はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第11章 第五惑星木星

太陽系の中で大きさ、質量ともに最大の惑星です。木星およびそれと同様のガスを主成分とする惑星(ガス惑星)である土星のことを木星型惑星(巨大ガス惑星)と呼びます。木星の衛星イオに火山があり、エウロパの氷の下に海があるらしい。

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1 木星と言う巨大惑星

 1) 木星の概要

質量はおよそ地球の320倍に達します。地球のような地面を持たず水素とヘリュウムを主成分としているため、巨大ガス惑星と呼ばれます。木星は地球上の6千万倍の放射線の帯に囲まれています。

厚さ1000キロほど大気の底は、あまりの高圧のため水素が液体煮状態となっています。絵具を溶かしたような表面は木星上層を滞留する雲の姿だです。白いアンモニアの雲に硫黄や有機物が混ざり合い幻想的な光景が広がっています。

赤道方向へ伸びる帯状の縞模様は、東西方向へ吹く秒速100キロにもなる風が作りだしています。緯度によって西風と東風が交互に吹くため、風が擦れがいたるところに雲の渦が作られます。

木星のシンボルともいえる巨大な目玉模様もそんな渦の一つです。この大赤斑は反時計回りに回転しながら熱い雲を上昇させています。木星の大気をダイナミックに運動させるのエネルギーは、木星の内部から湧き出す雲がエネルギー源になっています。

木星は太陽から受け取る量の1.5倍の熱量を放出しています。人類はこれまで6機の探査船を木星に送り込み、想像を超える驚異の世界を目にしてきました。しかし、科学者を驚かせ興奮させたのは木星だけではなかったのです。木星が引き連れる巨大な衛星たちでした。

大きな四つの衛星たちは発見者の名を取りガリレオ衛星と呼ばれます。最も内側の軌道を回る衛星イオ、地球の月と同じ直径は3640kmの表面は火山の硫黄で埋め尽くされています。

溶岩の温度はおよそ1500度、地球の火山でこれほど高熱のマグマが吹き出ていたのはおよそ30億年以上も前の時代です。人類はイオで太古の地球を垣間見ることができるのです。

イオとはまるで違う世界、地表が冷たい氷で覆われた衛星ガニメデ。直径は5270キロ、その大きさは惑星である水星を上回ります。接近した探査機はガニメデに地球のような磁場を発見しました。この星の内部では地球と同じように溶けた金属が対流し、磁場を生み出していると推定されます。

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 2) 木星の外観

木星を天体望遠鏡で観察してみてまず気がつくのは、その表面に何本も平行にならんでいる茶褐色の縞模様です。よく見ると、まんまるな円盤でなく縞模様の方向に少しふくらんでいることや、縞模様のほかに大赤斑や白斑といった斑点があることもわかります。

見えているのは固体の地表面ではなく大気で、木星が縞模様と平行に約10時間で自転していることがわかります。木星は太陽系最大の惑星で地球の約11倍の半径があり、地球の半分以下の周期で自転しているから、赤道部分が遠心力でふくらんで見えるのです。木星

木星の縞模様は、このような速い自転運動と大気中の大きな流れが関係してできるものと考えられます。赤道付近は秒速約100mの西風が吹き、そして中緯度にいくにつれて西風と東風が吹いている地帯が交互に現われるという特徴があります。

縞の部分は白い帯の部分よりも少し温度が高いことがわかっています。縞は東風と西風のあいだの下降気流がおこっているところで、縞と縞のあいだの帯は上昇気流がおきていて高い雲が見える部分と考えられています。

木星の表面に見える楕円形の大きな赤い斑点、大赤斑は長さが約24000km、幅が約13000kmと地球が2個並ぶほ大赤斑どの大きさがあります。アメリカの探査機パイオニア10号の観測により、温度がまわりよりも低く上昇気流のおきている領域で、ボイジャーの観測によって反時計方向に約6日でまわる大きな渦であることがわかりました。

木星の質量と半径からその平均密度を求めてみると、水の約1.3倍しかないことがわかります。地球や水星金星火星(これらを地球型惑星とよびます)に比べてずっと小さく、むしろ太陽の平均密度に近い値です。

