はげちゃんの世界

人々の役に立とうと夢をいだき、夢を追いかけてきた日々

第10章 太陽系小惑星

小惑星は火星と木星のあいだをまわる小さな天体です。これらは小惑星や準惑星と呼ばれます。小惑星は現在25万個以上が確認され、ほとんどが100キロメートル以下のため肉眼では見れませんが、望遠鏡や双眼鏡で見られても断定は難しいようです。

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1 小惑星発見の歴史

1774年に発表されたラグランジェの論文によれば、ある適当な速度を持っている3つの天体が1つの正三角形の頂点にあって、それぞれ万有引力の法則によって引き合っているならば、3体は永久に正三角形の関係位置を保ちながら運動するというのです。

つまり、太陽と木星を結ぶ直線を1辺とする正三角形の頂点(太陽から見て木星の60度前方、あるいは60度後方)を回っているこれらの小惑星は、木星の大きな摂動の影響を受けることなく、常に安定した運動をしているということになるという考えです。

1801年1月1日、イタリア・シシリー島のパレルモ天文台のピアッジは、おうし座にある8等級の星が、わずかづつ移動していることを発見して、24日にドイツの天文学者ボーデに報告しました。

当初は彗星と思われていましたが、数カ月の位置観測の末、ドイツの天文学者ガウスによって軌道がもとめられました。軌道の形は彗星のものではなく惑星のものであることが分かりました。

新惑星には、シシリー島の女神の名前をとってケレス(またはセレス)という名前がつけられました。1802年3月には第2の小惑星パラスが発見され、その後ジュノー、ベスタと相次いで発見され、似たような軌道を回るこれらの微小天体を小惑星と分類するようになりました。

ちなみに、最初に発見されたケレス、パラス、ジュノー、ベスタは「四大小惑星」と呼ばれていますが、現在ケレスは「準惑星」に分類されています。ケレスの直径は約1000kmですが、直径が500kmをこえるものは他に2個、直径250kmをこえるものでも十数個しかありません。

木星とほぼ等しい軌道要素を持つ小惑星群があります。アヤクス、オデュセウス、ネストル、メネラウス、テラモン、アガメムノン、ヘクトル、アキレス、アンティオクス、ディオメテス、アンキセス、パトロクルス、トロイルス、エネアス、ブリアムスの15個に代表され、トロヤ戦争に参加した勇士の名前を付されたこれらの小惑星を「トロヤ群小惑星」と呼んでいます。

小惑星のほとんどは、火星と木星の軌道の間を運行していますが、中には標準の軌道を大きく逸脱したものが発見されています。それらを特異小惑星と呼んでいます。2009年8月19日現在、木星には3261個のトロヤ群小惑星が見つかっています。

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また、火星や海王星にもトロヤ群小惑星が見つかっています。海王星より遠い太陽系の果てにも、数多くの小天体が発見されています。もっとも、冥王星を除けば発見第一号は1992年のことですから、最近になってようやく本格的な観測と研究が始まった領域ともいえます。

最初のうちはこうした天体も「小惑星」と呼ばれてきましたが、現在では小惑星帯とはまったく異なる天体のグループ、「太陽系外縁天体」として認識されています。

現在見つかっている太陽系外縁天体のほとんどは、天体がベルト状に存在していることを予言した科学者の名前にちなんで「エッジワース・カイパーベルト」とも呼ばれる領域に存在します。エッジワース・カイパーベルトに存在する天体は、短周期彗星の元となっているとも考えられています。

一方、さらに外側には長周期彗星の元となる「オールトの雲」の天体が存在すると予想されています。太陽系外縁天体の代表は、1930年に発見された準惑星の冥王星です。小惑星帯と比べて大きめの天体が多く、現在最大のもので準惑星に分類されるエリスの直径は約2400kmです。

冥王星やエリスのように大きくて、準惑星にも分類されている太陽系外縁天体のことを特別に「冥王星型天体」と呼びます。2009年8月現在、冥王星型天体は冥王星、エリス、マケマケ、ハウメアの4つです。また、1000をこえる太陽系外縁天体が見つかっています。

