はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第36章 ピンピンコロリ

人はいつか死ぬ。苦しまずに死ねるのか、苦しみながら死ぬのか、誰にも分からないが苦しまずに死にたいと思うだろう。人に死が近づいていることを知る方法が明らかになってきた。事前に死ぬ準備が出来れば、本人も家族も悩まなくても済みそうだ。

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1 平等に訪れる死

 1-1 死を自覚したとき

死をどのよう向かえるのか、本人はもとより家族にとっても大きな問題です。死の瞬間までそれぞれの生活を貫き、病院へ行くのは寝に行くようなものだからと自宅を死に場所と決めていても、最期を迎えるときに急な合併症が起きることもあり得ます。

日本人の死因の第1位は癌、第2位は心疾患(高血圧症を除く)、第3位は老衰。老衰は全死亡の1割でおよそ18万人、85歳以上の死亡総数では第一位となっています。老衰とは、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死をいいます。

80歳を超えた8割を超える方々が、死期が迫ったら延命治療ではなく、穏やかに苦しまないで死んでいきたいと願っています。日本人で100歳以上の人は、1964年当時153人でしたが、2022年には9万人を越えています。

高齢社会がここまで進むと、人々の「人生の最期」への関心は、静かにしかし確実に高まっています。高齢の親と同居する働き盛り世代も多くなり、「臨終」への不安や疑問は当事者のみならず、その家族にとっても深い関心事になっています。

通常、体が衰弱した人には点滴や胃瘻などによって水分や栄養を補給しますが、生命力にあふれた若い人ではありません。高齢者はその人らしく、命の一滴までも使い果たして死に至るという、死への軟着陸が重要になってきます。

本人にとって苦痛を徹底的にのぞくということを考えた場合、生きるために必要な水分や食べることが必要でなくなった場合、点滴や胃瘻などで栄養を補給することではなく、むしろ引き算が必要になります。

近年、死が近い高齢者は食べているにもかかわらずBMI数値が減ってくることが分かってきました。食べないから死に向かっていくというより、体はもはや栄養を利用できなくなっていると言えるのではないでしょうか。

終末期の患者のからだでは、次第に水分や栄養を受け付けなくなり、このような状態になったとき、患者は水分を栄養を取ること自体が苦痛になっていきます。死へ向かう患者の腎臓や心臓などの臓器が機能を低下し、血管外へ水分が漏れ始めます。

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 1-2 臨終が迫ると

人が死を迎える間際の前後には病気の進行などとは別に、理解できないような不可思議な現象「中治り現象」や「お迎え現象」なども起こります。人が死に直面するのは、いつか必ずやってくることなので、予備知識は持っておいた方が良いでしょう。

人の命が、あと7日、いや5日かもしれないという危篤状態に陥ると、見舞いに来た親族や知人も半ば諦め顔になり、ため息をつくことが多くなります。しかし、こうした状況で、家族たちをびっくりさせる現象が起こることがあります。

死を間近にした人の「中治(なかなお)り現象」と呼ばれる不思議な回復です。意識がもうろうとし、口にいっさい食べ物を入れない状態の患者が突然、目をパッチリと開け、「水を飲みたい」「アイスが食べたい」などと訴えることがあります。

その様子に、病棟スタッフは「中治り現象」と気づきます。家族は、急に元気になった患者の様子に驚き、ひょっとしたらこのまま回復して元気に暮らせるのではないか、病気が治って自宅に戻れるのではないか、などと期待する家族も少なくありません。

このように患者の容態が一時的に回復する現象は日本だけのことではなく、欧米ではこれを「 last rally(ラスト ラリー)」と呼んでいます。日本語に訳すと「最後の回復」とでもいえるでしょうか。人間らしい死に方

ろうそくの炎は、ろうが溶けてなくなってくると勢いが失せますが、ほとんど芯だけの状態になり、いよいよ消えるのではと思った瞬間、急に明るい光を放ち、その直後に燃えつきる様子は誰でも目にしたことがあると思います。

「中治り現象」は、ろうそくが燃えつきるときの様子によく似ていると、日本では古くからいわれてきました。中治り現象は、副腎皮質や自律神経などから分泌されるアドレナリンやノルアドレナリンというホルモンがエネルギー源になっているようです。

臨終が近づくと息をするときに、喉の後ろのほうで濁った不快な音がしはじめます。これは、「死前喘鳴(しぜんぜんめい)」と呼ばれるものです。家族には非常に苦しそうに聞こえますが、医師が判断できる範囲では死前喘鳴に痛みは伴わないようです。

