はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第12章 第六惑星土星

惑星の世界は驚きに満ちています。だが、土星ほど印象的な表情を持つ星は他にはないでしょう。荘厳な光景は見る人の言葉を失わせます。力学と言う名の秩序が支配する壮大なリング。そしてリングと共に静かに土星をまわる衛星たち。

トップへ戻る

1 魅惑の土星

 1) 土星の概要

土星は太陽の周りを一周するのに約29.46年かかります。直径は120.536kmで地球の約9倍ほど、自転周期は10.62時間と高速回転する惑星です。風速は木星を上回る1800km/hに達するので、吹き飛ばされるというレベルではありません。

宇宙から見える土星の姿は雲の姿です。可視光で見た土星の表面は木星と比べて変化に乏しいのですが、赤外線で眺めると雲は東西方向へ伸びる縞模様を描き、その所々に小さな渦が見えます。

土星の内部には鉄やニッケルおよびシリコンと酸素の化合物である岩石から成る中心核があり、そのまわりを金属水素が厚く覆っていると考えられ、中間層には液体の水素とヘリウムがその外側はガスが取り巻いています。

土星は、中心にこそ固体成分を占める核がありますが、主要成分がガスであり外縁の境界が不明瞭なため巨大ガス惑星に分類されます。自転によって惑星は扁球形状を持ち、極よりも赤道部分が膨らんだ扁平状にな土星っています。

土星は恒常的な環を持ち、9つが主要なリング状、3つが不定的な円弧です。知られている限り83個の衛星を持ち、うち63個には固有名詞がついています。衛星にはリング中に存在する何百という小衛星(ムーンレット)は含まれません。

赤道付近では常に風速500メートルの西風が吹き、穏やかな見た目とは裏腹に大気は活発に運動しています。赤道の上空に広がるリングに目を向けると、数センチから数メートルの氷の絡まりであることが分っています。

無数の氷が千本以上のリングを構成し、土星の周りを回転しているのです。土星の半径の5倍の広がりを持つ壮大なリング、その半径は地球から月への距離を超えます。ところがその厚さは驚くほどに薄くわずか数十メートルと考えられています。

自然法則が生み出した驚嘆すべき造形美、土星のリングはどのようにしてできたのかまだよくわかっていません。土星には数多くの衛星が発見されていますが、その中にとびぬけて大きな衛星がひとつ存在しています。

トップへ戻る

 2) 南極に台風の目

土星の直径は約116,464kmで、太陽系惑星では木星についで2番目の大きさです。土星は太陽系で唯一水よりも30%ほど軽く、体積は地球の764倍にもなりますが質量は95倍にすぎません。

土星の大気は外層の96.3%が水素、3.25%がヘリウムで構成され、アンミニア、アセチレン、エタン、プロパン、リン化水素、メタンなどが存在することが分っています。上空に見られる雲はアンモシアの結晶で、下に行くにつれて硫化水素アンモニウムや水に変わります。

太陽からの紫外線が上層大気層で化学反応を起こし、各種の炭化水素が渦を巻きながら拡散して、大気層で地球の雷の1000倍ものエネルギーに匹敵する非常に強烈な稲妻を発生させています。

土星の温度は、大気表面から名部へ進むほど徐々に高くなっています。大気上層の表面はアンモニアの氷で構成され温度はー180℃~110℃です。次の層は水の氷が雲を作るようになりー90℃~ー20℃です。

更に下層では硫化アンモニウムの氷が混合するようになりー40度~20℃。そして最下層では液化したアンモニウムの水滴が含まれるようになり、温度は0℃~60℃になります。土星の中心核は約11,000℃にもなります。

土星の北極は六角形の雲に覆われていることが、ボイジャー1号によって観測されました。北極の六角構造は、直線部の一辺が約13,800kmもあり、土星の自転と同じ速度で回転しています。六角形の雲のある大気層で、極周囲に吹くジェット気流がその下に流れる風に押されて六角形を形成しているそうです。

土星の南極を観測したカッシーニの撮影データから、土星の南極には明らかな台風の目を持つハリケーンのような嵐が固着していることが発見されました。台風の目は木星の大赤斑にも存在せず、地球以外の太陽系天体で雲がつくる台風の目が発見されたのは初めてです。

土星の外周上の自転速度は、木星と同じく緯度によって異なった回転速度を持っています。そのため、土星の一日は緯度によって10時間14分から10時間45分ほどになります。

トップへ戻る

 3) 土星の環

一般的に「土星の輪」呼ばれていますが、正確には「土星の環」と言います。土星の環は、土星の赤道から7000kmから12万kmの距離に広がっていて、その環の厚さは最も厚いところで約1km、最も薄いところで約10mしかありません。