太陽系天体のうち惑星や衛星、彗星などを除くものは「小惑星」と呼ばれます。2009年8月6日現在で458,235個の小惑星が見つかっています。太陽系天体のうち惑星や衛星、彗星などを除くものは「小惑星」と呼ばれます。

火星と木星の軌道の間で太陽の周りをまわる小惑星、ほとんどが数キロから数十キロで地球からの観測では暗い小さな光の点にしか見えません。1991年木星へ向けて飛行中のガリレオが、ガスプラと名づけられた小惑星に遭遇しました。

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2 小惑星からわかること

 1) 小惑星イダとの遭遇

長さおよそ19キロ、ガスプラのいびつな形をした層の表面には多くのクレーターが残されていました。人類は初めてこの時に、小惑星の姿をまじかに見たのです。ガリレオはさらに長さ58キロのイダに接近しその姿をとら小惑星イダえました。

イダは小惑星にもかかわらず、直径1.5キロの小惑星を従えていました。ガスプラと同様に形が不規則にゆがんだイダ、このような小惑星は小惑星同士が衝突して作られたと考えられるのです。

重力が弱い小惑星は球体になろうという力が小さいため奇妙な形なのだろうと考えられています。探査機は長さ19キロの小惑星エロスに接近し、およそ1年にわたって観測し続けました。

なぜ、科学者は小惑星に探査機を送り込むのでしょうか。それは地球やほかの惑星探査で知ることのできない、太陽系初期の情報が残されているからです。小惑星は46億年前の誕生時の物質が封じ込められたタイムカプセルなのです。

小惑星を造る物質は大きな惑星のように誕生時の熱で溶けた経験がなく、風雨による侵食や火山活動もありません。2005年9月小惑星イトカワに探査機が接近しようとしていました。

イトカワは大きさはわずか530メートルという小さな小惑星です。探査機はランデブーを果たし、イトカワの質量を3500万トンと大きさの割にきわめて軽く、平均密度が小さな天体であることが分かりました。

イトカワはまるで岩石がより集まってできたような構造で、その内部には40%もの隙間が残されていると推測されました。さらに表面はごつごつした岩に覆われ、他の小惑星のように砂に覆われているのは一部に限られていました。

重力の弱いイトカワでは、小惑星との衝突でできる細かい砂が宇宙空間へ飛び散ってしまったのです。イトカワは平均半径が約160m、長径500mあまりしかない小天体であり、これはこれまで 惑星探査機 が探査を行った中で最も小さな天体です。

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 2) 小惑星イトカワ

はやぶさは2010年6月に地球へ帰還し、同年11月にはやぶさのカプセルコンテナ内にイトカワの微粒子が多数存在することが明らかとなり、その後イトカワの微粒子についての分析が進められています。

イトカワは1998年にアメリカ人によって発見された近地球型小惑星に分類される天体で、日本のロケット開発の父、糸川英夫博士にちなんで名付けられました。1994年に「はやぶさ」計画が立ち上がり、当初の目標はネレウスという小惑星が選ばれました。

小惑星などの天体の表面を覆っている堆積物で、固結していない堆積物をレゴリスと言います。第三候補で選ばれたイトカワには岩がごろごろ転イトカワがっていて、少ないにしろレゴリスが存在していました。それも二分されて分布していたのです。

岩石やレゴリスの分布を調べると衝突の歴史が分かります。どんな衝突がどれくらい起こって、どれくらいの大きさと量の破片が出たのかを考えることができるのです。天体内部の物質構造もある程度推定できるようです。

平たい地域(レゴリス地域)で、太陽の光がイトカワ上でどのように反射するか、その光の強度や色合いはどうなのかをいろいろな方向や角度から研究しています。

天体から見た太陽方向と観測地点方向のなす角度を位相角といいますが、この位相角が0度に近づき天体が太陽から真正面に光を受けるようになると、その天体が急速に明るくなるという性質があります。

