1 老朽マンションの現状
1) 札幌市内のマンション
2023年6月24日の北海道新聞は、「老朽マンション進まぬ建て替え」「高齢化で合意形成困難」という記事を掲載した。
道内で、老朽化した分譲マンションの解体や建て替えが進んでいない。1972年の札幌冬季五輪に合わせてマンションの建設が進んだ札幌市では、10年後に全体の2割が築50年以上になる見通しだ。所有者の高齢化が進み、解体・建て替えの合意形成は容易ではない。政府は「老朽マンション」に対応するための住民の議決要件を緩和する方針だが、反対意見が置き去りにされる懸念もあるなど、なを課題は残る。
札幌市中央区の繁華街ススキノに近い南8西3に、鉄筋コンクリート建ての古びたビルが建つ。築39年。かって投資物件として分譲され、現在の区分所有者は110人、法人に上る。
関係者によると、ビルはホテルや宗教団体の施設として使われてきたが、ホテルはすでに閉業。法律上マンションに分類されている。老朽化が進み、外壁が落ちる恐れがあるためマンション建て替え円滑化法の敷地売却制度を使い、札幌市が昨年11月に「解体の必要がある」と認定した。札幌市が関与する同法による解体は初のケースという。
今年4月、区分所有者の総会は、全体の5分の4以上の賛成で敷地売却を決議。全員の合意が得られなくても5分の4以上の賛成で建て替えができるとする区分所有法に基づいて決定した。
札幌の不動産業者が買い受け解体する計画だが、一部の区分所有者は「不動産業者の選定が不透明だ」などと反発したままだ。売却見込み額の約6億円のうち、宗教団体に3億円の立ち退き料を支払うことにも異論が出ている。
札幌市の区分所有者の男性(80歳)は取材に「強引に計画を進めようとしている」と批判。監理組合の担当者は「透明性を確保してきた」と説明するが、別の区分所有者は「訴訟も検討する」という。
札幌市の推計による2020年までに建築されたマンションは3813棟。このうち築50年以上は33棟で、10年五の33年には751棟に増えると想定される。築40年以上になると、33年には5割近い1765棟に上ると予想される
2) 区分所有者の高齢化も課題
区分所有法の建て替え条件のハードルが高いとする声も出ている。札幌の不動産業者は「管理組合が機能していないケースも多く、5分4の合意でさえ難しい」という。
札幌市中央区宮ケ丘猶マンション「ルーブル富士神社外苑(18戸)」は21年、道外の不動産業者が再開のため1戸ずつ買い取った。築40年近くで老朽化が進んでいたためだ。住人は引っ越し、現在は更地になっている。調整の窓口となった不動産コンサルの谷内社長は「戸数が少ないこともあり、全員の合意を得られたが準備から2年もかかった」と振り返る。
区分所有者の高齢化も課題だ。北海道マンション管理組合連合会の副会長(79歳)は「区分所有さの高齢化が進み、数十年後の建て替えについて現実的に考えられない人が多い」と語る。実際、同連合会が昨年行ったアンケートでは、101組合のうち、マンションを「修繕して長く使うことしか考えれない」との回答が8割にも上った。
住宅問題に詳しい大阪経済法科大学の米山教授によると、マンションは適切に管理すれば60~70年は使用できるという。国の法制審議会は今月8日、解体や建て替えに関する区分所有補の決議の要件を原稿に「5分の4以上」から「4分の3以上」に引き下げることを中心とした制度見直しの中間試案を示した。
老朽化したマンションへの対応を加速化させる狙いだが、米山教授は「決議の要件を下げ過ぎると多数決が押し切り、居住する身寄りのない高齢者らの所有権を侵害する恐れがある」と指摘。丁寧な説明や、引っ越しを余儀なくされる場合の公的支援も必要と訴えている。
分譲マンションの解体・建て替えは、区分所有法に基づき区分所有者の5分の4以上が賛成して議決することが必要と定めています。解体して敷地を売却する場合は、民法にもとづき全員の同意が必要になります。
ただし、耐震強度の不足や外壁落下の恐れがあればマンション建て替え円滑化法の「敷地売却制度」を使い、自治体から認定を受け、5分の4以上の賛成を得たうえで、不動産業者に建物や敷居を売却することができます。
3) 札幌のマンション現状
札幌市のマンションの新規供給戸数は下記のグラフの通りです。
・ 総戸数は184,255戸総棟数は3,813棟、1棟平均48.32戸となっています。
・ 令和2年の調査で建築後40年以上515棟(総棟数の13%)です。
・ 10年後の令和12年には1,420棟(現棟数の37,2%)になります。
・ 建築後25年のマンションは2.160棟(現棟数の56.6%)になります。
・ 今後20年で現棟数の60%前後のマンションは高経年マンションになります。
令和3年7月のマンション管理実態調査で、小規模マンションが多いのが札幌のマンションの特色です。1戸の住居数は21~40戸が32%、平均戸数は61.1とになります。全戸に占める空き家率は4.6%、約30%はゼロでした。
令和3年7月のの札幌市マンション管理実態調査、マンションを適切に管理していくうえで必要なことは、
① 区分所有者(組合員)の管理への関心 71.6%
② 居住者間の円滑なコミュニケーション 40.8%
③ 耐震診断・工事費に対する行政からの助成金 22.4%
4) マンションの性能向上改修
外断熱工法による改修の考え方は、改修前の図は内断熱でした。外断熱改修では建物の外側から断熱材を張り付けて外装を行う工法です。
左下の図は、一般的なマンションの熱損失比率です。外壁からの熱損失率は45%、窓などの開口部からの熱温室率は25%、屋上からの熱損失率と一階基礎への熱損失率はそれぞれ5%となります。さらに、換気による熱損失比率は20%です。
中央の図は改修前の状態です。内断熱の場合、外壁と屋上の全体に熱端が出来ています。上の階の床には断熱の切れ目があります。下の階の床には結露が生じやすくなります。このように熱が外へ逃げて行くのを防止しなければなりません。
外断熱改修では、屋上に断熱材を敷き詰めます。外壁には外付けサッシと断熱材を追加します。一階の下部は基礎の部分まで外付けサッシと断熱材を入れます。これにより、熱柱が失われて断熱効果が高まります。
どの部位を断熱改修すればよいかというと、熱損失が70%を越える外壁と窓を優先します。次に、屋根の断熱防水と、床の基礎外周部の順になります。いずれも、最大の特色は住みながら工事ができることです。
外断熱改修で解決できる3つの課題は、
① 外壁外側に貼る断熱材で躯体を保護し、外側からの雨水の侵入と寒冷地では凍害を防止することです。
② 連続する断熱材によリ熱柱改善してへ釣ろとカビを防止し、冬季の暖房費と夏季の冷房費を減少させる。
③ 耐久性のある仕上げ材を選定することで、次の工事を20~25年延ばすことも可能になります。修繕費用の削減が可能です。
2010年に断熱改修を実施した東区のマンション(SRC造14階61戸)では、改修後の測定ビ外気温が低いにもかかわらず、改修後の室内平均温度は上昇し、特に床付近が上昇していました。暖房消費(ガス)は、改修後平均で約25%、最大32%減少しました。