はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第21章 環状夢の橋

令和2年6月中旬から平成3年3月上旬にかけて環状夢の橋のリニューアル工事が決定しました。この工事の目的は「札幌市橋梁長寿命化修繕計画」に基づく橋桁工事です。環状線も環状夢の橋も通行減少となります。

1.北海道礦業鉄道千歳線

大正9年に北海道礦業鉄道が旧千歳線を建設しました。大正15年8年には苗穂駅から札幌市の東部を迂回して東札幌の南部を通過し、北広島・千歳を経て沼ノ端までの路線となりました。

昭和18年大東亜戦争での陸上交通の整備で買収されて、千歳線と呼ばれる国鉄の一路線となりました。輸送の条件が整うと鉄道沿線の豊平から菊水、東札幌にかけて産業が発展しました。白石には北都ゴム工業所、三共ゴム工業所、東札幌1条2丁目で豊平製鋼所、東札幌1条3丁目で白熊ゴムが創業していました。

東札幌に木材工場6ヶ所あり、乳製品加工所、白石機械製作所などのほか、昭和27年は北日本毛織会社が九州までの事業を展開し650余名の従業員が働いていました。しかし、千歳線は昭和48年に白石駅から新札幌経由に路線が変更され東札幌から鉄路は消え去りました。

月寒駅から東札幌駅を経由して苗穂駅までは貨物専用線として利用されていましたが、廃線後は管理されないまま雑草がはびこり荒れ放題となりました。心無い市民によるごみ捨て場、廃品業者による廃品集積場と化し、周辺住民の住環境は環境衛生上からも悪化の一途をたどりました。

当時の国鉄は配線跡地の環境整備を全く行わず、札幌市も所管外であることを理由に門戸を閉ざしていました。周辺町内会は春と秋の清掃月間に合わせて環境整備に当たりましたが、住民に清掃への参加を強制することはできません。

住環境の悪化を懸念した東札幌町内会連合会は、東札幌地区旧千歳線跡地対策委員会を設置し答申書にまとめて札幌市長へ陳情しました。これにより昭和54年、札幌市は国鉄千歳線月寒駅より東札幌1条1丁目までを買収し、側溝、フェンス、砂利道を暫定整備して一部に植樹を行いました。

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2.環状夢の橋

昭和55年5月に東札幌町内会連合会14の町内会約700人が参加して、暫定整備された砂利道に沿うように桜の木の苗木200本を植樹しました。各町内会の子ども会は区域を分担し、桜の根がつくまでの給水や冬が呼気、周囲のゴミ拾いなどを行いました。

東札幌地区砂利道の愛称は公募で「ふれあいの並木道」と命名されました。その後、アスフアルト舗装工事が行われて白石サイクリングロードとなり、道々札幌環状線より東札幌1条3丁目までの整備が完了して街路灯が点灯しました。

平成元年12月に、白石サイクリングロードのシンボルである札幌市白石区東札幌1条6丁目と同栄町1丁目との間を抜ける道道札幌環状線に「環状夢の橋」が完成しました。

札幌市の都市景観委員会の委員をされていた建築家の倉本龍彦氏のデザインで門型ラーメン式で高さ7m、上のほうに高く聳えている門型骨組みは、構造には関係なさそうにみえます。

環状夢の橋は、長さが179m、幅5mの自転車・歩行者専用の橋として平成元年12月26日に開通式が行われました。白石サイクリングロードの正式名称は「道道札幌恵庭自転車道線」で、環状通が交差するところに架かる橋のおかげで、車を気にすることなく交通量の多い環状通を渡ることができます。

白石サイクリングロードは白石区東札幌から北広島市までの約24.5kmが整備されました。厚別区区間の約4.5kmは平成20年の公募により「陽だまりロード」という愛称になり、また、北広島市の区間は「エルフィンロード」と呼ばれています。

白石サイクリングロードは、健康に対する意識の高まりなどからウオーキングを楽しむ区民が増えました。区民から「サイクリングロード」という名前では自転車優先という印象が強いという声が寄せられていました。

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3.マナー違反の象徴

平成6年頃から札幌で市内でペットブームが流行し、白石サイクリングロードや周辺の公園で回収用のビニール袋を持たずに犬を散歩させる人や、糞便を放置して平然と去っていく人々を見かけるようになりました。

春と秋の公園清掃時には町内の道路の草むらでも多量の糞便を見かけるようになり、公園の築山や生け垣の下に放置された糞便は容易に発見できず、繁茂した雑草を刈り払う際に飛び散り、衣服はもちろん汗にまみれた顔にまで張り付きました。