それが何十億個も集まって土星の環を構成しています。土星の環はA~Fまでの環に分かれて、その幅は27500kmもあります。これらの環は細かく数えると全部で6000本以上に分かれています。

土星の環は内側から順にD環、C環、B環、A環、F環、E環の主に9つ環で構成されています。それらを構成しているのは99.9%が純粋な水の氷です。不純物としてソリンやケイ素を含んでいるのもあり、その大きさは直径1cmから10cm程度です。

土星の環は、レコードのみぞのような筋(すじ)がたくさんあり、その環は土星がすけて見えるくらい薄いものでした。環は土星と同じ方向に回転し、その近くに小さな月のような星がいくつも(今見つかっているのは17個)発見されています。そのほとんどは表面が氷でできています。

つまり土星の環は氷の星がぶつかり合ってできた氷や岩のかけらなのです。衝突で星がこなごなになり、細かくなったものが一定の方向にまわることによって美しい環ができているのです。

土星の環の起源には主に3つの説があります。土星の環は、かってはヴェリタスと名付けられた衛星であり、その軌道が限界よりも近くなり、潮汐力によって粉々に砕けて環を形成したとする説があります。

土星の環は土星を形成した物質の残りからされたとする説と、約40億年前の後期重爆撃期にミマスよりも大きい直径400kmから600kmの衛星に大規模な衝突が起こり破壊された塵から形成されたという説もあります。

土星を訪れた探査機は4機です。いずれもNASAが打上げたもので、パイオニア、ボイジャー1号と2号が土星の近くを通り過ぎながら様々な観測を行いました。ただ、観測時間が短く多くの謎が残されていました。

2004年にはカッシーニ探査機が初めて土星の軌道に乗り、よりくわしい観測が行われました。またカッシーニは、搭載していたホイヘンスを土星の衛星タイタンに投下し、月以外の衛星に始めて降り立った探査機となりました。

トップへ戻る

2 土星の衛星タイタン

 1) タイタンの誕生

タイタンは唯一濃い大気を持つことが知られている衛星で、太陽系内では地球とタイタンだけが唯一窒素に富んだ大気を持っています(ガス惑星や太陽の表層のガスを大気に含めない場合)。ボイジャーによる観測では、タイタンの大気は地球のものよりも高密度であることが示されました。

カッシーニよって長さ150km、幅30km、高さ1.5kmの山脈が発見されました。この山脈は南半球に位置しており、氷から構成されメタンの雪で覆われていまする。この山脈はおそらく近くの衝突盆地の影響を受けた地形プレートの動きによって形成された、割れ目の下から持ち上げられた物質によって形成されたとされています。

タイタンの赤道域にはやはり凍った水や有機物の氷でできた砂粒が風で運ばれて作られた砂丘があり、上空から見ると縞模様になって見えます。この砂丘の尾根は大きいものでは100km以上の長さを持ち、高低差は100~150に達します。

探査でタイタンの表面は比較的滑らかであることが示されており、おそらく炭化水素の雨や火山活動によって埋められたクレーターと思われる地形が見えます。レーダー高度計の観測によると、標高差は低く一般的には150m以下であるとされています

タイタンの表面は明確に、明るい地形と暗い地形の2つの領域に大きく区分されます。明るい地形には、赤道付近のザナドゥと呼ばれる広大な反射能の高い地形が含まれ、その大きさはオーストラリア大陸ほどもあります。

タイタンには北半球を中心に大小様々な湖(海)がありました。タイタンで最も大きい湖は北半球にある直径1170km面積は40万平方kmものクラーケン海があり、これは日本列島の総面積よりも大きいのです。

これに次いでタイタンで2番目に大きな湖であるリゲイア海は、ほぼ純粋なメタンで満たされた海(湖)であるとされます。他に代表的な湖としてプンガ海などがあります。これらの湖は現在では直接その存在が確認されています。

タイタンの表面にクレーターがほとんど存在していないことが分かっている。タイタンのクレーターやその可能性のある地形の多くは激しい浸食の痕跡があり、これは地形が全て何らかの原因で変化していることを示している。

トップへ戻る

 2) ホイヘンスの探査

2005年1月半ば、小型探査機ホイヘンスはパラシュートを開いて分厚い大気の中をゆっくりと降下しました。ホイヘンスはやがて凍った地面に到達し、地表に小さな穴をあけて跳ね返り、横に滑りぶるぶるとぐらつきました。

ホイヘンスが静止した場所は、タイタンの「湿った」氾濫原でした。欧州宇宙機関(ESA)の小型探査機ホイヘンスは、もやに包まれたオレンジ色の衛星に着陸して詳細な画像を撮影した最初の無人探査機となりました。

