1 人民の目をそらすために
1) 中国の見解
新華社通信は、24日に中国外交部の報道官談話を発表しました。「日本政府は24日、国際社会の強い疑問と反対を無視し、福島原発事故で生じた汚染水の海洋放出を一方的かつ強引に開始した。中国はこれに断固とした反対と強い非難を表明し、日本側に厳正な申し入れを行い、この間違った行為をやめるよう要求した。
福島放射能汚染水の処理は重大な原子力安全問題で、国境をまたいだ影響があり、決して日本だけの問題ではない。人類による原子力の平和利用が始まって以来、原発事故で生じた汚染水を人為的に海に放出した前例はなく、広く認められた処理の基準もない。
12年前に起きた福島原発事故では、大量の放射性物質が海に流出するという深刻な災害が引き起こされた。日本は、私益のために地元住民や世界の人々に二次的な被害を与えてはならない。
日本政府は海洋放出決定の正当性・合法性、放射能汚染水浄化装置の長期的信頼性、汚染水データの真実性・正確性、海洋環境や人体への安全性・無害性、モニタリングプログラムの完全性・有効性を証明しておらず、利害関係者との十分な協議も行っていない。
日本は放射能汚染水を放出したことで、自らを国際的な被告席に置き、長期にわたり国際社会の非難を受けることになるだろう」。報道官のお話は納得できるように思えますが真実でしょうか。中国ば我田引水と人民を監視して体制維持に躍起となっている国です。
中国は科学的根拠を示さないまま、24日に海産物の輸入停止措置を決めました。日本政府は同日、駐日中国大使に電話で抗議し即時撤廃を要求しました。外務省幹部は「中国は、振り上げた拳の下ろし方が分からなくなっているのだろう」と話しています。
ALPS処理水の海洋放出の安全性については、日本政府として説明会の開催のほか、国際会議の場や二国間会談の機会に日本の取組を丁寧に説明し、政府のホームページやSNSを活用して全世界に積極的に説明し発信を行っていました。
中国が放映した映像は、ペルーの漁師やザンビアの漁師の懸念の声でした。7月31日のNPT再検討会議準備委員会で、日本の処理水海洋投棄に意見を述べたのは10数か国でしたが、批判をしたのは中国だけで、表立って日本を批判する国はなかったそうです。
2) 中国に隷属しない諸国
NPT再検討会議準備委員会の参加国は、EU、アルジェリア、アルゼンチン、ウクライナ、ウルグアイ、エクアドル、オランダ、ガーナ、カナダ、韓国、クロアチア、コスタリカ、コンゴ、シンガポール。
スウェーデン、スリランカ、セルビア、タイ、中国、チリ、デンマーク、ドイツ、トンガ、ニカラグア、ノルウェー、フィンランド、ブルネイ、米国、ベルギー、香港、マラウイ、マレーシアなどでした。
中国は反対の同調者がいないことに焦りを感じました。日本の丁寧な説明活動に関してはIAEAからも肯定的な評価が示されています。今後も高い透明性をもって、科学的根拠に基づく丁寧な情報提供を続けてほしいものです。
しかし、NHKはことあるごとに中国の主張や韓国の民衆の主張を報道し、いにかにも日本が国際的に孤立しているかを印象付けています。そして、ニュースでも「国民に丁寧に説明してほしいものです」と強調しています。
NHKは政府がどのような情報を公表しているかを報道しません。「説明してほしい」と言いながら「公表している情報」には言及しません。まるで「政府は情報を隠している」と思い込ませる行為で、政府ではなくNHKがみんなに目隠しをしているのです。
環境省の発表によれば「東京電力福島第一原子力発電所で発生する汚染水には、トリチウムの他、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素などの放射性物質が含まれます。これらの放射性物質は、通常の原子力発電所では燃料棒の中にとどまっており、その排水からはほとんど検出されません。
ALPS(多核種除去設備(Advanced Liquid Processing System))等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を確実に下回るまで浄化して希釈され、トリチウムを含む全ての放射性物質について安全に関する規制基準値を大幅に下回るレベルにした上で海洋放出されています。
なお、ALPS等による浄化処理後の「ALPS処理水」では、希釈前の段階で、トリチウム以外の核種の多くは、検出限界値未満となります。たとえ放射線が検出される可能性はあっても規制基準値未満です。
3) 汚染水と処理水は別物
中国外交部の報道官は「原発事故で生じた汚染水を人為的に海に放出した前例はなく」た主張していますが、汚染水は、燃料を冷やした水や原発内を通過した地下水や雨水で、何の処理もされていない水のことです。
NHKは福島の漁業関係者の談話を報道しました。「全国的に議論も全く行われておらず、処理水の安全性も全く理解されていない中で海への放出に納得できるわけがない」というものです。素人が全国的に議論するより、科学者の検証結果に耳を傾けるべきです。
多核種除去設備「ALPS(アルプス)」が稼動した2013年以降は、高濃度汚染水からさまざまな放射性物質を取り除くことができるようになりました。この、ALPSを使って浄化処理をおこなった水は、「ALPS処理水」と呼ばれます。
ALPS処理水は、ALPSでも取り除くことのできない「トリチウム」を含んではいるものの、62種類のほとんどの放射性物質の濃度を国の基準値未満に下げたものが「処理水」です。
国際原子力機関IAEAからALPS処理水の海洋放出について、国際安全基準に合致していること等を結論付ける「包括報告書」が公表されました。
IAEAは原子力分野について専門的な知識を持った権威ある国連の関連機関(安全基準を策定・適用する権限を保有)であり、専門的な立場から第三者としてレビュー(検証)を実施しています。
レビュー(検証)結果として、ALPS処理水の海洋放出は「国際安全基準に合致」し、「人及び環境に対する放射線影響は無視できるほどである」といった結論が盛り込まれた包括報告書が2023年7月4日に公表されました。
IAEAは、放出前のレビューだけではなく、放出中・放出後についても長年にわたってALPS処理水の海洋放出の安全性確保にコミットし、グロッシーIAEA事務局長は「この包括報告書は、国際社会に対し処理水放出についての科学的知識を明確にした」「処理水の最後の1滴が安全に放出し終わるまでIAEAは福島にとどまる」とコメントしました。