2 長期修繕計画の見直しを
2-1 修繕積立金の根拠と建物維持
2-1 大規模修繕の時期
・ 外壁・防水など・・・・・・・・15年(12年)周期で大規模修繕
・ 給水管・・・・・・・・・・・・25年~40年程度(更新)
・ 排水管・・・・・・・・・・・・30年~40年程度(更新)
・ エレベーター・・・・・・・・・25年~30年程度
・ オートロック・・・・・・・・・15年~20年程度
・ サッシ・玄関ドア・手摺り・・・30年~35年程度
その他、機械式駐車場・スライド式駐輪場・消防設備・各種電気盤・連結送水管・ポンプ類・ガス配管・外交や樹木・各種電気盤など。
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2-2 修繕計画の甘さ
大規模修繕は、建物を適正に維持管理し、快適な住環境を保っていくため、長期的な展望に立って修繕時期や内容、費用などを的確に施すために必要です。
マンション管理組合の収入は、管理費と修繕積立金、駐車場使用料、ルーフバルコニー使用料、専用庭使用料、その他、駐車場使用料などです。大規模修繕が資金不測になる原因は「修繕計画の甘さ」です。東日本大震災以降の工事費高騰、無駄な工事の実施、駐車場の空き率(特に都心部)、消費税の値上げ等により計画通りには進まなくなります。
更に、長期修繕計画にもその問題があります。1回目の大規模修繕工事時は修繕積立金にて捉えたものの、2回目の設備改修時における工事金額に甘さがあります。計画通りの収入がなくなり、予定外の出費があると計画に狂いが生じます。
管理組合が抱えている問題は、三割のマンションで修繕積立金が不足しています。しかも、建物の老朽化で築30年を超えるマンションが2030年には369万戸と3倍以上に増加します。組合員の高齢化で60歳以上が5割を突破し、年金暮らしの世帯が増加しています。
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2-3 修繕積立金値上げの前に
建物を適正に維持管理し、快適な住環境を保っていくことはとても重要です。長期修繕計画には、経年劣化を修繕する費用だけが見込まれています。ですから、不具合を発見した時には、施工ミスか工事を行う必要があるのか見極めることが大切です。
長期修繕計画には「施工不良」の修繕費は見込まれていません。きちんとチェックしていないと、知らない間に管理組合の費用負担で修繕してあり、修繕積立金が不足になっているケースがあまりも多いのです。まず、節約が求められます。
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2-4 段階増額積立方式と一時金方式
段階増額積立方式は一定の周期で得上げする方法ですが、月額5千円未満の増額であっても、専有面積1平方メートル当たり100円未満であっても、結果的に組合員を苦しめます。
新築分譲時に「修繕積立金」を徴収し、初期段階の積立金を低く抑えて一定の周期で段階的に引き上げていくと、組合員の合意形成が不可能となったり、徴収不足により適切な修繕ができなくなる可能性があります。
修繕時期になって必要とする額を徴収する「一時金方式」は、組合員の合意を形成することが困難を極め、徴収不足により適切な修繕ができなくなります。また、管理組合内に不協和音が起き、生活に悪影響をきたすことが考えられます。
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2-5 均等積立方式
国土交通省のガイドラインでは「段階増額積立方式」ではなく、毎月の負担額を均等に積み立てる「均等積立方式」を推奨しています。これは築年数と共に組合員の高齢化も考慮しているからです。
修繕積立金の現状を把握して、現在いくら残っているのかを確認することが重要です。管理費会計から繰り入れている組合は、繰入金の推移にも注意を払う必要があります。
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2-6 修繕計画の見直し
長期修繕計画は、将来を見据えた計画になっているか定期的な見直しが必要です。経年劣化、バルリアフリー化、オートロックの更新、消費税の変動など、様々な要因で変動します。長期修繕計画は一度作れば大丈夫ではありません。
大規模修繕工事は、一度だけで終わるものではありません。資金計画の確認と検討を通して、組合員の積立金を大事に活用しなければなりません。ムダ使いせずに、中長期的視点での提案が重要です。
修繕積立金が確保でききないと、管理状態も悪く適切な修繕ができません。区分所有者が転居し、賃貸マンション化で維持管理の意識がさらに低下し、「居住性が低下」すると「老朽化・スラム化」が置きます。
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2-7 管理費の見直し
管理費は、どのような項目にいくら費用が掛かっているのかしっかり把握し、自分たちでできることはないかを見極め不要なものは削ることが肝要です。
