1 木星と言う巨大惑星
1) 木星の概要
質量はおよそ地球の320倍に達します。地球のような地面を持たず水素とヘリュウムを主成分としているため、巨大ガス惑星と呼ばれます。木星は地球上の6千万倍の放射線の帯に囲まれています。
厚さ1000キロほど大気の底は、あまりの高圧のため水素が液体煮状態となっています。絵具を溶かしたような表面は木星上層を滞留する雲の姿だです。白いアンモニアの雲に硫黄や有機物が混ざり合い幻想的な光景が広がっています。
赤道方向へ伸びる帯状の縞模様は、東西方向へ吹く秒速100キロにもなる風が作りだしています。緯度によって西風と東風が交互に吹くため、風が擦れがいたるところに雲の渦が作られます。
木星のシンボルともいえる巨大な目玉模様もそんな渦の一つです。この大赤斑は反時計回りに回転しながら熱い雲を上昇させています。木星の大気をダイナミックに運動させるのエネルギーは、木星の内部から湧き出す雲がエネルギー源になっています。
木星は太陽から受け取る量の1.5倍の熱量を放出しています。人類はこれまで6機の探査船を木星に送り込み、想像を超える驚異の世界を目にしてきました。しかし、科学者を驚かせ興奮させたのは木星だけではなかったのです。木星が引き連れる巨大な衛星たちでした。
大きな四つの衛星たちは発見者の名を取りガリレオ衛星と呼ばれます。最も内側の軌道を回る衛星イオ、地球の月と同じ直径は3640kmの表面は火山の硫黄で埋め尽くされています。
溶岩の温度はおよそ1500度、地球の火山でこれほど高熱のマグマが吹き出ていたのはおよそ30億年以上も前の時代です。人類はイオで太古の地球を垣間見ることができるのです。
イオとはまるで違う世界、地表が冷たい氷で覆われた衛星ガニメデ。直径は5270キロ、その大きさは惑星である水星を上回ります。接近した探査機はガニメデに地球のような磁場を発見しました。この星の内部では地球と同じように溶けた金属が対流し、磁場を生み出していると推定されます。
2) 木星の外観
木星を天体望遠鏡で観察してみてまず気がつくのは、その表面に何本も平行にならんでいる茶褐色の縞模様です。よく見ると、まんまるな円盤でなく縞模様の方向に少しふくらんでいることや、縞模様のほかに大赤斑や白斑といった斑点があることもわかります。
見えているのは固体の地表面ではなく大気で、木星が縞模様と平行に約10時間で自転していることがわかります。木星は太陽系最大の惑星で地球の約11倍の半径があり、地球の半分以下の周期で自転しているから、赤道部分が遠心力でふくらんで見えるのです。
木星の縞模様は、このような速い自転運動と大気中の大きな流れが関係してできるものと考えられます。赤道付近は秒速約100mの西風が吹き、そして中緯度にいくにつれて西風と東風が吹いている地帯が交互に現われるという特徴があります。
縞の部分は白い帯の部分よりも少し温度が高いことがわかっています。縞は東風と西風のあいだの下降気流がおこっているところで、縞と縞のあいだの帯は上昇気流がおきていて高い雲が見える部分と考えられています。
木星の表面に見える楕円形の大きな赤い斑点、大赤斑は長さが約24000km、幅が約13000kmと地球が2個並ぶほどの大きさがあります。アメリカの探査機パイオニア10号の観測により、温度がまわりよりも低く上昇気流のおきている領域で、ボイジャーの観測によって反時計方向に約6日でまわる大きな渦であることがわかりました。
木星の質量と半径からその平均密度を求めてみると、水の約1.3倍しかないことがわかります。地球や水星金星火星(これらを地球型惑星とよびます)に比べてずっと小さく、むしろ太陽の平均密度に近い値です。
3) 太陽になり損ねた星
地上や惑星探査機の観測からも、木星は水素約90%にヘリウム約10%、つまり太陽とほぼ同じ成分からできているという結果が得られています。惑星の王者のような木星ですが、非常に軽いものからできているのです。
木星の大気中をどんどん下に降りていくと、圧力が急速に増していきます。自分より上にある大気の量がどんどん増え、その重さがのしかかってくるからです。100kmほど降りると、その圧力のために液体状になった水素の層が現れます。
この液体分子状の水素の層は厚さ約2万km、木星の外側3割ほどを占め、その底では圧力が300万気圧に達します。すると水素が液体金属状に変化します。この層は約4万kmほど続き、その底では圧力が3億6千万気圧、温度は約2万度に達します。
巨大な木星は、今から46億年前に太陽系の惑星が作られていく過程でもう少し大きく成長していたら、太陽と同じように自ら光を発して燃えさかる第2の太陽になっていたでしょう。つまり木星は「太陽になり損ねた星」と言われています。
木星は9時間55分という大変早い時間で自転し、また地球に比べて2万倍もの強い磁場をもっています。木星から張り出す強い磁場は、太陽から吹いてくる高速(400km毎秒)で高温(10万度)のガス風(太陽風)をせき止めています。
木星に向かった探査機による観測の結果は、木星磁気圏の中で起こっている宇宙現象と惑星環境は、地球の知識から私たちが想定していたものをはるかに越えているものばかりでした。
磁気圏のなかでは粒子が激しく加速されていること、その加速された粒子が極めて強い電波を宇宙空間に向かって放射していること、木星の衛星イオは太陽系で最も活発な火山活動を行っていて広大な磁気圏に大量の物質を振りまいていること、木星の極には地球が3つも入るほどの巨大なオーロラが発生していることなどが次々と明らかにされました。