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 3) 太陽になり損ねた星

地上や惑星探査機の観測からも、木星は水素約90%にヘリウム約10%、つまり太陽とほぼ同じ成分からできているという結果が得られています。惑星の王者のような木星ですが、非常に軽いものからできているのです。

木星の大気中をどんどん下に降りていくと、圧力が急速に増していきます。自分より上にある大気の量がどんどん増え、その重さがのしかかってくるからです。100kmほど降りると、その圧力のために液体状になった水素の層が現れます。

この液体分子状の水素の層は厚さ約2万km、木星の外側3割ほどを占め、その底では圧力が300万気圧に達します。すると水素が液体金属状に変化します。この層は約4万kmほど続き、その底では圧力が3億6千万気圧、温度は約2万度に達します。

巨大な木星は、今から46億年前に太陽系の惑星が作られていく過程でもう少し大きく成長していたら、太陽と同じように自ら光を発して燃えさかる第2の太陽になっていたでしょう。つまり木星は「太陽になり損ねた星」と言われています。

木星は9時間55分という大変早い時間で自転し、また地球に比べて2万倍もの強い磁場をもっています。木星から張り出す強い磁場は、太陽から吹いてくる高速(400km毎秒)で高温(10万度)のガス風(太陽風)をせき止めています。

木星に向かった探査機による観測の結果は、木星磁気圏の中で起こっている宇宙現象と惑星環境は、地球の知識から私たちが想定していたものをはるかに越えているものばかりでした。

磁気圏のなかでは粒子が激しく加速されていること、その加速された粒子が極めて強い電波を宇宙空間に向かって放射していること、木星の衛星イオは太陽系で最も活発な火山活動を行っていて広大な磁気圏に大量の物質を振りまいていること、木星の極には地球が3つも入るほどの巨大なオーロラが発生していることなどが次々と明らかにされました。

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2 衛星イオ

 1) イオの謎

衛星イオから振りまかれる火山ガスの影響が脅威です。衛星イオは地球の月より1回りほど大きい天体ですが、木星の強力な重力の影響で常に激しい火山活動をして、硫黄や酸素などの大量のガスを噴出しています。

このガスは、木星の磁気圏を満たして巨大オーロラの起源になったり、高エネルギー粒子の種になっていることが知られています。しかし、火山からの噴射速度は、とてもイオ衛星の重力を振り切って磁気圏に逃げていけるほど大きくはありません。

どのようにして衛星イオから外に向かって飛び出しているのか、それを知るためにガスの雲から放射される特殊な、そして微弱な光を捕える観測を行います。この観測は、長い時間にわたって連続して行うことが必須です。

専用の望遠鏡による天候の安定した点での観測が必要になります。科学者は可搬型の比較的小さい望遠鏡でも弱い特殊な光を高感度で捕えることのできる装置を開発して、オーストラリア中央部の砂漠やハワイの山頂での観測を行って来ました。

その結果、イオ衛星から外方に向かって飛び出していく様相を鮮明に捕えることができました。現在この結果と計算機シミュレーションとをあわせ、イオ衛星からのガス脱出過程が明らかにされつつあります。

また、木星の磁気圏の中には非常に高いエネルギーを持った粒子が多量に存在します。その粒子はエネルギーが高いため、光の速度に近い早さで運動しています。自然が造った数億ボルトもの加速器が、木星磁気圏の空間に存在していることになります。

自らエネルギーを発しない惑星がどうしてこのような高いエネルギーを作り出すことができるのか、まだその謎は解かれていません。その謎を解く手がかりは、この粒子から放射されている電波の持つ情報にあります。

電波はシンクロトロン電波と呼ばれていますが、遠く6億kmの地球に到達するときには大変微弱なものとなっています。科学者はこの電波を捕えるべく、大型の電波望遠鏡を設置しました。場所は人工電波による障害が少なく、自然電波観測に適した東北大学惑星圏飯舘観測所です。

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 2) イオのマグマ

木星の衛星イオの地殻の下には、深いマグマの海が隠れていることを示す最新研究が発表されました。イオは太陽系で最も火山活動の活発な天体です。それほどの噴火を起こすイオの内部には、溶けた部分がどれだけあるのかという長年の議論に今回の発見が回答を示しました。イオの火山