町内会長は区役所の公園管理課へ公園内の糞便垂れ流し状態を撮影した写真を持参して対応策を相談しました。公園管理課の職員は効果の有無を確認できていないとしながらも、公園内へ犬の糞の持ち帰りを板いする立て看板を15枚設置しました。

それでもなお糞便の放置はなくならず、町内会役員が注意を促しても平然と立ち去る人がほとんどでした。さすがに町内の人々は公園で糞便をさせませんが、隣接町内会の人々や車で犬を連れて来る人は看板を見ても無視していました。

公園と同様に、白石サイクリングロードも回収されない糞便があちこちに放置され、保育園や幼稚園の幼児をつれて散歩する保母さん方は、幼児が糞便に近づかないようにと気を配ることに疲れ果てていました。

環状夢の橋のフェンスで囲まれている179mの区間は、フェンスの側に放置された糞便の水分が蒸発して乾燥し切った状態となり、自転車や人が通る中央部分を風が吹くたびに転がっていました。ごみ袋をもって回収に行っても、3度や4度で回収できるよう量ではありません。

区役所へ毎日のように糞便放置の苦情電話がかかりました。そのたびに区役所職員が数人で拾い集めてごみ袋に収容していました。きれいになったと思ったら、2~3日後には再び糞便が散乱して転がり始めます。

区役所へペットショップへ糞便放置の苦情が多いので、ペットの飼育者へ注意を喚起するよう依頼しました。これにより、白石サイクリングロードから犬の糞便が消えて苦情の電話も止み、心地よい風に当たりながら散歩を楽しめるようになりました。

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4.白石こころーど誕生

白石サイクリングロードをスピードを上げて走り抜ける自転車が増え、自転車と歩行者との接触事故などの危険性が高まりました。自転車で走る去る人から、邪魔だから歩くなと苦情を言われることもあり、両者の安全をいかに守るかが課題となりました。

健康に対する意識の高まりなどからウオーキングを楽しむ区民が増加したこともあり、自転車優先の印象を受けやすい「サイクリングロード」という愛称を変更するために、区民などから新しい愛称を募集しました。

平成26年秋に区民の方などから1,750点の応募が集まり、1回目の選考では区内の小・中学生などによるワークショップが行われました。2回目の選考では区民による人気投票を実施したところ、4,555票もの投票がありました。

最終選考対象となった作品は、「しろいし四季の道、白石快道、しろっぴー四季彩ロード、希望の道、白石ラブリーロード、白こころーど」の6作品でした。地域住民や有識者などを委員とした最終選考で、新しい愛称を「白石こころーど」に決定しました。

白石こころーどの魅力は市街地にあるにもかかわらず、交差点がアンダーパス化されており、自転車も歩行者も信号などで止まることなく安全に快適に通行できるところです。

サイクリングやジョギングはもちろん、小さな子どもたちの遠足やマラソン大会などにも利用され、多くの区民の健康づくりやレクリエーションの場としても役立っています。

白石こころーどは道路交通法上、進行方向に向かって歩行者は道路の右側に、自転車は左側に寄って通行することとなっています。おおむねの通行区分を示すために、道路上に「中央線」と「外側線」を表示し、区間によっては自転車・歩行者のマークと進行方向を示す矢印も表示しています。

歩行者優先の観点から安全な間隔を保ち、自転車は徐行を心掛けます。また、空き缶やペットボトルなどのごみは各自持ち帰るようにします。そして、ペットの「ふん」はビニール袋などを持参し、飼い主が責任を持って始末することにしています。

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5.ふれあいの並木道

東札幌1条2丁目から6丁目までの区間にある「ふれあいの並木道」は、昭和56年5月に東札幌町内連合会の地域住民が、自ら憩いの場をつくり白石区ふるさと会と協力して整備した場所です。これにより、旧国鉄千歳線の跡地は見事によみがえりました。

大勢の地域住民とボランティアなどが参加し、関山桜の苗木120本を植樹しました。春の息吹が感じられる頃になるとソメイヨシノ(染井吉野)が花を咲かせ、人々は満開の桜を見るために散策を始めます。


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現在に至るまで水やりや冬囲い、ごみ拾いなども地域住民が協力して行っており、美しい桜の名所の一つとなっています。この通りには桜のほかにもイチイ、モンタナマツ、白樺、ナナカマド、ライラック、ツツジなどが植えられています。

