1 日本の朝鮮統治は公正
1) 朝鮮人に銃を与えた
歴史観、慰安婦問題、植民地支配と、韓国は「反日」の国際世論作りに躍起である。週刊新潮に、日本の朝鮮統治の評価を見直す研究を続けてきたハワイ大学マノア校名誉教授ジョージ・アキタ名誉教授と、ジャーナリスト櫻井よしこ氏の対談が掲載されていた。
櫻井:11月4日、韓国の朴槿恵大統領は、英国BBC放送のインタビューにこう答えています。「(慰安婦問題に関して、安倍晋三総理は)『過ちはない』として謝罪する考えもなく、苦痛を受けた人を冒涜し続ける状況では(会談しても)得るものはない」「歴史認識について日本の一部指導者が今後もそういう発言を続けるなら、会談しないほうがましだ」と。
アキタ:私もその報道は目にしました。依然として韓国は慰安婦問題や歴史問題に固執し、政治問題化しようとしている。朴大統領は一方的に日本を批判していますが、いい加減にしなさいと言いたい。なぜなら、日本の朝鮮統治ほど「フェア」な植民地運営はなかったのですから。
近代日本政治史研究の権威として知られるアキタ氏は、ハワイ生まれの日系2世。ハワイ大学卒業の櫻井氏の恩師でもある。「国軍の父」と称され、植民地政策の「礎」を築いた元老・山縣有朋の研究を30年以上にわたって続け、朝鮮統治に関する分析も10年超に及ぶ。今年8月末、コースタル・カロライナ大学歴史学部准教授のブランドン・パーマー氏との共著『「日本の朝鮮統治」を検証する 1910─1945』(草思社)を上梓。同書の執筆を通じて浮かび上がってきたのは、35年間に及んだ日本の統治の公正さだった。
アキタ:実は私も、以前は日本の朝鮮統治は「残虐」「冷酷」「非道」なものだと思っていました。なぜならば、それが「通説」だからです。今でも多くの国々の人がそう思っています。今年の1月、『ニューヨーク・タイムズ』が社説で、日本の朝鮮統治は「ブルータル・コロニアル・ルール(残忍な植民地支配)」だったと断じているように。朴大統領も「ブルータル」という言葉を使っています。
櫻井:『ニューヨーク・タイムズ』だけでなく、米国のメディアはおしなべて日本の朝鮮政策は非常に悪いものだったとの固定観念に囚われています。ブルータルでバイオレントだったと。
アキタ:しかし、共著者であるパーマー氏が大学院の博士課程の時に書いた論文を読んで、私は「えっ」と思ったんです。通説と辻褄が合わない。そこには、朝鮮総督府は朝鮮人の志願兵に銃を与えていたと記されていました。日本がブルータルだったら、銃は与えないでしょう。
櫻井:銃を持った朝鮮の人々が、日本人に報復を企てるかもしれない。日本が一方的で苛烈な圧政を敷いていたら、確かに銃は簡単に渡さないはずです。
2) 米国の植民地支配との違い
アキタ:その後、日本の徴兵制度に関する学術記事を読みました。1873年の徴兵令発布に伴い、日本国内では激しい反発が起き、死者が出るほどの暴動に発展した。ところが、日本統治時代に朝鮮で徴兵制度が採られても、それに起因する騒動が起こったとの話はない。どうやら、朝鮮人は受け入れていたようだと。それで、またおかしいと思った。自分が信じ込んでいたブルータルな朝鮮統治という通説と合わない、ちょっとストレンジだと。
櫻井:そして、在米韓国人2世と結婚した、米国人であり白人のヒルディ・カン女史が書いた『黒い傘の下で─日本植民地に生きた韓国人の声』という本に先生は出会われる。彼女は、サンフランシスコ地区に住む51人の朝鮮生まれの高齢者にインタビューをしています。彼らは、カン女史のインタビューに対して……。
アキタ:う、笑いながら答え、楽しそうに話していた。日本の植民地時代の話をしているにも拘らず、笑顔で当時を振り返ったというんです。私は、これは決定的におかしいと感じました。カン女史の本のタイトルは「黒い傘の下で」。彼女は日本の植民地統治を「黒い傘」と捉えていたわけです。しかし、そのような立場の方のインタビューに対して、皆、笑いながらその時代を回顧した。
