1 魅惑の土星
1) 土星の概要
土星は太陽の周りを一周するのに約29.46年かかります。直径は120.536kmで地球の約9倍ほど、自転周期は10.62時間と高速回転する惑星です。風速は木星を上回る1800km/hに達するので、吹き飛ばされるというレベルではありません。
宇宙から見える土星の姿は雲の姿です。可視光で見た土星の表面は木星と比べて変化に乏しいのですが、赤外線で眺めると雲は東西方向へ伸びる縞模様を描き、その所々に小さな渦が見えます。
土星の内部には鉄やニッケルおよびシリコンと酸素の化合物である岩石から成る中心核があり、そのまわりを金属水素が厚く覆っていると考えられ、中間層には液体の水素とヘリウムがその外側はガスが取り巻いています。
土星は、中心にこそ固体成分を占める核がありますが、主要成分がガスであり外縁の境界が不明瞭なため巨大ガス惑星に分類されます。自転によって惑星は扁球形状を持ち、極よりも赤道部分が膨らんだ扁平状になっています。
土星は恒常的な環を持ち、9つが主要なリング状、3つが不定的な円弧です。知られている限り83個の衛星を持ち、うち63個には固有名詞がついています。衛星にはリング中に存在する何百という小衛星(ムーンレット)は含まれません。
赤道付近では常に風速500メートルの西風が吹き、穏やかな見た目とは裏腹に大気は活発に運動しています。赤道の上空に広がるリングに目を向けると、数センチから数メートルの氷の絡まりであることが分っています。
無数の氷が千本以上のリングを構成し、土星の周りを回転しているのです。土星の半径の5倍の広がりを持つ壮大なリング、その半径は地球から月への距離を超えます。ところがその厚さは驚くほどに薄くわずか数十メートルと考えられています。
自然法則が生み出した驚嘆すべき造形美、土星のリングはどのようにしてできたのかまだよくわかっていません。土星には数多くの衛星が発見されていますが、その中にとびぬけて大きな衛星がひとつ存在しています。
2) 南極に台風の目
土星の直径は約116,464kmで、太陽系惑星では木星についで2番目の大きさです。土星は太陽系で唯一水よりも30%ほど軽く、体積は地球の764倍にもなりますが質量は95倍にすぎません。
土星の大気は外層の96.3%が水素、3.25%がヘリウムで構成され、アンミニア、アセチレン、エタン、プロパン、リン化水素、メタンなどが存在することが分っています。上空に見られる雲はアンモシアの結晶で、下に行くにつれて硫化水素アンモニウムや水に変わります。
太陽からの紫外線が上層大気層で化学反応を起こし、各種の炭化水素が渦を巻きながら拡散して、大気層で地球の雷の1000倍ものエネルギーに匹敵する非常に強烈な稲妻を発生させています。
土星の温度は、大気表面から名部へ進むほど徐々に高くなっています。大気上層の表面はアンモニアの氷で構成され温度はー180℃~110℃です。次の層は水の氷が雲を作るようになりー90℃~ー20℃です。
更に下層では硫化アンモニウムの氷が混合するようになりー40度~20℃。そして最下層では液化したアンモニウムの水滴が含まれるようになり、温度は0℃~60℃になります。土星の中心核は約11,000℃にもなります。
土星の北極は六角形の雲に覆われていることが、ボイジャー1号によって観測されました。北極の六角構造は、直線部の一辺が約13,800kmもあり、土星の自転と同じ速度で回転しています。六角形の雲のある大気層で、極周囲に吹くジェット気流がその下に流れる風に押されて六角形を形成しているそうです。
土星の南極を観測したカッシーニの撮影データから、土星の南極には明らかな台風の目を持つハリケーンのような嵐が固着していることが発見されました。台風の目は木星の大赤斑にも存在せず、地球以外の太陽系天体で雲がつくる台風の目が発見されたのは初めてです。
土星の外周上の自転速度は、木星と同じく緯度によって異なった回転速度を持っています。そのため、土星の一日は緯度によって10時間14分から10時間45分ほどになります。
3) 土星の環
一般的に「土星の輪」呼ばれていますが、正確には「土星の環」と言います。土星の環は、土星の赤道から7000kmから12万kmの距離に広がっていて、その環の厚さは最も厚いところで約1km、最も薄いところで約10mしかありません。
それが何十億個も集まって土星の環を構成しています。土星の環はA~Fまでの環に分かれて、その幅は27500kmもあります。これらの環は細かく数えると全部で6000本以上に分かれています。
土星の環は内側から順にD環、C環、B環、A環、F環、E環の主に9つ環で構成されています。それらを構成しているのは99.9%が純粋な水の氷です。不純物としてソリンやケイ素を含んでいるのもあり、その大きさは直径1cmから10cm程度です。
土星の環は、レコードのみぞのような筋(すじ)がたくさんあり、その環は土星がすけて見えるくらい薄いものでした。環は土星と同じ方向に回転し、その近くに小さな月のような星がいくつも(今見つかっているのは17個)発見されています。そのほとんどは表面が氷でできています。
つまり土星の環は氷の星がぶつかり合ってできた氷や岩のかけらなのです。衝突で星がこなごなになり、細かくなったものが一定の方向にまわることによって美しい環ができているのです。
土星の環の起源には主に3つの説があります。土星の環は、かってはヴェリタスと名付けられた衛星であり、その軌道が限界よりも近くなり、潮汐力によって粉々に砕けて環を形成したとする説があります。
土星の環は土星を形成した物質の残りからされたとする説と、約40億年前の後期重爆撃期にミマスよりも大きい直径400kmから600kmの衛星に大規模な衝突が起こり破壊された塵から形成されたという説もあります。
土星を訪れた探査機は4機です。いずれもNASAが打上げたもので、パイオニア、ボイジャー1号と2号が土星の近くを通り過ぎながら様々な観測を行いました。ただ、観測時間が短く多くの謎が残されていました。
2004年にはカッシーニ探査機が初めて土星の軌道に乗り、よりくわしい観測が行われました。またカッシーニは、搭載していたホイヘンスを土星の衛星タイタンに投下し、月以外の衛星に始めて降り立った探査機となりました。