1.無電柱化の整備状況
1-1 今は昔、電線のあった風景
政府は昭和61年度に第一期計画を策定してから無電柱化を計画的に推進し、平成29年度までに約9,900kmの無電柱化を実施してきた。それまでは 歩道の車道側に立ち並ぶ太いコンクリート製の電柱や、延々と数十本も続く電線は当たり前の風景だった。
電線と電柱は、いまでは何気なく撮影した写真の中に残る過去の思い出となった。これまでは電柱や電線を避けて撮影していただけに、電柱や電線が映っている写真を探し出すのはかなりの労力を伴う。こんなことになるならもっと撮影しておけばよかった。
これまで電柱や電線のある風景は当たり前で、すっかり生活になじんでいた。電線がなくなったら、鳥たちはどうするのだろう。カラスは夜になると特定の電線に集まり、数十羽が眠りについていた。電線の下からカラスの糞が消えるのは喜ばしい。
国道36号線市街地部の無電柱化が進み、見慣れた風景はすっかり変わってしまった。電線の無いことに違和感を覚えるが、電線の無い方が建物や空がすっきりと見える。これからは、電線の無い風景になじんでいくのだろう。
1-2 国内外の整備状状況
ロンドン・パリなどのヨーロッパの主要都市や香港・シンガポールなどのアジアの主要都市では無電柱化が概成しているのに対して、日本の無電柱化率は東京23区で8%、大阪市で6%というのが現状である。
ただし、ロンドンは2018年、パリと香港は2004年、シンガポールは2001年、台北は2015年の資料である。日本の無電柱化率は2018年の調査で、東京23区で8%、大阪市でも6%という低調さである。
日本でこれまでに1期計画~7期計画(昭和61~令和2)で12,300kmの無電柱化を整備又は事業中となっているが、概ね半数が緊急輸送道路をはじめとする防災対策が重点化している。
推進計画までの無電柱化延長12,300kmのうち、約8割の9,65kmが歩道幅員2.5mm以上の道路における整備であり、歩道幅員が狭いあるいは歩道が無い道路での整備は少ないようである。
地域別では、関東、近畿、中部の三大都市圏での無電柱化延長が多く、地方部での整備は相対的に少ない。北海道の整備状況は全国で9番目となっている。滋賀県、徳島県、高知県、佐賀県の整備状況は少なすぎるようである。
1-3 進捗状況見込み
2019年度末見込みの無電柱化推進計画の進捗状況は次の表のとおりである。