このホイヘンスは、電池が切れて母船であるNASAの土星探査機カッシーニとの通信が途絶えるまでのわずか1時間ほどの間に、猛烈な勢いでデータを収集して送信してきました。タイタン地面

太陽から14億km以上離れているタイタンの気温は非常に低いのです。氷は石のように硬く、エタンやメタンのような炭化水素は、ここでは液体になって巨大な湖や海を形成しています。

直径が5150kmもあり、山があり、雨が降り、風が吹き、海には波も立っているタイタンは、静寂に包まれたクレーターだらけの衛星よりは惑星に似ています。地表に炭化水素の海があるだけでなく、地下にも液体の水の海があり、地球外生命を探すのに最適な場所の1つになっていると考えられます。

米ジョンズ・ホプキンス大学の惑星科学者サラ・ホルスト氏は、「タイタンは二重の海がある世界のようなものなので、私たちがよく知るタイプの生命と、未知のタイプの生命が存在している可能性があります」とおっしゃいます。

ホイヘンスは私たちに、タイタンに山々や急流の浸食によってできた峡谷、河床、窒素を主成分とする大気に風があることを教えてくれました。地表での測定の結果、ホイヘンスが着陸した砂地が乾燥した砂漠ではなく、なんらかの液体によって湿っていることを示していました。

ホイヘンスは大気の測定も行い、科学者たちは、タイタンの昔の大気の組成を再現し、生命が進化して酸素が豊富になる前の地球と同じ、窒素を主成分とする大気の中で有機分子がどのように振る舞うかを調べられるようになりました。

トップへ戻る

 3) 生命生息の可能性

窒素を主成分とする大気を持つことが分かっている天体は、地球のほかにはタイタンだけです。タイタンの大気中では、酸素が大気できる前の初期の地球で見られた化学反応の多くが起こっていると考えられます。

NASAは以前、タイタン表層海探査を挙げていました。このミッションは、タイタンの北部にある多くの海の1つであるリゲイア海に浮かぶ探査機を送り込むというものです。液体の炭化水素からなるタイタンの表層海には、地球の生命とはまったく異なる化学物質からなる生命が生息している可能性があるからです。

科学者は、リゲイア海がほぼ液体エタンと液体メタンでできていることを「99%以上」確信しているといいます。リゲイア海は直径数百キロあり、深さは10m以上になるそうです。リゲイア海

タイタンは、地球とはまったく異質であると同時に、どこか親しみも感じられる天体でした。季節ごとに降る雨は平野を黒く染め、有機分子が豊富で冬には極地の周囲をまわる「極渦」のような風が吹いていましたそして、仕上げはシアン化水素の雲がありました。

超低温の氷や有機物や液体メタンが、地球でも見られるような雨や川や砂丘や海を作っているのです。タイタンは地球以外の土地を探検するという興奮を与えてくれるだけでなく、私たちの故郷である地球についても知識を与えてくれる点で、科学者にとって非常に魅力的な天体なのです。

タイタンは活動的な天体で、地球上で見られる過程によく似たものが多く見られるので、惑星の成り立ちに関する基本的な理解を検証するのにうってつけな研究対象なのです。

土星探査機「カッシーニ」は、赤外線装置を使って土星衛星タイタンの厚い大気を透視し、タイタンの表面を覗き見ました。暗い色の領域は、地球や火星にあるのと同じような砂丘で、明るい色の領域、岩石物質に囲まれた液体の湖でした。

NASAは24年に「ドラゴンフライ」と呼ばれるミッションで、探査機をタイタンに送り込む計画を持っています。両側にそれぞれ44枚の回転翼を備えた着陸機がタイタンの表面に下降し、居住可能性の証拠を探して飛び回ることになっているのです。

トップへ戻る

3 土星の衛星エンケラドゥス

 1) 最も白い星

土星の第2衛星。直径498kmで熱源を持ち、土星の衛星としては6番目に大きい。土星からの距離は約24万km、土星の周りを33時間ほどで公転しています。太陽系の中で最も白い星とされ、表面は比較的新しい氷で覆われています。

無人土星探査機カッシーニが、生命の可能性を持つ衛星として知られるエンケラドゥスに極めて微量の大気を発見しました。大気の成分は水蒸気と見られています。火山か間欠泉などの大気の安定した供給源があるものとされます。

エンケラドゥスは、ディオネ、テティス、ミマスと並ぶ、土星の主要な衛星で、ミマスとテティスの間を公転しています。エンケラドゥスは重力が小さく、大気はすぐに宇宙に逃げてしまいます。エンケラドゥス