イオには400かそれ以上の活火山が存在すると、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の惑星物理学者クリシャン・クーラナ氏が発表しました。火山活動は強力で火山の噴煙が約500kmキロ上空まで噴き上がり、宇宙空間にまで達することもあるとしています。

クーラナ氏のチームは、NASAの宇宙探査機ガリレオが収集したデータを再分析しました。ガリレオは1995~2003年に木星の軌道を周回し、その間にイオを含む木星の各衛星への接近通過を繰り返しました。

ガリレオのデータは、イオが木星の巨大な磁場を屈折させていることを電磁誘導というプロセスを用いて明らかにしていました。この電磁誘導は「空港の金属探知機に使われている原理とよく似たものだ」とクーラナ氏は述べています。

クーラナ氏によると、マグマは導電率が高いという。この特性はイオの地下に存在するとみられるものに近い、溶けた岩石を用いた実験で明らかになった。木星の磁場がイオを通り抜ける際、イオにあるマグマの海と相互作用を起こして溶けた岩石の層の外縁に潮流が生じる。

潮流は自ら電磁波を発生させその電磁波の作用で木星の磁力線が屈折することが、ガリレオのデータによって突き止められました。イオのマグマは地表から約30~50km地下の地殻とマントルの間の層に存在するようです。

マグマの層は厚さが少なくとも50kmあり、最大で320kmに達する可能性もあります。さらに、マグマはおそらく完全な液体ではなく、溶けた岩石や結晶が入り混じった状態で、マグマの軟らかさは解けかけた雪と同程度だとクーラナ氏は言います。

この熱い「ぬかるみ」は、木星の巨大な重力が引き起こす潮汐力によって生まれます。木星の軌道を周回するイオが潮汐力にゆっくりと揉まれることで、岩石の結晶が互いにこすれあい膨大な量の熱が生み出されるのです。

マグマの海はひとたび形成されると、内部に潮汐エネルギーを集めマグマ層を熱い状態に保つと考えられます。ドロドロしたマグマの海は、摩擦熱を起こすにはうってつけの環境だとクーラナ氏はおっしゃいます。

イオの火山は多量のイオン化ガスを放出し、それもまた木星の磁場と相互作用するため発見はこれまで不可能でした。磁場とマグマの海が起こすもう1つの相互作用をこの余計なデータと区別して検知できるコンピューターモデルが必要であり、それを開発するのに今まで時間がかかったそうです。

3 衛星エウロパ

 1) エウロパの海

エウロパは土星の衛星エンケラドゥスなどとともに、氷の外殻の下に内部海が存在するのではないかと予想されている天体のひとつです。その表面では内部海からの水もしくは氷殻内部にたまった水が、間欠泉として噴出していると考えられています。

また、探査機ガリレオは非常に興味深い調査結果をもたらした。エウロパの表面下に塩分を含んだ海が広がっていることがわかり、生命が存在する可能性を見出したのです。エウロパ

木星の衛星エウロパの海に、魚のような生命体が生息している可能性があるそうです。エウロパは氷の外殻に覆われていますが、地下の全域に深さ160kmの海が広がっている可能性が高いのです。ちなみに衛星表面に陸地は存在しません。

この海に従来モデルで想定されていた値の100倍の酸素が含まれているという画期的な研究結果が発表され大きな論争を呼んでいます。酸素がこれだけ存在していれば、顕微鏡サイズを越えた生命体をはぐくむことが可能です。

研究チームの一員でアメリカのアリゾナ州ツーソンにあるアリゾナ大学のリチャード・グリーンバーグ氏は、「理論上、エウロパでは魚のような生命体が少なくとも300万トンは生息できる。生命体が存在すると断言はできないが、生命活動を支える物理的条件が整っていることは確実だ」とおっしゃいます。エウロパの氷海

マサチューセッツ州のウッズホール海洋研究所に所属する深海分子生態学者ティモシー・シャンク氏は、今回の研究を受けて次のようにおっしゃいます。「判明している情報に基づくと、エウロパの海底の一部には、地球の深海に存在する熱水噴出孔周辺と非常によく似た環境があるはずだ。この条件下で生命体が存在しないとなるとその方が驚きだ」。