櫻井:日本統治を批判する人々が書いたものの中にさえ、日本統治下の生活は楽しかったという事実が描かれていたわけです。朝鮮の百貨店、和信の上客の6割から7割が朝鮮人だったことは、彼らが経済的にも潤って楽しんでいたということです。日本の朝鮮統治に最も厳しい目を向けるワシントン大学の童元摸教授ですら、日本統治はある程度、フェアだと認めていると、先生の著作には書かれています。
アキタ:いかに日本の朝鮮統治がフェアだったか。それは、当時、世界で猛威を振るっていた植民地政策の中で位置付けて考えなければなりません。日本が朝鮮を植民地にしたように、列強と言われた国々は、例えば米国はフィリピンを、英国はインドを、フランスはベトナムをといった具合に植民地支配していました。これらの支配と、日本の朝鮮統治を比較して考えなければ、それこそフェアではありません。
櫻井:米国の植民地支配についてお聞かせください。
アキタ:一つ、興味深い話をしましょう。米国がフィリピンを植民地にしていた時代、「最強」と言われた45口径の銃を米国は開発しました。なぜか。フィリピン人の米国支配に対する反発がもの凄くて、通常の38口径の銃では反米運動に対処できなかったからです。それほど、米国のフィリピン支配は反発を受け、酷いものだった。
櫻井:著作には、ダグラス・マッカーサー元帥の父親であるアーサー・マッカーサーにまつわる話も書かれています。彼がフィリピンでの反乱分子を鎮圧するために、〈ゲリラに食料、情報、および隠れ場を提供した町の民間施設の破壊にこれまで以上に専心するよう命令〉したと。
3) 朝鮮人にも参政権を
アキタ一方、日本の朝鮮統治はどうだったか。1941年に朝鮮で公開された親日映画に『志願兵』というものがあります。この映画の中では、朝鮮の人々は伝統的な民族衣装で登場し、朝鮮語を話している。このことからしても、日本の統治が厳しく、強制的なものではなく、ましてや朝鮮の文化を抹殺することによって、朝鮮人を組織的に抑圧しようとなどしていなかった事実が分かるのではないでしょうか。
櫻井:朝鮮統治においても、日本の国柄と、穏やかな国民性が表れていると思います。
アキタ:そう、日本人は穏やかなんです。国歌を聴けば分かりますよ。米国もフランスも、歌詞はそれぞれの「独立戦争」や革命のことを称揚していて、音楽も勇ましい。それに比べて「君が代」のなんと穏やかなことか。五輪で「君が代」が流れると、競技が終わったばかりなのに眠くなってしまうくらい。まぁ、これは冗談ですが、確かに日本人の穏やかな国民性というものが朝鮮統治でも発揮されていました。
櫻井:著作では、土地政策、産業政策、教育政策など、さまざまな面での日本の朝鮮統治の公正さが紹介されていますが、とりわけ参政権に関する話は印象的です。
アキタ:朝鮮人を「下」に見るのではなく、「同僚」だと考えていた。日韓併合翌年の1911年、植民地政策に影響力を持っていた内務大臣の原敬はこう述べています。日本語能力が十分なレベルに達した暁には、朝鮮人は朝鮮における府県の行政に参画させることが望ましく、朝鮮人議員が将来、帝国議会に進出することは何の問題もないと。要は、朝鮮人に参政権を与えなくてはならないというわけです。原の発言は、朝鮮統治が始まってからわずか1年後のものですよ。
櫻井:朝鮮総督(1916~19年)を務めた長谷川好道も、貴族院選挙で朝鮮人に投票権を与えよ、と言っています。先生の著作によれば、〈当時、日本在住の朝鮮人男子は年齢と住居に関する必要条件を満たしてさえいれば、投票権を有し〉、1930年以降は〈朝鮮人の有権者はハングルで投票用紙に記入することが認められ〉、朝鮮の人々が日本の公職に就くことも許されていた。
アキタ:長谷川の後を受けた斎藤実総督(1919~27年)も、ハングルの新聞や雑誌の発行を許可しています。
櫻井:先に触れた童教授は、朝鮮統治下の1936年に行われた世論調査を自らの論文に引用しています。それによると、調査に参加した朝鮮人の8.1%は、朝鮮は独立すべきだとの意見を持っていた。別の世論調査でも、一定数の朝鮮の人々が独立すべきとの意見を表明していました。