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 1-3 穏やかな死へ

死前喘鳴の原因はほとんど機能していない下顎呼吸が原因で、血中の酸素濃度はどんどん落ちて行きます。このころになると、脳内麻薬であるエンドルフィン類が多量に出ているので、穏やかな気持ちでいるのではないかと思われます。

人が死に近づくと、寿命が尽きようとしている細胞を守ろうと、体のあらゆる器官が懸命に努力を始めますが、中でも脳の働きは重要です。「脳内麻薬」と呼ばれる微量物質を分泌し、少しでも命が長らえるよう努力するのです。

脳細胞から分泌される代表的な物質に、ドーパミンやセロトニン、オキシトシン、アドレナリンなどがあります。ドーパミンは、近頃高齢者に増えているパーキンソン病とも深く関係し、このホルモンが減少することで発症するとわかってきました。

ドーパミンは脳の中脳と呼ばれる部分から分泌されます。喜怒哀楽と深い関係があり、意欲を高め、幸福感をもたらす作用があるので「脳内麻薬」とも呼ばれています。このほか、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンも分泌されます。

セロトニンは感情や行動などをコントロールし、精神を安定させる働きがあります。それによってドーパミンと同じく幸福感をもたらすことから、幸せホルモンと呼ばれているものです。

また、脳下垂体から分泌されるオキシトシンも幸福感をもたらしますが、これらの物質にアドレナリンなどの作用が加わり、「中治り現象」を引き起こしているのではないかと考えられています。

人がターミナルステージ(末期)の状態に近づくと、中治り現象のほかにもう1つ不思議なことが起こります。それが「お迎え現象」です。急に患者の口から「娘が来た」「孫を見た」などという言葉が聞かれるようになります。

病棟スタッフは、顔をのぞき込んで「夢でも見てたの?」と声をかけますが、いきなり体を起こし「今、そこの入り口で娘と孫が手を振っていた」などと言いだします。それを見たスタッフは、「そろそろ親族に死期が近づいたことを知らせなければ」と考えます。

 1-4 心的外傷後成長

死に直面した人におこる心の反応も明らかになってきました。東京有明病院の清水研看護学部教授は、死に直面する苦悩は非常に大きなものだが、心の成長という変化がおこるとおっしゃいます。

癌患者に起こった、容態の悪化・死の恐怖・治療の断念・将来の不安にさいなまれた中から、新たな人生観が生まれてきました。これを「心的外傷後成長」と呼びます。実際に癌体験後のあたらしい人生感は5つの変化が見られました。

  心的外傷後成長

人生に対する感謝 一日一日を大切にするようになった。生きていることに感謝する。

新たな視点    生きがいについて考える、人生の優先順が分かる。

他者との関係  周囲に支えられていることに気付く。人のお痛みや苦しみが分かる。

人間としての強さ 一日一日を大切にするようになった。生きていることに感謝する。

他者との関係   周囲に支えられていることに気付く。人の痛みや苦しみが分かる。

精神性的変容   超越的な力を感じる。自然への感性が敏感になる。

なぜ、自分が病気にならなければいけなかったのか、という怒りが出てくるのは当然です。あるいは10年後にこうしたいという夢が、かなわなくなったことは大きな損失になります。でも、これらの感情に蓋をする必要は全然ありません。

その怒りや悲しみがなくなる必要もありません。人生をすべて失ったわけではありません。大切な1日があるぞと気づくのです。そこをどう生きていくのだと気付かせられるのです。乳がんの患者8割に心的外傷後成長に該当する考え方が確認されました。

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2 平等に訪れる死

 2-1 神様の粋な計らい

こうした現象は不思議で非現実な出来事ですが、「娘が見舞いに来た」「孫が手を握ってくれた」などとうれしそうな表情を見ていると、病棟スタッフは天国への旅立ちを控えた患者へ、神様の粋な計らいなのかもしれないと思うそうです。

ベッドで静かな療養生活を送っていた患者が、ある日を境に急に大声を出したり、奇声を発したりするケースもあります。これも「お迎え現象」のひとつと思われます。医師たちは、おそらく「幻覚」や「幻聴」が患者を襲っているのだと想像しています。

体が弱り、多臓器不全の状態になると、脳にも大きなダメージが加わります。脳が正常に働けなくなると、幻覚や幻聴といった症状が現れることがあり、それが患者本人を驚かせ、その驚きが声をあげているに違いないのです。看護婦が見つめた人間が死ぬということ

これらの臨終間際の人によく見られる不思議な現象から、彼らの心身にいったい何が起こっているのかについて医療の見地でお伝えしましたが、「死にゆく人の心に何が起きているのか」を把握していれば、いたわりの気持ちもより一層高まるのではと思います。

