1 国の借金は返済不要では
1 財務省の発表は
財務省が発表した2024年3月1日現在でも日本人の人口(1億2397万1千人)を基に単純計算すると、国民1人当たりの借金は約983万円に上るそうです。日本人の人口ですから、赤ちゃんから寝込んでいる老人までの借金ということになります。
財務省のサイトを調べると、国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(令和5年3月末現在)がありました。これは国の借金であり、国民の借金ではないとの見方があります。また、国は債務だけでなく資産も持っているので、実際の債務はそれほど大きくないとの見方もあります。
また、国債はその9割程度を国内で保有しているため、問題なく、自国通貨建てでの債務は無制限に増やすことができるとの見方もあります。まず、国債とは何かを考えてみましょう。
大昔、国王が国を統治していたとき、国王は簡単に借金を帳消しにするなどしたことで、実際にはかなり高い金利を求められました。これに対して、永久機関である議会が将来得られる税収を担保として債券を発行し、借金をするシステムを作りました。これが国債です。
この制度が英国を中心に整備され今日に至りました。日本政府が発行する国債は議会での承認が必要で、これは議会つまり日本政府という組織の債務が国債(及び借入金等)となります。
ただし、国債には上記の「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(令和2年12月末現在)」をみてもわかるように種類があります。このなかには財投機関に返済義務がある財投債(残高表の財政投融資特別会計国債)なども含まれています。
しかし、主要な国債といえる建設国債と赤字国債、さらにその60年償還ルールで発行される借換債については(残高表のうちの普通国債)、将来の税収が担保として発行されるものとなります。
そして、我々の預貯金や生命保険、年金なども国債に投資しているので、国民はむしろ債権者との見方もあります。さらにに日本銀行が大量に保有しているから問題ないとの見方もあります。
このため、我々の借金との見方が正しいのかどうかについては、いずれ国民の税金で賄わなければならないという意味では、国民の借金との見方は間違ってはいないのです。
2 国の借金とはなにか
報道などでよく見聞きする「国の借金」とは、いったいどのような借金のことなのでしょう。結論から言うと、政府が通貨を借り入れるために発行した「国債残高」のことをさしています。借りているのは日本政府であって、正確には「政府の借金」なのです。
国債保有者は政府にお金を貸している人たちで、内訳を見ると2023年3月末で日本銀行の53.9%が最多です。次に、生命保険会社や損害保険会社の18.6%、銀行等の10.8%といった金融機関です。個人で国債を持っていればその金額も含まれます。
日本銀行は、日本政府の子会社のような関係性なので返済する必要はありません。日本銀行は円を発行することができ、最終的には『生損保等』などが保有する国債を日本銀行が円を発行して買い取り、結局は返済不要の借金にすることもできるのです。
基本的には、すでに発行している国債の返済期限が来たら、政府が新たに国債を発行して返済していけば良く、国民から税金を集めて返済する必要はないのです。借金と聞くとネガティブなイメージがありますが、国家財政と家計では借金の意味合いが異なります。
海外から借金したと勘違いしている人もいますが、国債保有者に占める海外の割合は6.8%とかなり低く、国債はすべて円で発行しているので、海外から返済を求められても円を発行して返せばいいのです。政府の借金に怯える心配はないのです。
公共事業を民間企業に依頼したり、公務員の雇用を拡大したりで、政府が国債を発行して積極的に財政出動すれば民間はそれだけ潤います。誰かが別の誰かにお金を渡せば、渡した側は赤字になりますが、貰った側は黒字になります。
当たり前のことで、赤字と黒字は表裏一体なのです。政府と国民の関係も同じです。政府が赤字になれば、それだけ国民は黒字になります。政府の赤字はみんなの黒字になる、ということを忘れてはいけないのです。
反対に、政府が黒字になればその分国民は赤字になります。政府は返済不能になることがない特殊な経済主体なので、国民を黒字にするためには政府が赤字になることが必要不可欠と言えるのです。
3 失われた30年の原因
ところが、政府は長年にわたり財政黒字化を目標にしたのです。政府の財政健全化・財政黒字化というのは、国民赤字化・国民貧困化に他ならないのです。この誤った政策目標が「失われた30年」を生み出したのです。
経済が低迷している現在においても、「国の借金が過去最高を記録」みたいにメディアが国民の不安を煽り、政府の借金に対してネガティブなイメージを抱かせ、さらには「増税やむなし」という空気感を醸成させています。これは本気で止めなければいけません
国の借金は正確には政府の借金であり、国民が負担する必要のない借金なのですが、なぜメディアは「政府の借金」とはいわずネガティブなイメージを伝えるのでしょう。おそらく「国の借金」と表記することは財務省の指示であると思われます。