4) 日本悪玉論を世界へ
アキタ:この数字は、逆に日本の朝鮮統治が極めて民主的だった証拠と言えるでしょう。朝鮮人が自分たちの気持ちを正直に告白しても、身の危険がなかったことを意味しますからね。他の列強諸国が植民地を「マーケット」あるいは搾取の対象としか見ず、圧政的だったのと比較して、これはアメージングなことです。
櫻井:こうした世論調査を受けて、なお時の日本政府は朝鮮人を弾圧するのではなく、より彼らの心情を反映するような政策を行い、日本の朝鮮統治を支持してもらおう、ともに歩んで行こうとの方針を選んだ。先にも触れましたが、これは日本の国柄、価値観に由来していると思います。例えば、先生は著作で大津事件を取り上げていらっしゃる。
1891年5月11日大津事件でロシア帝国皇太子ニコライを襲撃した津田三蔵巡査に、大陪審は刑法に基づき無期懲役が妥当だとした。これは日本における司法の独立、法至上主義の確立であった。
アキタ:大津事件から約20年後に始まった朝鮮統治にもこうした精神が受け継がれ、公正さや穏健さに基づいた植民地政策が行われました。この点を、「日本問題のスペシャリスト」と言われる著名なオランダ人ジャーナリストのカレル・ヴァン・ウォルフレン氏は見誤っています。彼は、日本の悪しき慣習として官僚の跋扈を批判していますが、そうではない。大津事件では政治家の圧力がありながらも、大審院が理性的な判断で法至上主義を貫いた。これは、朝鮮統治にも通じる日本の公正さの証と見るべきなのです。
櫻井:ウォルフレン氏だけでなく、ジョン・ダワー氏(マサチューセッツ工科大学教授)、ハーバート・ノーマン氏(カナダの元外交官)らが、事実を見ずに「日本悪玉論」を世界に発信し続けてきました。
アキタ:例えばダワー氏には、ベトナム戦争がトラウマになっている面があると思います。ベトナム戦争の失敗を受けて戦争反対、軍事反対と。でも、根本はやはり通説を信じ込んでいる。歴史を調べれば日本がフェアであることが分かります。陶器も仏教も朝鮮半島を通じて日本に伝わってきた。そのため、日本人は朝鮮の文化を尊重してきました。さまざまな文化を受け取った、ありがとう、と。この寛容な精神が日本人の強さだと私は思います。一方で、朝鮮半島の人々は、「文化は私たちが与えたのに、なぜ征服したのか」と怒っているわけですが……。とにかく、日本は文化を継承し、それを改善することにかけては天才的です。
櫻井:それは、日本人が優しいからだと思います。この技術を使う人に喜んでもらいたい、人の役に立ちたいという思いから、最高の気配りで技術を改良する。
アキタ:ウイスキーでもワインでも、最近、日本のものが世界で最高評価を受けています。レクサスも、時計もカメラも、みんなそう。だから、日本人はもっと自信を持つべきです。朝鮮統治も、日本の国柄が凝縮されたフェアなものだったんですから。
5) 併合は防衛のため
櫻井:一方で、先生は日本の朝鮮統治を、手放しで礼讃されているわけではありません。統治の運営がフェアだったとはいえ、植民地支配自体は間違っていたと。ここに、私は先生自身のフェアネスを感じます。私も、いかに優れた統治だとしても、基本的にその国の統治はその国の人が行うべきだと考えます。たとえ、それが失敗に終わっても。
アキタ:その通りです。
櫻井:もちろん、日本には日本の理屈がありました。当時、清やロシアが朝鮮半島を支配したら、即ち我が国の安全保障を危うくする。日本の存立を脅かす事態になるのを防ぐために、日清戦争、日露戦争を経て、朝鮮統治に乗り出した。すべて日本国を守るためです。その中で、先生が著作に書かれているように、日本は最善を尽くしたと思います。他方、統治の基本原理は、自分たちの国の未来は自分たちで決めるということでしょう。それを現在の日本に当てはめれば、日本国憲法は何が何でも改正すべきということです。