東京都健康長寿医療センター研究所の遠藤昌吾研究部長は、ストレスがかかると脳内麻薬のエンドルフィンが分泌され、この物質は苦しさや痛みなどを感じたときにも分泌されます。あらゆるところ働き苦痛を緩和することや多幸感をもたらすとおっしゃいます。

カナダのある研究チームは2016年、87歳のてんかん患者の男性の脳波測定を試みました。ところが測定中、患者が心臓発作に見舞われ死亡されたのです。この時、予期せずに人が死ぬときの脳の状態が記録されました。

その記録は死の前後の30秒間に、男性の脳波に夢を見ている時や、記憶を呼び起こしている時と同じパターンの動きが確認されました。こうした脳の動きが、人が最期の瞬間に「走馬灯」を見ることを示唆していると論文で説明しています。

「人は死ぬとき、実際に人生の走馬灯を見る」ことが確かめられたといえるのです。科学的な「アクシデント」によって得られたデータが、走馬灯を見たであろうことを示していたのです。

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 2-2 その時、人は

ジマル・ゼマール博士はヴァンクーヴァーを拠点にする研究チームが偶然にも世界で初めて、人が死ぬ瞬間の脳の状態を記録したと語りました。私たちは死ぬ間際に愛する人々との幸せな記憶を見られるのだろうかの質問には、それは分からないと答えました。

ルイスヴィル大学の神経外科医を務めるゼマール博士は、この患者の心臓が脳に血液を送らなくなるまでの30秒間、脳波は集中したり、夢を見たり、記憶を呼び起こしたりするといった高度な認識作業を行っている時と同じパターンだったと述べました。

さらにこの脳波は一般的に死亡が確認される心停止から30秒間続いたそうです。「この30秒間で、人生の経験を思い起こしている可能性がある。死ぬ直前の数秒間に脳が再生している」とおっしゃいます。

論文ではまた、命がなくなるのは心臓が止まった時なのか、脳が機能しなくなった時なのかという疑問も投げかけていました。また医療機関で亡くなった方で気になるのは、最期まで点滴を受けて体に水分がたまってむくんでいるご遺体です。

水分が多いと死後変化が起こりやすのです。ご家族がそれを見てショックを受けないように、必要な場合は迷わずエンバーミング(ご遺体を衛生的に保全する感染防御処置のこと)のお話をして、ご家族の安心を優先するために処置を施します。

身体が死にはじめると同時に、脳もあの世に行くための準備をはじめます。最後の瞬間に多くの人は幽体離脱し、穏やかな場所で親戚とランデブーし、トンネルの向こうに明るい光を見るといわれます。でも実際に何が起きているのか誰にもわかりません。

臨終がはじまると脳は過熱状態になります。急に電気が流れ、脳全体のさまざまな部位の活動が活発になります。やがて、通常よりもはるかに強い興奮を引き起こす神経化学物質が放出されはじめます。「明るい白い光」が見えるのはこのときです。

誰しも大切な人を納得のいくかたちで看取り、見送りたいと思うもの。しかし現実は、それが叶わないこともあります。最期の瞬間にそばにいてあげられず、看取りができなかったこと、生前に故人との会話ができなかったことを後悔される方は多いのです。

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 2-3 在宅緩和ケア医師

在宅医療(訪問診療・訪問看護)は、一人で通院が困難な患者等のお宅に医師・看護師が定期的に伺い、計画的に健康管理を行うものです。定期的な訪問に加え緊急時には24時間365日体制で対応し、必要に応じて臨時の往診や入院先の手配なども行います。

医師が定期的に療養場所に訪問して診察を行い、苦痛症状の緩和や療養の相談に応じます。薬は処方箋を受領して、患者の家族が最寄りの薬局で薬を受けとります。訪問薬剤という方法もあるので、入院せずに最後を迎えたい方にはお勧めです。

積極的な治療をやめ、在宅医療で痛みを抑えるため医療用麻薬を使用します。持続性のある痛みにはフエンタニル貼付剤の「デュロテップMT」、突出痛には内服薬「モルヒネ塩酸塩水和物のオプゾ内服液」や座薬「モルヒネ塩酸塩坐剤」等を使用します。

この医療用麻薬の効果をもたらすのが「オピオイド」と呼ばれる物質で、癌などの痛みは脊髄の神経を通して脳に達します。オピオイドは脳の入口で特定の神経回路を活性化することで、分泌されるセロトニンなどの物資が痛み信号を抑制してくれます。