財務省内に「財政研究会」があり、記者などはそこで財務省からいろいろ情報を提供してもらっています。財務省の意に反すると記者クラブを出入禁止にされかねないため、どのメディアも財務省の顔色を気にしなければいけません。
実際、産経新聞や朝日新聞は、本来右と左で正反対の立場であるにもかかわらず、どちらも国の借金という言葉を使っています。新聞は軽減税率の対象商品ですので消費税率は8%です。ただ、財務省に反発すれば軽減税率から新聞が外されるかもしれません。
消費税が10%になれば、それは「値上がり」になるため買ってくれる人は減ります。軽減税率という恩恵を得るために、財務省の指示に従わざるを得ないのです。このため、メディアが国の借金と言い続けなければいけないのです。
なぜ財務省は国の借金という言葉を使わせようとするでしょうか。SNSでは「財務省は増税を促進させたら出世できるから、増税策を進めやすい空気感を作るために危機感を煽っている」という指摘も見かけますが、眉唾ものです。
財務省の人達が「このままでは日本が財政破綻する」「政府の借金を放置すると危険」と本当に問題視しているのではないかと予想しています。日本が財政破綻する可能性が0%であることは、財務省のホームページにも記されているのです。
4 若い世代にツケを回さない
財務省は、東京大学法学部出身者が多いようです。法律関係を勉強していた人は「借りたものは返すことが当たり前」といった債権債務の考え方を持っているため、国家財政と家計をごっちゃごっちゃに考えているのかもしれません。
財務省の狙いには謎が多く、「国の借金」という表現以外にも国民が「増税やむなし」と思ってしまうような表現が意外と多いのです。「将来世代にツケを回してはいけない」という表現を、見聞きした人は少なくないでしょう。
何度も「将来世代にツケを回してはいけない」や「子供たちにツケを回してはいけない」といった言葉を使われると、それは避けなければならないと情に訴えるものがあり、増税に対して寛容になってしまいます。
しかし、将来世代にツケを回さないために増税を繰り返し、ムダ削減の掛け声のもとに財政支出を縮小した結果、景気が冷え込んで経済的な理由から結婚出産できない若者が増えました。
現在は多くの若者が、奨学金という正真正銘の「借金」を背負って社会人になります。若者世代にツケを回さないはずなのに、若者は奨学金という借金を背負い、結婚できず子供も持てない生活を強いられているのです。
これこそ若者へのツケ回しです。また、「高齢者複数人を現役世代1人で支えることは難しいため、増税して対応するしかない」というメッセージを伝えるため、若者が複数人の高齢者を支えているイラストも頻繁に使用されています。
税と社会保障の一体改革という言葉も、同様の危機感を煽るためにメディアが積極的に使う言葉です。メディアを使って財務省はありとあらゆる言い回しや表現方法で、「増税は仕方がない」と思い込ませようとしています。
仮に財政危機に陥り国が信認を失えば、金利の大幅な上昇に伴い国債価額が下落し家計や企業にも影響を与え、国の円滑な資金調達が困難になり政府による様々な支払いに支障が生じる恐れがあります。財政規律を維持し、財政健全化に努めていく必要があります。
5 国民は無知じゃない
増税を煽る表現の語彙の豊富さには驚きます。「国民一人当たり数百万円の借金」といった表現は見られなくなったのは、国の借金ではなく政府の借金という認識が徐々に広まり、国民に返済義務がないことに気づいた人が増えたことによります。
とりわけコロナ禍や2023年はのインボイス制度(2023年10月1日から導入された新しい仕入税額控除の方式)をきっかけに従来の税の在り方に疑問を持ち、正しい貨幣観を身に着けた人は確実に増えました。
インボイス制度により、インボイスではない請求書は仕入税額控除が受けられません。生産・流通などの各取引段階で二重・三重に税がかかることのないよう、課税売上に係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を控除し、税が累積しない仕組みです。
また、「国民一人当たり数百万円の借金」という表現を使った場合、正しい貨幣観を持っている人から「国民一人当たり数百万円の借金なんて?っぱちだ」という批判が毎回殺到していることも影響しているようです。
メディアに本来あるべき役割を全うさせるには、メディアは炎上を特に恐れているため、「国の借金」とか「将来世代にツケを回してはいけない」といった表現を使ったときには、積極的にクレームを入れることが有効策です。
メディアを適切に機能させることは、民主主義において国民の役目です。間違っていることにはしつこく「NO」を突きつけなければいけません。そうすれば適切な情報が流れ、景気を上向かせることにつながります」
新聞・テレビなど大手メディアの情報が、必ずしも正しいとは限らなのです。正しい政治経済に関する知識を身に着け、間違いを間違いと認識できるようになりたいものです
参考文献:YAHOOニュースで金融アナリスト久保田博幸死の解説、集英社オンラインで金融アナリスト元自民党衆議院議員で安藤裕税理士への望月悠木記者の取材より。