委託する管理業務の代表的なものは、管理組合の会計や出納に関する業務、マンションの維持や修繕尾企画と実施調整、管理組合の運営支援、監理員業などです。管理会社が業務を祭いてくしている代表的なものは、定期清掃業務、消防設備点検、排水管清掃業務、設備点検業務などです。
まず、管理会社への業務委託内容を見直します。管理会社事務、管理人業務をはじめとする委託費用の他に、管理委託業務を管理会社を介さずに管理組合が直接業者へ委託することで費用を節減しているマンションもあります。
直接業者へ委託できる管理業務は、長期修繕計画の見直し、建物のメンテナンス、エレベーター保守点検、給水ポンプ保守点検、給水給湯設備保守点検、排水管清掃、照明設備点検、オートロック点検、ガス設備点検、ケーブルテレビ保守点検、消防設備点検、非常警報設備点検、共用部特別清掃、駐車場除雪などです。
これらの業務を管理会社へ委託すると、管理会社は専門業者へ業務を再委託します。この業務再委託時に、管理会社は委託手数料を加算するので管理組合の負担は増えることになります。管理組合が直接業務委託をすることでこの費用を削減できます。
共用部の定期清掃は、サービス低下になってしまっては意味がないが、回数などの使用を見直すことで削減も可能です。清掃の専門会社に管理組合から直接依頼しているケースもあります。
エレベーターのメンテナンス契約も精査が必要です。メンテナンス業者と管理組合が直接契約をすることで2割ほど費用を削減しているところもあります。また、設置メーカー系列業者ではなく、メンテナンス専門の業者に依頼して費用を削減している組合もあります。
近年の新築マンションでは共用部の照明をLED化しています。電気料金の抑制に寄与するため考慮の対象となります。但し、照明器具の交換を伴う場合があるため、交換箇所数によりメリットを享受できないマンションのあります。
駐車場の収入は計画通りにはいきません。例えば、総収容台数が100台で使用料月額は25000円、年間予定収入が3千万円のマンションの場合です。稼働率が55%になると、概算年収は1650万円となり、収入不足は1350万円ですから、10年で1億3千5百万円も収入が減少することになります。
機械式駐車場も実情に合わせて見直しが必要です。駐車場の維持管理に修繕費用が掛かりますが、駐車場は必要ですから放置できません。そこで、管理費や修繕積立金とは区別した会計にします。利用実態と将来的な見込みを検討し、平台駐車場への転嫁や、リース形式での建て替え、または外部への貸し出しも検討すべきです。
但し、外部貸し出しは管理規約のン変更が必要で、かつ税金がかかるため維持管理費や修繕費との収支バランスの見極めが必要になります。
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2-8 修繕レール
2009年に竣工した59階建て794戸のマンションで、2013年7月の総会で次のような修繕ルール五ケ条を決議しました。
・ 50年間の修繕計画で資金を確保
1㎡当たり87円の修繕積立金を国土交通省水準の216円に引き上げ。
・ 修繕積立金値上げは原則1回だけ
将来への付け回しはしない。
・ 修繕費用の見積もりは保守的に
不測の事態も考慮して支出計画に十分な余裕を置く。
・ 現在と将来の組合員負担を公平に
段階増額積立方式から均等積立方式へ。
・ 50年安心評価を市場に定着させる
周辺の他のマンションより資産価値が上となる。
将来の不安を解消するために最低50年間の維持管理を想定し、将来リスクに対応した「修繕計画」と「資金計画」を決定しました。放置すると組合員負担が増え、現在の3倍の積立金を払わないと修繕できなくなります。長期修繕計画の内容を確認し、必ず見直してください。
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2-9 修繕周期15年とは
1回目の大規模修繕は12年目で実施し、新築時より良い材料を使用しました。これで2回目の修繕時期を延ばせるはずです。しかし、良い材料を使っても、チェック漏れ・施工漏れ・施工不良があれば意味がありません。高い施工精度が求められます。
管理組合目線で対応でき、品質かつ施工精度が確保できる設計事務所、施工会社でなければ修繕周期15年には対応できません。管理組合だけでなく、マンションに関わる全ての人から信頼される施工精度と内容でなければ「修繕周期15年認定マンション」にはなりません。
修繕周期を15年にすることで、積立金不足を解決します。
・ 周期を伸ばすことで資金計画を楽にする
・ 不良工事をなくし、余計な支出を抑える
・ 大規模修繕尾わずらわしさを軽減したい
少しでも節約して、安心なマンション生活を送ってほしいと考えたのです。
修繕周期15年プロジャクトは修繕周期を15年に伸ばすために必要な知識と技能を取得するための研修を実施し、設計事務所には「大規模修繕設計・工事監理技術者」、施工会社には「大規模修繕施工監理技術者」の資格認定を授与しています。
定期的な会議と研修を通してお客様の要望に応えられるように、2日間の研修終了後は、マインド力・技術力の強化を図っています。
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謝辞:文中に掲載しました写真類は、講演のレジメから転載させていただきました。ありがとうございます。