アキタ:日本人は改憲運動を始めるべきです。今の日本の憲法は「マッカーサー改革」を基礎にしているからです。どこの国でも、憲法はその国の根幹。人々の文化、歴史、価値観、アイデンティティに基づいたものでなければなりません。それを他の国が与えるものではない。日本の憲法は、日本人が決めるべきものなのです。日本人自らの手で憲法を作り直すのが当然です
アキタ:私は60年前に初めて大学で教鞭をとった時に、「日本人は必ず改憲運動を始めますよ」と予言したんです。本来、歴史家は予言してはいけない。でも、私は確かに予言しました。
櫻井:予言の根拠は。
アキタ:の日本の憲法は、「マッカーサー改革」を基礎にしているからです。どこの国でも、憲法はその国の根幹。人々の文化、歴史、価値観、アイデンティティに基づいたものでなければなりません。それを、他の国が与えるべきではない。日本の憲法は、日本人が決めるべきなんです。私は外国人(米国籍)なので、条文の中身については何も言いません。しかし、日本人自らの手で憲法を作り直すのが当然です。
櫻井:先生が予言された通り、今、日本では改憲が大きな動きになりつつあります。まだ、圧倒的多数を占めるには至っていませんが。
6) 韓国の教科書に変化も
アキタ:私は、若い人たちはそれほど「自虐史観」に縛られていないんじゃないかと感じています。日本が全面的に悪かったとは思っていない人が多いんじゃないですか。驚いたのは、私の著作の書評が『AERA』に掲載されたことです。東大教授の苅部直氏によるものですが、〈着実な歴史認識が広く共有されていくための、重要な一歩となる本である〉と書かれています。東大といえば「進歩的」で、『AERA』は朝日新聞出版が出している雑誌でしょう。そこで、私の本を推奨してくれるとは、やはり時代が変化してきているんでしょうね。苅部氏は1965年生まれ。研究者も、若い世代は変わってきているように感じます。
櫻井:確かに、団塊より下の世代は「日本悪玉論」に与しない。中国や韓国が言うような悪い国ではなかった、日本はもっとまともな国だったのではないかという意識が広まっていると思います。25年ほど前から、ハーバード大学でもジョージタウン大学でも、「日本は沈没していくばかり。だから、日本研究をする学生は減っている。これからは中国だ」と言われ続けてきました。しかし、見てください。自由を阻害し、人権を侵害して、国際法を守らない─21世紀版の中華思想、帝国主義思想を持つ中国に対して、「おかしい」という声が世界中から上がり始めている。他方、日本は中国とは全然違うとの評価が確立されつつある。
アキタ:韓国でも、徐々に変化が起きているようですね。今年になって初めて、日本の朝鮮統治時代を一部評価する高校用の韓国史の教科書が、検定を通過しています。
櫻井:そのような韓国の教科書における、日本にとって前向きの検証は、ソウル大学教授の李栄薫氏が始めたものです。氏は、李氏朝鮮が経済的危機を克服できなかったために日本に植民地として併合された、日本の公正さにも目を向けるべきではないかとの主旨の指摘をし、抗議が殺到して土下座させられるという耐え難い体験を乗りこえて正論を書き続けている学者です。
アキタ:いずれにせよ、朴大統領は「強か」ですよ。5月に訪米した際、通訳を抜いてオバマ大統領と2人だけで庭園を散策していますし、上下院で演説した。そこで、日本の歴史認識を批判。彼女は英語が上手だから、どんどん「反日」思想を国際的に発信している。日本の総理大臣も、もっと英語を話さなければいけません。米国民は、自らの祖先がフィリピンなどで行った行為には関心を示さず、日本の朝鮮統治に関する通説だけを刷り込まれていますからね。