ただし今回の研究が示した結果だけでは、エウロパでどのように生命が進化しているのかは想像に任せるしかありません。結論を出すにはあまりに早急すぎるでしょう。

探査機ガリレオが2000km離れた場所から撮影したエウロパの表面を見ると、約14km×17kmという狭い範囲が捉えられています。画像の右上から左下にかけて、よく目立つ2本の稜線が平行に伸びているのがわかります。

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 2) エウロパの海中探査

NASAのジェット推進研究所によると、この二重稜線の幅は約2,6km、高さは約300mあります。エウロパでは長さ数百kmにも達する二重稜線が表面のいたるところに分布していますが、どうやってこのような地形が形成されたのかは、今までよくわかっていませんでした。

二重稜線

エウロパの内部海から水が上昇してくるなどして、氷殻(厚さ約20~30km)の内部にある多孔質の(すき間が多い)氷の層に貯水層が形成されます。貯水層の水の一部は氷殻の表層にひび割れが生じるとそこに入り込み、やがて凍って貯水層を左右に分ける仕切りとなります。

すると、圧力を受けた水は構造が弱い部分へと仕切りに沿うようにして両側から浸透して氷を押し上げ、氷殻の表面には二重の稜線が形成されることになります。これと同じようなプロセスで形成された二重稜線は、地球のグリーンランド北西部にも存在するそうです。

エウロパでは内部海から氷殻内部へ水が上昇してくると予想されているのに対して、グリーンランドでは氷床の表面にある湖や小川から内部へと水が浸透することで貯水層が形成されるという違いがあります。

地下深くから上昇してきた水が、ある時は間欠泉としてエウロパの表面から噴出し、ある時は氷殻にたまって地形を変えたりします。まるで地球の火成活動を思わせますが、2014年にはエウロパにも地球のようなプレート運動が存在していて、氷のプレートが沈み込んでいる証拠を発見したとする研究成果も発表されています。

エウロパの凍てついた氷殻は、従来の予想以上にダイナミックな活動をしているのかもしれません。2024年の打ち上げ2030年の木星到着が計画されているNASAの無人探査機はこの謎を解くでしょう。

表面から深さ30kmまでを探査できる氷貫通レーダーが搭載され、存在が予想されている内部海、氷殻の厚さ、氷殻内部の構造などが調べられる予定です。

エウロパの表面は氷に覆われていますが、ハッブル宇宙望遠鏡などの観測によって、表面から水を吹き出す間欠泉が見つかっています。当然火山活動などによって温められた高温の水を海底から吹き出す熱水噴出孔もあるはずです。

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3 衛星ガニメデ

 1) ガニメデの概要

2018年10月現在で木星にある衛星の総数は79個確認されています。ガニメデはその中のひとつで、太陽系に存在する衛星の中では最も大きく直径は5262.4kmと惑星の水星よりも大きい衛星です。

ガニメデの表面にはクレーターに覆われた暗く古い地域と、溝や尾根のある明るく新しい地域に分かれています。平均して4.6等級と比較的明るい衛星なため双眼鏡でも観察することができます。木星の内側から7番目の軌道を周り、公転周期は7155日です。

2015年3月にはNASAのハッブル宇宙望遠鏡を使ったオーロラ観測により、ガニメデの厚い氷層の下には広大な海(塩水)が存在することを発表しました。その研究結果によると、ガニメデの海の容積は地球の海よりも大きいと推測されています。

2016年7月から木星の探査を続けているNASAの木星探査機「ジュノー」が目覚ましい成果をあげました。2021年1月には当初7月31日に木星に落下する予定だったジュノーのミッション期間が、2025年9月まで延長されることに決まりました。

6月8日、ジュノーはさっそくガニメデから約1000kmの距離まで近づきその鮮明な姿を捉えました。探査機がガニメデに接近するのは、2000年の木星探査機ガリレオによる接近以来実に21年ぶりでした。

ガリレオ探査機の観測から、ガニメデには固有磁場が存在することが明らかになりました。氷に覆われ暗くてクレーターが多く古い地域と、明るくクレーターが少なく溝地形に覆われている地域に分かれる。ガニメデの溝地形は、伸張応力による正断層地形と考えられている。

