2 エレベーター修繕事例
札幌Pハイムは、1986年に竣工した六階建てマンションでエレベーターは4基あります。POG契約で14年間保守点検をしてきたエレベーターに不具合が出てきました。
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2-1 保守会社の提案
築13年目の理事会で、管理会社の職員が見積書を提示して検討を促しました。エレベーターの保守会社より、そろそろ修繕しないと危険なので次のような工事を提案しています。こちらに毎月の点検報告書がありますのでご覧ください。各階の停止位置が微妙に狂って、いつ段差が生じてもおかしくない状態です。床とエレベーターに段差ができると乗降が危険になります。
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2-2 見積書の内容
建物内エレベーター2基に対する下記機能維持工事一式
① モーター帰還制御用ユニット取替・調整
② 制御盤内主要リレー取替
③ マシンギヤオイル取替
④ マシンブレーキ分解・手入れ・調整
⑤ かご、各階ドアガイドシュー取替
品名 | 数量 | 単位 | 単価 | 月額 | 備考 |
モーター帰還制御用ユニット | 4 | 台 | 75,000 | 300,000 | 制御盤中枢部 |
制御盤リレー NIS | 4 | 台 | 9,000 | 36,000 | 制御盤内部品 |
制御盤リレー ZRS,LR | 8 | 台 | 8,500 | 68,000 | |
制御盤リレー DO,DC,DRR,SDP | 16 | 台 | 2,000 | 8,000 | DOはドア |
制御盤リレー AZX | 4 | 台 | 2,000 | 8,000 | |
制御盤リレー DZ | 4 | 台 | 2,200 | 8,800 | |
制御盤リレー UD | 4 | 台 | 21,000 | 84,000 | アップダウン制御 |
制御盤リレー U,D,IP | 4 | 組 | 45,000 | 180,000 | |
純正マシン用ギヤーオイル | 4 | 缶 | 8,100 | 32,400 | |
ブレーキ清掃用ウエス | 2 | 個 | 1,100 | 2,200 | ウエスはぼろきれ |
かご・各階ドアガイドシュー | 144 | 個 | 9,850 | 136,800 | |
調整用ウェート貸与料 | 450 | kg | 10 | 4,500 | 重りを載せ確認 |
取替工事費・調整費 | 1 | 式 | | 1,400,000 | |
運送費 | 11 | 式 | | 65,000 | |
諸経費 | 1 | 式 | | 766,500 | |
合計 | 5,877,000 | |
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2-3 理事会での検討
札幌Pハイムは管理組合が管理会社と管理委託契約を一括で契約し、メーカーの保守会社とは間接契約でした。理事会はこれまでにエレベーター保守契約と修繕にかかった費用を一覧表にまとめてみました。年間保守金額は6人乗り8階停止×4基の合計金額(消費税別)です。
期 | 西暦 | 保守契約内容 | 月額@ | 年間保守金額 | 消費税 | 小修繕費 | 備考 |
1 | 1986 | POG・9ヶ月分 | 34,500 | 1,242,000 | 0 | 0 | 注1 |
2 | 1987 | POG・年7回 | 22,208 | 1,066,000 | 0 | 0 | 注2 |
3 | 1988 | POG・隔月点検 | 19,750 | 948,000 | 14,220 | 0 | 消費税3% |
4 | 1989 | 同上 | 19,750 | 948,000 | 28,440 | 0 | |
5 | 1990 | 同上 | 19,750 | 948,000 | 28,440 | 0 | |
6 | 1991 | POG・年9回点検 | 26,625 | 1,422,000 | 42,660 | 300,000 | 注3 |
7 | 1992 | 同上 | 29,625 | 1,422,000 | 42,660 | 0 | |
8 | 1993 | 同上 | 29,625 | 1,422,000 | 42,000 | 226,600 | 注4 |
9 | 1994 | 同上 | 29,625 | 1,422,000 | 42,000 | 329,600 | 注5 |
10 | 1995 | POG・毎月点検 | 39,500 | 1,896,000 | 56,880 | 0 | 注6 |
11 | 1996 | 同上 | 39,500 | 1,896,000 | 75,840 | 0 | 消費税5% |
12 | 1997 | 同上 | 39,500 | 1,896,000 | 94,800 | 0 | 上欄~注7 |
13 | 1998 | 同上 | 39,500 | 1,896,000 | 94,800 | 0 | |
合計 | 18,424,000 | 564,060 | 856,200 | 19,844,260 |
注1.竣工から三か月間の保守点検はメーカーが責任をもって無料で行う。
注2.二か月経過後に隔月点検となる。
注3.定期総会で保守点検を年間9回に変更。ブレーキ手入れとギヤオイル取替。
注4.ブレーキ手入れ・ギヤオイル取替。
注5.押しボタン取替。
注7.保守会社の申し入れで年12回に変更。
参考1:2期の年間保守金額1,066,000円の根拠は、
4基×(34,500円×2か月)+(39,500円×5回)
・ 隔月点検(年6回点検)は、当時の理事長が「管理費の赤字」を食い止めるために管理会社へ強く申し入れをして実現しました。
参考2:5期目に保守会社から「築5年を経過したので、年6回保守では機能を維持できない。フルメンテナンスの年間12回3,188,880円を勧めるが、少なくともPOG年12回点検にしてほしい」と申し出がありました。定期総会で現行年6回点検を、今後は年9回点検とする修正案が可決されました(総会議事録より)。
過去13年間で支出されたエレベーター関係費用は19,844,260円でした。契約の内容によって、年間の保守金額が大きく変わることに注意してください。但し、札幌Pマンションは管理会社を間に入れた間接契約のため、管理会社の必要経費と利益が加算されています。
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2-4 情報の収集
札幌Pハイムの理事会は、エレベータ保守会社と次のような流れで改善への道を歩み始めました。
① メーカー以外の保守業者から見積もりを徴収したい・・・電話帳で調べる
② 他のマンションの補修契約内容と金額を知りたい・・・・どのようにして?