エンケラドゥスは公転に伴って潮汐力による変形を起こします。変形によって天体内部でのエネルギー散逸が発生し、これが現在のエンケラドゥスの地質学的活動を引き起こす熱源になっています。エンケラドゥスはE環の最も濃い部分を公転し、この環の物質の主要な供給源になっています。

土星の他の大きな衛星と同様に、エンケラドゥスは公転周期と自転周期が同期しているため、常に同じ面を土星に向けながら公転しています。地球の月とは異なり、エンケラドゥスは自転軸に関して1.5度よりも大きな秤動は起こしません。

エンケラドゥスの形状の解析から、過去には1:4の強制された二次の自転と公転の秤動を起こしていたことが示唆されています。この秤動によってエンケラドゥスにさらなる熱源が発生した可能性があります。

エンケラドゥス表面の初めての詳細な観測で少なくとも5種類の地形が存在することが明らかになりました。ある領域はクレーターが多く別の領域は滑らかで若い表面を持ち、また滑らかな領域に沿って存在する隆起した地形も発見されました。

直線状のひび割れや断層状の構造も見つかっています。滑らかな地形では比較的クレーターが少ないことから、この領域の表面は数億年以内に形成されたと考えられます。そのため、エンケラドゥスは氷火山やその他の表面を更新する活発なプロセスによって比較的最近に更新されたはずです。

トップへ戻る

 2) 生命発生の可能性

エンケラドゥスの表面には新鮮な氷が供給されているため、太陽系内の天体の中で最も反射率の高い表面を持ちます。太陽光を非常によく反射するため、エンケラドゥスにおける正午の平均温度はー198℃までしか上昇せず、他の土星の衛星と比べてもいくらか低温です。

エンケラドゥスの南極付近の表面で活発な地質活動をしている証拠と思われるひび割れが見つかりました。表面は、このひび割れから噴出する新しい氷によって絶えず塗り替えられていくと思われます。

さらにひび割れから噴出しているものが氷の粒子や水蒸気であり、地下に存在する液体の水が貯水池のような役割を果たしている可能性があることを、NASAの研究者が発表しました。この地質活動を起こす熱源は不明ですが、内部の放射性物質の崩壊や潮汐力によるエネルギーなどが考えられています。

エンケラドゥスには、生命に必要とされる有機物と熱源、そして液体の水の3つの要素が全て揃っていることから、地球外生命の有力な候補地として考えられています。

土星探査機カッシーニによる南極域のホットスポットの観測では、その温度が摂氏マイナス93度であることと有機物が存在することが確認されました。次いで、エンケラドゥスの水蒸気から塩化ナトリウムや炭酸塩を検出していることもわかりました。

その後も観測は続けられ、エンケラドゥスの液体の水の大規模な地下海の証拠が発見されたことも報告されました。地下の海の証拠はエンケラドゥスが「太陽系で微生物が生息する可能性の最も高い場所」の一つであることを示唆しています。

東京大学や海洋研究開発機構などの国際研究チームは、カッシーニ探査機が検出した微粒子の中に岩石と熱水が反応してできる鉱物の微粒子、「ナノシリカ」が含まれていることが確認されたと発表しました。

模擬実験を行ったところ、ナノシリカができるためには摂氏90度以上の熱水環境が必要と判明し、現在も活動が続いている可能性が高いことが分かりました。地球の深海底の熱水活動は生命誕生の場の1つと言われ、研究チームは「地球外生命の発見に向けた前進」と捉えています。

トップへ戻る

4 他の衛星

 1) 衛星ディオネ

ディオネの表面には、クレーターが非常に多く存在する領域と、クレーターがやや多い平原、少しのクレーターが見られる平原、地質学的な破砕が見られる領域が存在する。クレーターが非常に多く存在する領域では、直径が100kmよりも大きなクレーターが多数存在します。

平原領域に見られるクレーターは直径が30km以下という傾向がある。クレーターが非常に多い地形の大部分は後行半球側に見られ、クレーターが少ない平原は先行半球に見られます。これは科学者が予想した状態とは反対の傾向です。

ディオネは後期重爆撃期の最中は現在と逆向きに土星に潮汐固定されていたことが示唆されます。ディオネは比較的小さい衛星のため、35km以上のクレーターを形成するような天体衝突が発生した場合、衛星が回転させられます。

このサイズのクレーターは多数見られるため、形成直後の後期重爆撃期には何度も衝突によって回転させられていた可能性があります。現在クレーター形成のパターンと、先行半球側が明るい表面を持つという特徴から、ディオネが現在の向きで潮汐固定されてから数十億年は経過していると考えられます。ディオネ

