASAの契約先に勤めていたが、一介の技術者に不釣り合いな大金を使っていた。

年収は6万ドルほどだったが会社をいくつも買収し、現金払いで高級住宅街に家を建てていた。どう考えても収入と不釣り合いである。FBI捜査官がチャンの行動を監視すると、彼は外交官が用いる特別な書類入れをもって自宅を出た。

車で向かったのは、650キロも先にあるサンフランシスコの中国総領事館だった。エンジュニアの行動としては普通ではない。彼が運んでいたのは何だったのか、捜査官がチャンの家が出したごみ箱の中を調べた。

中には中国語の新聞に挟まれて、ロックウエル社とボウイング社の極めて高度な機密を含む技術文書があった。文書にはOVとかSTSと言った文字が読み取れた。軌道周回機そして宇宙輸送システムの略称である。つまり、スペースシャトルの用語である。

トップへ戻る

FBIの捜査官がチャンの家を訪ねた。チャンは捜査官に対し中国に技術を漏らしていることを否定した。しかし、FBIは中国の高官からチャンに宛てられたれた手紙という証拠を握っていた。手紙にはつぎのように書かれていた。

「中国政府は、宇宙周回軌道に宇宙ステーションを建設するつもりだ。そのため、関連する情報を収集してほしい」。

しかし、チャンが実際に情報を渡した証拠がない。FBIは領事館や楊の書類入れの中身は捜索できない。情報収集依頼の手紙だけでは不十分である。チャンがそれを実行した証拠が必要だった。

FBIは、中国のスパイと思われるチャンの家を捜索したが何も出てこなかった。家の中に宇宙工学関係の技術文書はなかったのである。しかし、捜査官が家の裏に隠されたドアを発見した。それは地下にある秘密の部屋に通じていた。

その部屋の中には棚があり、重要な証拠となる書類で埋まっていた。地下に設けられたスペースに、25万ページを超える文書があった。最高機密扱いの技術に関する情報も含まれた膨大な量の書類だった。チャン

有人飛行にも使われるデータフォーロケットに関するものも、中国が喉から手が出るほど欲しい情報である。書類は、スペースシャトル、ロケット、軍事機器など、ありとあらゆる分野を網羅していた。チャンは30年以上も中国に情報を流していたのである。

チャンは中国政府から合計300万ドル以上の報酬を受け取っていた。チャンは逮捕され、経済スパイに問われた初めてのアメリカ市民として裁判にかけられた。チャンは15年の拘禁刑に処せられた。

トップへ戻る

2021年11月6日、フランス通信社の特約販売代理店である時事通信社はつぎのように伝えた。米連邦裁判所は5日、国家ぐるみとみられる経済スパイ活動で米仏の航空宇宙企業から技術を盗もうとした罪などに問われている中国の情報機関職員に対し、有罪判決を言い渡したと米司法省が発表した。

FBIの大きな手柄とはいえ、これによってアメリカは大きな痛手を被った。中国は宇宙開発でアメリカを追い抜くことに強いこだわりを持っている。気が付いた時には、中国はチャンがもたらした情報を利用して優位に立っていた。手遅れだった。

中国国家安全省の江蘇省対外情報局職員の徐延軍被告は、経済スパイ行為を共謀・企図した2件の罪と企業秘密の窃盗に関する3件の罪により、オハイオ州シンシナティの裁判所から有罪判決を受けた。

経済スパイに当たる行為については罪状1件に付き最長15年の禁錮刑と最高500万ドル(約5億7000万円)の罰金、その他の罪状についてはそれぞれ最長10年の禁錮刑が科される可能性がある。

この事件では、シンシナティに本社を置く世界有数の航空エンジンメーカー・GEアビエーションと、エンジン開発で同社と提携する仏航空宇宙大手サフランから技術を盗む目的で企図された5年がかりの計画に関与したとして、2018年10月に情報当局者2人を含む中国人11人が起訴されている。

米司法省は声明で、中国の国益のために徐被告は世界のどの企業にも真似できないGEアビエーション独自のエンジン技術を盗もうとしたと非難。さまざまな偽名を使いながら「各社で働く専門家を特定し、中国への渡航を勧誘した」と指摘した。

トップへ戻る

参考文献:ビーエス・イレブン、日本経済新聞、大紀元(特定非営利活動法人エポックメディア)、AFP=時事など。