ソメイヨシノ(染井吉野)の花が終わると、カンザン(関山)が八重桜を咲かせます。


 横浜市港南区の桜道は高齢となった桜が全て伐採され、ヨウコウ桜の幼木が植樹されました。かっての横浜市の桜道を彷彿させるような桜並木で、ソメイヨシノ(染井吉野)とカンザン(関山)が満開になると息をのむような美しさです。ぜひ一度、観桜においでください。

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6.シジュウカラ

平成20年の春、環状夢の橋の高架下にある桜にアメリカ軍の軍需物資に付いて渡来したとされる、アメリカシロヒトリの幼虫が密集していました。風が吹くと枝から毛虫が落ちてくるので、木の下へ遊びにくる保育園の幼児の上に落ちる可能性がありました。

食害によりサクラなどが衰退することや、糞で樹木の周囲が汚くなります。年を経るごとに多量の発生が続き、白石区土木部維持管理課公園緑化係に殺虫剤の散布を要請しました。しかし、人体にも影響を与える可能性があるとして使用は不可能とされました。

天敵がいないか調べると、東札幌でも見かけるシジュウカラと分かりました。シジュウカラの一羽が一年間に食べる虫の量を蛾の幼虫に換算すると125,000匹になるそうです。

平成26年3月にシジュウカラの力を借りようと櫻の木に巣箱を架けました。若葉が茂る頃にシジュウカラがやってきて、巣箱のようすを確かめるように出入りしています。

5月21日午後のことです。マンション4階のお母さんから「小鳥の赤ちゃんが落ちています」と連絡がありました。二人の姉妹とお友達が小さな箱に入れた「小鳥の赤ちゃん」を見せてくれました。まだ羽毛が生えそろっていませんが、時々わずかに足を動かします。

姉が「小鳥の巣箱がある桜の木の下に落ちていたのを見つけました」というので、手に乗せて観察すると大怪我をしているようには見えません。お礼を述べてからあずかって巣箱へ戻しました。

その後も注意深く巣箱を眺めていると、シジュウカラが餌をくちばしに挟んで何度も巣箱へ入っていくのを見かけるようになりました。巣箱へ戻した小鳥の赤ちゃんが死んでいれば、ほかの赤ちゃんに影響があるため親鳥は巣箱から運び出します。

二人の姉妹とお友達が通う小学校へ「シジュウカラの赤ちゃん」を助けたことを文書で連絡し、褒めていただくよう要請しました。校長先生は感激して全校朝会で、二人の姉妹とお友達がシジュウカラの赤ちゃんを助けたことをお知らせしたそうです。

秋に巣箱を下して内部を確認すると、何羽いたのか分かりませんが全ての小鳥は無事に巣だったようでした。白石区土木部維持管理課公園緑化係は樹木の幹にカプセルに入った殺虫剤を撃ち込んでくれました。翌年、アメリカシロヒトリの幼虫は全滅しました。

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7.リニューアル工事

環状夢の橋も歳を取りました。橋の上のアスファルトは劣化して所々剥がれ、橋へ上る自転車道や階段の表面がかがれ落ち、門型骨組みやアーチのデザインにもサビが見られます。橋桁に流れ落ちたサビ色が染み付き、フェンスの塗装も剥がれ老朽化が見られます。


 令和2年6月中旬から平成3年3月上旬にかけて環状夢の橋のリニューアル工事が決定しました。この工事の目的は「札幌市橋梁長寿命化修繕計画」に基づく橋桁工事です。環状線も環状夢の橋も通行減少となります。

橋の舗装と橋へ上がる自転車道はすべて剥がされて新しい舗装となり、階段の表面も剥がされて階段面は新しくなります。橋桁とフェンスの塗装も塗り替えられ、アーチと門型骨組みも覆われて塗装が新しくなります。さらに、門型骨組みを下から照らしあげていた照明も更新され、最新のLEDライトになるようです。

12月に入ると東側と西側の橋へ上り下りする階段の更新が完了して、階段の滑り止めは黄色く塗られました。これにより、足を踏み外すお年寄りを守ることができると考えられたようです。

門型骨組みとアーチ、橋桁とフェンスの塗装は塗り替えられ、建築当時の姿がよみがえりました。来年3月末までかけて照明設備が施されます。リニューアルでよみがえった姿がいつまで保たれるか、誰もが札幌市橋梁長寿命化修繕計画の成果を見守っています。

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