訪問診療・訪問看護を希望する場合は主治医に相談します。また、病院や診療所、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターや病院の医療福祉相談窓口のソーシャルワーカーなどに、訪問診療・訪問看護を行っているか聞いてみるとよいでしょう。

医師や看護師が訪問して行うケアには医療保険が適用されますが、衛生材料費や交通費など保険適用外の費用も必要となることがあります。訪問診療をする病院や診療所に支払う診療料、医学管理料などの医療費の自己負担分は適用されます。

処方箋薬局で支払う薬代(院外処方の場合)。管理療養費、基本療養費に加え、難病等複数回訪問加算、24時間対応体制加算などの状態に応じた加算が医療保険適用として算定されます。

医療費(医療保険適用の費用)は、高額療養費制度の対象となりますので一定額を超えた費用は申請により返金されます。訪問看護も、医療保険での利用であれば高額医療費の合計対象となることがあります。くわしくはソーシャルワーカーなどにご相談ください。

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3 旅立ちのとき

 3-1 まずBMIの変化を知る

日本人はそもそも遺伝的に、必ずしも多くのお酒を飲めない傾向にあります。そのため日本人に起こる脂肪肝の多くは、飲酒ではなく食事によるのです。特に普段から脂質や糖質の大量に含まれた食事を摂取していると、肝臓にどんどん脂肪が蓄積されていきます。

運動習慣を持たないこと、消費エネルギーが不足していることからも、日本人の肝臓には脂肪が蓄積されやすくなっています。加齢や生活習慣の変化によって、消費エネルギーが小さくなっている場合は、肝臓の状態を細かくチェックしましょう。

BMIとは「 Body Mass Index 」の略で体格を示す指数です。肥満度を表す数値として国際的に用いられ、世界共通の指数です。日本でも肥満の診断基準や特定健診・特定保健指導の基準として採用されているので、数値に一喜一憂されている方もいるでしょう。

BMIの計算式は、BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求めます。18.5未満であれば低体重、18.5以上25.0未満は普通体重。25.0以上30.0未満は肥満1度、30.0以上35.0未満は肥満2度となります。

35.0以上から40.0未満は肥満3度、40.0以上は肥満4度になります。普通体重のおよそ中間である「BMI22」となる体重は「標準体重(理想体重)」と呼ばれ、統計上最も死亡率・有病率が低いとされています。

厚生労働省が公表している「食事摂取基準」で、目標とするBMIの値が数値で掲載されています。18歳~49歳まではBMIが18.5~24.9。50歳から64歳間までのBMIは20.0~24.9。65歳以上は21.5~24.9となっています。

いずれの年齢層も上限はBMI25未満ですが、下限は年齢が高くなるほど上がっています。推奨値ではなく、あくまで参考とする数値として掲載されているものですが、健康を維持する上での指標の一つとして利用すると良いでしょう。

BMIが25を超える肥満になると、生活習慣病のリスクが上がるとされています。生活習慣病とは、運動や食事、喫煙、飲酒、ストレスといった普段の生活習慣が、発症や進行に深く関与している病気の総称です。

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 3-2 死期はBMIが教える

人間は成長するのに20数年かかるので、体が死ぬ準備をするのに5~6年かかっても不思議でないでしょう。多くの人は85歳から95歳までの間で生理的な死を迎えています。これが老衰であると東京大学定量生命科学研究所の小林武彦教授はおっしゃいます。

ケアの引き算ができる客観的な事象を発見し、食べているにもかかわらずBMI値が減ってきているということは、食べないから死に至っていくというより、体はもはや栄養を利用できなくなっていると言えるのです。

老化の大きな原因は、幹細胞の新しい細胞を作りだす能力が低下したことです。新しい細胞が生まれないと、細胞の数も減り臓器の活動も低下してきます。幹細胞が分裂して体細胞を生みだしますが、この能力が衰えると新陳代謝が鈍くなります。

細胞は細胞の入れ替わりが遅くなると、細胞のリニューアルが行われなくなります。BMI値が減ってくるのは、体細胞が生み出せなくなり、臓器の細胞も新陳代謝が鈍くなり臓器が軽くなっていくからです。高齢者で死亡した106人の推移

終末期の体は次第に水分や栄養を受け付けなくなっています。BMI値が12を下回ると生命維持が難しくなりますが、この状態になると水分を取ること自体が苦痛となってくるのです。

腎臓や心臓などの臓器の機能が低下し、低栄養によって血管外へ水分が漏れはじめると多くは体内に溜まっていきます。体内に溜まった水は、腹水やむくみの原因になってしまいます。