ガリレオ探査機の観測から、ガニメデには固有磁場が存在することが明らかになった。中心には流体核、その周りに岩石質の層さらに厚い氷の層が存在する。氷の層の中には地下海が存在する可能性がある。

ガニメデの表面全体に及ぶ多重リング構造になっていることが明らかになりました。半径7800kmに及ぶ太陽系最大規模の衝突クレーターも発見されました。半径150kmほどの小惑星が秒速20kmの速度でガニメデに衝突したとすれば、観測されたクレーターの構造を説明することができます。

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 2) 酸素原子は存在せず

スウェーデン王立工科大学のローランズ・ロース氏らの研究グループは、「ハッブル」宇宙望遠鏡による木星の衛星ガニメデの観測データを分析した結果、ガニメデの希薄な大気に水蒸気が存在する証拠が初めて明らかになったとする研究成果を発表しました。

直径5268kmのガニメデは既知の天体としては太陽系で9番目に大きく、惑星である水星よりも大きな衛星です。ガニメデは独自の磁場を持つことが明らかになり、その内部は氷、岩石、鉄が分化した層状の構造を成していると考えられています。

ガニメデ大気中の酸素原子の量を測定するために、2018年にハッブル宇宙望遠鏡の「宇宙起源分光器」を使って取得されたガニメデの観測データと、1998年および2010年に取得された観測データを組み合わせて分析を行いました。ガニメデ

その結果、見出された水分子はガニメデ表面の氷が昇華することで大気中に供給されていると考えられました。過去の分析結果とは異なりガニメデの大気中には酸素原子がほとんど存在せず、水分子のみが存在する可能性が示されたそうです。

ガニメデ表面の氷は110ケルビン(摂氏マイナス163度)よりも高温の場所では昇華して水蒸気になり、これよりも低温の場所では氷に戻るとされます。

ガニメデの表面温度は80ケルビン(摂氏マイナス193度)から推定150ケルビン(摂氏マイナス123度)の範囲で変化しているといい、ガニメデの赤道付近で正午を迎えた地域の大気では昇華した水分子の量が酸素分子を上回るいっぽう、他の地域の大気は酸素分子が大半を占めているようです。

木星の衛星ガニメデは太陽系最大の衛星で、水星や冥王星よりも大きな天体です。ガニメデでは表面から150kmほど下に内部海が存在すると予想されていますが、NASAによると大気中の水分子は内部海から蒸発したものではないとされています。

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3 衛星カリスト

 1) カリストの概要

カリストは、ガリレオ衛星のなかでは一番外側にあります。太陽系の衛星では、ガニメデ、タイタンに次いで大きな天体です。表面の氷は衝突クレーターに覆われていて、エウロパ、ガニメデのような水平運動や噴出による地形は存在していません。

バルハラ盆地と呼ばれる、巨大衝突でできた直径2000kmを超える多重リング地形があります。カリストの内部の大部分は未分化で、氷と岩石が混在していると考えられます。表面には数100kmの氷の層があり、その下部は融けている可能性があります。

カリストは、ガリレオ衛星のなかでは一番外側にあり、太陽系の衛星では、ガニメデ、タイタンに次いで大きな天体です。 表面の氷は衝突クレーターに覆われ、エウロパ、ガニメデのような水平運動や噴出による地形は存在しません。バルハラ盆地と呼ばれる巨大衝突でできた直径2000kmを超える多重リング地形があります。

カリストは水星よりわずかに小さいだけですが、質量は3分の1です。 カリストとガニメデには岩石の核があり、その回りを水あるいは水の氷のマントルが包んでいて、表面は氷でできていると思われます。カリストの表面は完全にクレーターで覆われています。

カリスト

表面の氷の最上部は、厚さはおよそ200km前後の氷の層になり、その下は岩石や金属などの混合物でできていることが予想されています。内部に液体水が存在する可能性があることが分かりました。

カリストの表面は、太陽系内で最も衝突クレーターが多いのが特徴です。表面のクレーター密度は飽和状態に近く、新しいクレーターが形成される度にそれによって古いクレーターが消えるという傾向にあります。大きな山脈や火山、その他の内因性の地殻変動の特徴はカリストには見られません。