③ POGからFMに切り替えることができるだろうか・・・確認する
④ FMにしたほうが本当に安くて安心な選択になるのか・・シュミレーションする
⑤ この問題で信頼できるアドバイザーがいるか・・・・・・誰に相談すべきか?
⑥ 管理会社経由の契約形態だが、どのように保守会社と直接交渉するか
⑦ 理事会でエレベータ保守直接契約へ切替えを固めてから交渉をスタートさせる
依頼した保守会社から2通の見積書が届きました。機能回復工事見積書はこれまでの内容に制御盤ボードとロープ取替、関連する調整工事が追加されて総額8,358,000円(税別)でした。FM(フルメンテナンス)契約の見積もりは月額220,000円(1基55,000円)×12ヶ月=年間2,640,000円(税別)となっていました。
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2-5 改善への道筋
理事会と修繕委員会の合同会議で行われた検討内容を、理事会議事録より抜粋要約すると次のような流れとなりました。
ア. 1999.5.14 理事会と専門委員会は、エレベーター修繕と保守契約試算表を検討
し結論を出した。
a. これまでの13年間、エレベーター保守費用は大変安価に済んだと言える。
b. 相対的に補修費用を控えてきたため、FM契約の場合より老朽化が進んでいる。
c. 15年目に730万円の機能回復工事は必須と考える(835万円をに値引)。
d. エレベーターは今後急激に補修が増加しPOGでは夜間・休日対応に不安がある。
e. その都度100万円単位の補修工事決断は理事長の大きな負担となる。
f. FMは少し高くなるが将来的に安心でき、長期的には安価な選択となる。
イ. 1999.6.10 4基のうち1基のエレベーターが最上階で所定の位置から30cm
高い位置で停止する事故が発生。機能に関する不安は緊急性を帯びてきた。
ウ. 1999.7.3 配付された臨時総会議案書に、エレベータ関係では次の要旨が提案
されていた。
a. 今年度小修繕としてギアーオイル交換とブレーキ点検などを実施(約35万円)。
b. エレベーターの故障頻発で機能回復工事が必要。
c. 次年度から緊急工事防止のためFMに切り替えたい。
d. 来年度のFM保守契約費は年間2,772,000円(22万円×12ヶ月+消費
税)となる。(現在はPOG保守契約で1,91,840円である。)
エ. 1999.7.17 臨時総会を開催。エレベーター保守工事に関し、小破修繕のギアー
オイル交換とブレーキ点検等と機能回復工事を一括して修繕積立金を取り崩して施工
する。(総会議事録)
オ. 1999.8.5 理事長名でエレベーター保守会社に機能回復工事契約及び保守契約
について「見積依頼書」を発送。
カ. 1999.8.8 理事会と修繕委員会の合同会議でエレベーター保守会社と協議
a. エレベーター機能回復工事はオイルとブレーキ等一切を含めて7百万円(税別)
b. FM契約は、月額18万円(1基45千円×12ヶ月=年間216万万円)(税別)
c. 但し、修繕費の都合で機能回復工事代金の支払いは2000年3月以降とし、F
M契約もそれ以降とする。
d. それまではPOG契約を継続し、実質的にFM契約同等の保守を行う。
キ. 1999.9 新年度(1999/10~2000/9迄)予算に次の費用を計上する。
a. 1999年9月から6ヶ月間はPOG契約を継続。
月額158,000円(1基39,500円)。
b. 2000年4月から6ヶ月間はFM契約に移行。
月額180,000円(1基45,000円)
ク. 1999.10 新年度に移行。機能回復工事を契約して順次施工。
ケ. 2003.3 機能回復工事のすべてを完了。
コ. 2000.4 築後14年目にして、POG保守契約よりFM保守契約へ移行。
サ. 2000.6 エレベーター機能回復工事代金700万円+消費税の支払完了。
エレベーターに不具合が発見されてから終結まで1年6ヶ月を要した難題でした。
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