櫻井:歴史認識問題を含めて、米国のオバマ政権が韓国よりも日本に対して厳しいのはなぜなのか。オバマ大統領は極めて左翼リベラル的な価値観の持ち主だと思うんです。弁護士時代、上院議員になる前の彼の人脈には、極左に近い人たちとの繋がりさえ指摘されています。したがって、ステレオタイプの日本非難の視点をもともと身につけており、結果、歴史問題においては日本に厳しい姿勢がにじみ出てしまうのではないでしょうか。尖閣問題でも、日本に「問題を起こすな」という姿勢です。それは、中国にこそ向けるべき視線でしょう。南シナ海問題についても、これまで米国が主導してきた「自由」「人権」「国際法」などの価値観を強調する機会を、オバマ大統領は自ら放棄しました。代わりに、安倍総理がその役を10月、インドネシアで担いました。日本人は、もっと自信を持ってよいのです。私は今こそ日本人は目覚めていくと期待しています。
アキタ:イスラエルの代表的作家で評論家のアモス・オズ氏の言葉を借りて、私は著作をこう締めくくっています。日本の朝鮮統治は、〈「九分どおり公平(almost fair)」だったと判断されてもよいのではないか〉と。来年初めには、英語版が出版される予定です。是非、朴大統領にも贈呈しなければなりませんね。なにしろ、彼女は英語が得意ですから。歴史の事実に目を向けてほしいものです。
2 韓国の歴史的な3つの習性
1) 愚かな李氏朝鮮
ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問である川島博之氏は、2021年1月15日に、「日本叩きをやめない韓国の歴史的な3つの習性 韓国を知りたければ李氏朝鮮を見よ」との論文を発表された。
韓国の裁判所が従軍慰安婦問題に対する賠償を日本政府に命じた。この報道に接した多くの日本人は怒りを通り越して呆れ果てたといった気持ちだろう。マスコミの扱いもそれほど大きくはなかった。もはや何を言っても仕方がないと思っている。
なぜ韓国は従軍慰安婦や徴用工の問題をこれほどまでに蒸し返すのであろうか。その疑問を解くカギは朝鮮王朝(李氏朝鮮)にある。
李氏朝鮮は1392年に建国されて1897年に大韓帝国と名前を変えたが、日本に併合される1910年まで存続した。それは日本の室町時代から明治末期までに相当する。日本人はその間に、応仁の乱、戦国時代、江戸時代、明治維新を経験したが、朝鮮半島に住む人々は李氏朝鮮しか経験していない。そのために李氏朝鮮時代の記憶は今もなお朝鮮半島に住む人の心に強く残っている。
そんな李氏朝鮮の歴史は政争の歴史と言ってよい。李氏朝鮮は南宋の時代に作られた朱子学を国教にした。朱子学の教義は難解だが、大義名分を強調する儒教と理解しておいて大きな間違いにはならないだろう。李氏朝鮮の人々は、そんな朱子学をこねくり回して政敵を攻撃し合っていた。そんなことを500年間も続けていた。
なぜそんな歴史になってしまったのであろうか。それは前半が「明」、後半は「清」の冊封(さくほう)体制(中国王朝と周辺の朝貢国の君臣関係)の下にあったからだ。朝鮮は半島であるために陸続きの大陸(中国王朝)との関係が安定していれば、海から攻め込まれる危険性は少ない。豊臣秀吉に攻められたことはあるが、500年という長い年月を考えれば、それは一瞬の出来事に過ぎない。大陸との関係さえ良好に保つことができれば平和を維持できた。
そんな李氏朝鮮も一度大きな間違いを犯した。それは明が倒れて清が作られた時である。李氏朝鮮は国際情勢を的確に判断できなかった。建国から長い年月を経る中で、明の宮廷や官僚組織は腐敗し機能しなくなっていた。一方、満州族が作った清には勢いがあった。だが、自分たちを“小中華”と自認していた李氏朝鮮はそれでも明に敬意を抱き、その一方で満州族を馬鹿にしていた。
この時の李氏朝鮮の国王は仁祖(インジョ)である。仁祖は清の冊封体制に入ることを拒否した。そして清との外交において満州人を見下すような態度を取り続けた。当然それは清の怒りをかうことになる。清の2代皇帝であるホンタイジンは大軍をもって朝鮮半島に攻め込んだ。仁祖はほとんど戦うことなく降伏している。
2) 傲慢な性癖