表面に見られる唯一の大きな地形は、破砕と断崖と堆積物を伴った衝突クレーターと多重リング構造です。カリストの表面は地質学的に異なる複数の領域に分割できます。クレーター平原、明るい平原、明るい滑らかな平原と暗く滑らかな平原、特徴的な多重リング構造と衝突クレーターを伴った構造です。

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 2) クレーターの特徴

クレーター平原は表面の大部分を覆っており、氷と岩石の混合物からなる古い岩石圏からなっています。明るい平原はブルやロフンと言った明るい衝突クレーター、古い大きなクレーターの残部、多重リング構造の中心部、クレーター平原の中に孤立した領域からなります。

これらの明るい平原は氷主体の衝突堆積物だと考えられます。明るい滑らかな平原はカリスト表面の小さい割合を占め、ヴァルハラやアスガードと言った構造の縁や溝に見られクレーター平原の中に孤立した斑点としても見られます。

地形は衛星の内部活動と関連していると考えられていましたが、ガリレオによる高分解能の画像ではこれらの領域は大規模に破壊されたこぶ状の地形と関連し、表面が再形成されたことを示すいかなる証拠も見られなかったのです。

ガリレオの画像では小さく暗い滑らかな領域の全面積は1平方km以下であることが明らかになり、また周囲の地形を取り囲むように分布していることが明らかになりました。これらは氷火山の堆積物であるかもしれません。

明るい平原といくつかの滑らかな平原は比較的若く、周囲のクレーター平原と比べるとクレーターの個数が少ないようです。カリストに見られるクレーターの大きさは、解像度の限界である直径 0.1km のものから、多重リング構造を除くと100kmを超えるものまで存在します。

直径が5km以下の小さいクレーターは単純なお椀状の構造か底が平坦な形状を持ち、5~40kmのものは一般に中央丘を持ちます。直径が25~10kmになる大きな衝突クレーターの場合は、ティンドルクレーターのように中央丘の代わりに中心部に穴が見られます。

直径が60kmを超える最大級のクレーターは、中心にドーム状の地形を持つものがあり、これはクレーター形成後の構造隆起によって形成されたものであると考えられています。

直径が100kmを超える数少ない非常に大きなクレーターと、明るい衝突クレーターは異様なドーム状の構造を持ちます。これらは異様に浅い構造をしており、ロフンクレーターのように多重リング構造への遷移の途中であると考えられています。

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 3)比較的単純な地質学的基準

カリストの表面に見られる最も大きい衝突地形は多重リング構造です。特に大きなものは2つです。ヴァルハラが最も大きく、直径が 600kmの明るい中央の領域と、中心から1800kmの距離にまで広がった環状の構造を持ちます。

2番目に大きいものはアスガードで、直径は1600kmと測定されています。多重リング構造はおそらく天体衝突後に、柔らかい物質やあるいは海などの液体の物質の上に横たわる岩石圏における同心円状の破壊が発生したことによって形成されたと考えられています。

連鎖クレーターは表面を直線上に横切る長い鎖状に連なったクレーターであり、ゴムル連鎖クレーターなどが代表例です。これらはカリストに衝突する前に、木星に接近したのに伴って潮汐力で破壊された天体によって形成されたか、あるいは非常に浅い角度で表面に天体衝突が発生したかで形成されたと考えられています。

カリストに見られる異なる特性を持つ領域の相対的な年齢は、クレーター密度から決定することができます。古い表面ほど多数のクレーターが見られ、絶対的な年代の調査は行われていませんが、理論的な予測に基づくとクレーター平原の年齢は45億歳であると考えられ、形成年代はほぼ太陽系の形成にまで遡ります。

カリストの全体の特徴はガニメデに非常に似ているものの、地質学的な歴史はガニメデよりもずっと単純であったように思われます。表面は大部分は衝突やその他の外的要因によって形作られています。

表面に溝を持っているガニメデとは異なり、カリストの表面にはプレートテクトニクスなどの地質活動の痕跡はほとんど見られません。カリストの比較的単純な地質学的歴史は、他のより活発で複雑な経緯を持つ天体と比較を行うための基準を惑星科学者に与えています。

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参考文献:国立天文台、NASA(アメリカ航空宇宙局)。