血管壁からあふれ出たした水は肺の中に移っていきます。それが痰になってゴボゴボという状態になったり、肺水腫という状態になったりして呼吸困難が起きてきます。胃ろうで栄養補給をしても、BMI値は次第に下がっていきます。

もう、栄養を体内で処理できなくなっているのです。なるべき穏やかに、その人らしく最後の命の一滴まで使い果たして死に到達するのが理想です。いわゆ死へのソウトランディング(軟着陸)がこれから益々重要になってきます。

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 3-3 それは5年前から

死の5年ほど前からMBIの数値が落ち始めます。死ぬ準備をはじめた体が5年以内に死期が訪れることを、本人へ知らせているのです。積極的な治療をやめて自宅で過ごすことを決断するか、本人の好きなように生きるというのがもっとも最善の選択でしょう。

家族もBMI値を見てその人の死が近いことを知ると、それが気持ちを整える期間になります。家族がどんなに救おうと思っても徒労に過ぎません。家族は本人の死後どのような希望を持っていたのか、最後にどうすべきかわからないと悩むケースが多いものです。

死に迎う人は、自分が最後をどう迎えたいのか意志の表明をし、苦しくても食べられない分だけ栄養を補うべきか、最後に向けてどのようなことを希望するのか、死後の希望もしっかり文章に書いておくことが大切です。そして、死ぬまで目一杯生きましょう。

病院で家族から引き離された死よりも、昔の人々のように家族の顔を見ながら子どもたちに死にざまを見せることが大事です。死が訪れる瞬間まで、明るく笑顔を絶やさないようにしましょう。法律上の死は2段階に分けられます。

最初にあなたの身体に訪れるのが「臨床死」と呼ばれる状態で、心拍、呼吸、血液が止まります。その後「生物学的死」が訪れるまでの4~6分間、体の細胞は生き続けます。生物学的死を迎えると脳細胞が死にはじめ、蘇生が不可能になります。

臨終が近づくと息をするときに、喉の後ろのほうで濁った不快な音がしはじめます。死前喘鳴(しぜんぜんめい)と呼ばれるもので痛みは伴わないようです。この人は寿命を迎えました。いままでありがとうと全身の細胞たちに別れを伝えているのです。

本人の好きなように、苦しまないようにするのが看護者の最善です。死へソフトランディング(軟着陸)させるためには、食事ができなくなり、水分補給の点滴を本人が嫌がったら外して上げるべきです。そして、もう頑張れというのはやめましょう。

「死」というものは、誰もが決して避けては通れません。でも、恐れを抱くべきものでもありません。あなたはこの世から未知のあの世へ旅に出るのです。自分の家族、ひいては自分自身の「死」に向き合うときの知恵として、参考にしていただければと思います。

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 3-5 千の風になって

米紙によると1977年、映画監督のハワード・ホークスの葬儀で、俳優のジョン・ウエインが「千の風になって」の英語詩を朗読した。1987年マリリン・モンローの25回忌の時、ワシントンで行われた追悼式の席上でも、この英語詩が朗読されたそうです。

   元詩

a thousand winds

Do not stand at my grave and weep;

I am not there,I do not sleep.

I am a thousand winds that blow.

I am the diamond glints on snow.

I am the sunlight on ripened grain.

I am the gentle aurume's rain.

When you awaken in the morning's hush,

I am the swift uplifring rush

Of quiet birds in circled at flight.

I am the soft stars that shine at night.

Do not stand my grave and cry;

I am not there,I did not bie.

   日本語訳詩

私のお墓の前で 泣かないでください

 そこに私はいません 眠ってなんかいません

  千の風に 千の風になって

   あの大きな空を 吹きわたっています

私は光になって 畑にふりそそぐ

 冬はダイヤのように きらめく雪になる

  朝は鳥になって あなたを目覚めさせる

   夜は星になって あなたを見守る

私のお墓の前で 泣かないでください

 そこにわたしはいません 死んでなんかいません

  千の風に 千の風になって

   あの大きな天を 吹きわたっています

千の風に 千の風になって

 あの大きな天を 吹きわたっています

                (原作詞者不詳 作曲 荒井満 日本語詩 荒井満)

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参考資料:人間らしい死に方(シャーウイン・B・スーランド、河出書房新社)、看護婦が見つめた人間が死ぬということ(宮子あずさ、海竜社)、ヒューマニエンス死の迎え方(NHK)、肥満症診察ガイドライン・日本人の食事摂取基準(厚生労働省)、千の風になって(荒井満、講談社)、キリスト教史Ⅰ(半田元夫、)など。

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