仁祖はホンタイジンに対して屈辱的な三跪九叩頭(3回頭をたれる動作を3回繰り返すこと)の礼を強いられた。そして皇太子を人質に差し出すと共に、毎年多額の貢物を納めることを約束させられた。さらにホンタイジンがいかに心優しく偉大であり、仁祖がいかに愚かであったかを記した石碑まで建立させられた。この石碑は恥辱碑と呼ばれている。この事件は朝鮮半島に住む人々の外交姿勢を知る上で象徴的な出来事である。
第1には、国際情勢の的確な判断が苦手なことだ。朱子学の影響で大義名分論を判断の中心に置くために、冷静な分析ができない。国内で政争を繰り返している間はそれでよかったのかも知れないが、国際関係を大義名分論で解釈すると大変な間違いを犯すことになる。
第2には中華民族を敬うが、それ以外を野蛮人と見下すこと。
第3には相手が本気で攻めて来ると、全く戦う気がないことだ。
馬鹿にしたような態度をとり続ければ、相手が怒って攻めてくることは容易に想像がつく。もし戦うつもりがないのであれば、相手を馬鹿にしない方がよい。しかし李氏朝鮮の人々は戦うつもりがないのに、相手を見下すような行動を取り続けた。
このような歴史を知れば、なぜ韓国人が従軍慰安婦や徴用工の問題を蒸し返すのか、その心中を理解できよう。
第1には、韓国はこの問題を冷静な国際情勢判断に基づいて蒸し返しているわけではない。心のおもむくままに日本を攻撃しているだけだ。本来は民衆をなだめて冷静な外交を行うべき政治家や外務官僚も、民衆と一緒になって日本を攻撃している。これでは韓国政府と話し合っても無駄である。
韓国の民衆が従軍慰安婦や徴用工の問題で盛り上がるのは、心に大きな不満を抱えているからに他ならない。新自由主義路線によって経済は成長したものの、国内に極端な格差が生まれてしまった。それは、左派の文在寅政権が誕生した程度では是正できない。もはや革命でも起きない限り、是正は不可能であろう。それが多くの人をいらいらした気分にさせている。
3) 民族の伝統なのか
第2に日本人を満州人と同様に野蛮人と思っていることだ。そのため日本の統治時代を思い出すと屈辱感に苛まれる。
第3に日本に対して強く出ても、日本は反撃してこないと思っていることだ。相手が反撃しないと高を括って、遠慮なく相手を罵ることは李氏朝鮮以来の伝統である。
もし日本がかなりの経済的ダメージを被ることを覚悟して、投資、貿易、人的交流を完全に停止すると言い出したら、韓国は恐怖にかられてすぐに「反日」を止めるだろう。韓国の経済規模は日本の3分の1程度であり、相互の経済交流がなくなれば、韓国の方がより大きなダメージを受けることは確実である。それによって漁夫の利を得るのが中国だから、この劇薬を勧めはしないが、劇薬であるだけに効き目はある。
朝鮮半島に住む人々は、個々の人間としては普通に付き合うことができる。そして新自由主義を受け入れて急速に成長したように、経済の面でもごく普通に振る舞うことができる。しかし、その政治は、李氏朝鮮時代に培われた因習から抜け出ることができない。前任の大統領を逮捕したり自殺に追い込んでしまったりすることも、李氏朝鮮の伝統から説明することができる。
従軍慰安婦問題と徴用工の問題では、日本は最小限の反論を行う他は無視を決め込むほうがよい。聞き流すことが最善である。韓国も内心ではこの問題によって経済関係が傷つくことを恐れている。
日本が嫌がることをしながら、日本を本当に怒らせるのは怖いと思っている。そうした周辺国との接し方は愚かとしか言いようがないのだが、それが民族の伝統と言うのであれば、それを認めて割り切って付き合って行くしか方法がないであろう。
参考資料:文庫 「日本の朝鮮統治」を検証する1910-1945 (草思社文庫)、櫻井よしこ氏のオアフイシアル、コラム「韓国人が目を背けるフェアだった日本の朝鮮統治」。日本ビジネスグループ、オリジナル海外コラム「日本叩きをやめない韓国の歴史的な3つの習性 韓国を知りたければ李氏朝鮮を見よ」Martial Research & Management 主席経済顧問川島 博之氏のコラム。