土星の第4衛星ディオネは、1684年に天文学者カッシーニが発見した直径100-kmほどの氷の衛星だ。発見者の名を冠した探査機「カッシーニ」は2004年から土星とその衛星を探査しており、ディオネへのフライバイ(接近通過)は今回で5回目となります。

今回のフライバイでカッシーニはディオネの上空474kmを通過した。重力や磁気圏、プラズマのデータから、ディオネの内部構造や内部構造が表面に及ぼす影響を知る手がかりが得られると期待されています。

ディオネの北半球に800kmにわたって伸びる隆起地形があります。その氷殻が大きく褶曲していることがわかり、過去にもっと高温であったことが示唆されています。土星の潮汐力による伸縮で発生した熱は、衛星の核と外殻が離れている場合に大きく増幅されます。

エンケラドスのほか、同じく土星の衛星タイタンや木星のエウロパなどは地下に海が存在すると考えられているので、ディオネのような一見変化のない氷の衛星にも地下の海は当たり前に存在しているのかもしれません。

トップへ戻る

 2) 衛星テティス

土星の第3衛星である。土星の衛星の中では5番目に大きい。テティスの密度は太陽系内の主要な衛星の中では最も低い部類であり、ディオネやレアと同じように、珪石等の岩石を含む氷が主成分であると考えられます。

最近の研究で、テティスが異常に白く光の反射率が高いのは、同じ土星の衛星エンケラドゥスから吹き上げられた氷がその表面に降着したせいではないかとする説が提案されています。テティス

進行方向側の半球の赤道部分には、両極より温度が低い地域があります。この領域はテティスの公転に伴って高エネルギーの電子が衝突し続けるため、地表の氷が硬い氷に変化して熱が逃げやすくなっていると考えられています。

テティスの表面には多くのクレーターが見られ、直径が40kmを超えるものが多く存在しています。先行半球の一部の領域は滑らかな表面になっています。またカズマ地形と呼ばれる溝状の地形やトラフも多数発見されています。

先行半球の西側には、直径が450kmと衛星直径の40%に及ぶ大きさを持つオデュッセウスという巨大なクレーターが存在します。現在のオデュッセウスは非常に平坦であり、より正確に表現するとこのクレーターの底部はテティスの球状の輪郭に沿った形状をしています。

これはテティスの氷地殻の長時間に渡る粘性緩和が働いた結果だと考えられています。ただし、平坦と言ってもクレーターの縁の頂上は衛星の平均半径から測っておよそ5kmの高さがあります。

オデュッセウスの中心部には2~4kmの深さの穴が存在し、それはクレーター底部から6~9km高い領域に囲まれています。この高い領域自身は、テティスの平均半径よりも3kmほど低い位置にあります。

その他の特徴的な地形としては、イタカ谷と呼ばれる巨大な峡谷が挙げられます。この峡谷は幅100km、深さ3kmであり、長さは2000km以上とテティスの円周の75%およぶものです。

トップへ戻る

 3) 衛星ミマス

ミマスは土星から18万6000キロの距離にあり、公転周期はわずか22時間あまり。表面はクレーターに覆われているが、そのうち最大のものは直径130キロに上り、これがデス・スターに似た特徴的な外見を与えている。

ミマスはほぼ全体が氷でできていることから、研究者は長年この星に魅了されてきた。至るところに散らばるクレーターは、ミマスの表面が長いあいだ凍っていたことを示しています。カッシーニはミッション終了前に、ミマスの自転にみられる振動を検出しました。

これは地下に海がある可能性を示唆していた。地球では表面に液体の水がある一方、星内部に海が広がる世界はそれよりはるかに遠い星で見られる。こうした海では生命を維持できる可能性もあります。ミマス

ミマスは土星の周回軌道上で潮汐(ちょうせき)ロックの状態にあり、月と地球の場合と同様、常に同じ面を土星に向けている。研究チームは、潮汐加熱と呼ばれる現象から、ミマスの地下で海が存在することが可能になっていると見ています。

潮汐加熱では惑星の重力との関係により、衛星内部の温度が上昇する。ミマス内部で起きている潮汐加熱は22.5~32キロの厚さの氷の下に海を維持するのに十分であることが示されました。

右側に大きく口を開けているのは、ハーシェル・クレーター。ミマスにあるクレーターの中で最も大きいハーシェルは直径約1130kmもあり、周壁の高さは約5km、底面の深さは約10km、クレーター中央の丘の高さは約6kmとのこと。

トップへ戻る

参考文献:国立天文台、NASA(アメリカ航空宇宙局)。