この性質を「衝効果」といい、岩や砂の区別や表面の組成などを調べることができます。太陽とはやぶさとイトカワを一直線に並べて位相角を0度に近づけて観測したところ、イトカワにも衝効果があることが分かりこれを詳しく解析しています。

小惑星は塵が集り微惑星ができて進化したと考えられていますが、今見ている小惑星はその後破壊を何度も繰り返してできてきたものでしょう。どのような衝突を経てできたのかは、イトカワのように表面に岩がある天体が大きな手がかりとなります。

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 3) 母天体破壊時の破片

イトカワには、広い範囲にたくさんの岩塊があり、最大級になると長さは約50mにもなります。岩塊は表面にクレーターが生成されるときの破片と考えられ、クレーターの大きさとそのクレーターから放出される最大破片の大きさには経験的な法則があります。

50mという最大級の岩塊は、イトカワにある一番大きなクレーターでも生み出せません。元天体(母天体)があって、それが破壊された時に出た破片がイトカワとなり、同時に出たより細かい破片がその上にふり積もったものと考えられます。

また、大きな割れ目が走っている岩塊も発見されています。イトカワの南極から北極にかけての滑らかな地域のレゴリスは、表面の重力の勾配に応じて集まってきたのではないかと考えられています。

レゴリスの空間分布や粒子サイズの分布、岩塊やクレーターの空間分布やサイズ分布についても解析が進められ、これらの結果はイトカワが受けた衝突の歴史、さらには小惑星や太陽系の進化を探る手がかりとなります。

イトカワの推定密度は、地球上の普通の岩石よりやや小さいことが分かりました。このことは、今まで考えられてきたよりも大きな内部のすき間(空隙)が存在する可能性を示しています。

岩石そのものの中に空隙があるためなのか、それとも岩石の積み重なりによる空隙によるものかは分かりませんが、サンプルを回収できれば空隙の本質がより明らかになり、小惑星の構造、さらには隕石や地球そのものの理解へとつながるでしょう。

イトカワの表面の色彩を強調すると、場所によって色合いが多少違う場所があります。これが、物質の違いを反映しているのか、宇宙風化(宇宙塵の衝突などによって、惑星表面の反射率が低下し、赤みを帯びる現象)を示しているのか解析が進められています。

はやぶさは日本の小天体探査の第一歩です。何十万個とある小惑星は、それがもつ表面の反射率が光の波長によってどのように変わるか(反射スペクトル)で、それぞれのタイプに分類されています。

コンドライト隕石に近いと思われている明るいSタイプと、炭素質コンドライトに近いと思われている暗いCタイプがもっとも主要なものです。イトカワはSタイプに属す小惑星ですから、次回はCタイプの小惑星を探査すると新たな発見があるでしょう。

コンドライト隕石は岩石を主成分とする隕石で、ケイ酸塩の球粒組織であるコンドリュールを多く含み、溶融を経験せず、岩石質と金属質が分かれていないものの総称です。炭素質コンドライトは太陽系が生まれた頃に形成された始原的な隕石で、その多くのものには当時の炭素質物質(有機物)や水が残されていると考えられています。

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 4) リュウグウは宇宙の化石

小惑星リュウグウは太陽系初期の天体と考えられるいわば宇宙の化石です。その構造を知れば、原始惑星の構造や惑星形成過程の様子を知ることができるそうです。約46億年前の太陽系が誕生したばかりのころに、岩石と氷の微粒子からリュウグウのもととなる母天体がつくられました。

それから約500万年が経過すると母天体の氷がとけて約40度の温泉が湧き、今のリュウグウを構成している鉱物がつくられたと考えられます。その後、衝突により母天体が壊れてリュウグウが生まれました

はやぶさ2が搭載した中間赤外線カメラの撮影画像で、リュウグウ表面が非常に温まりやすく冷めやすい性質であることが分りました。詳しくモデル化すると、リュウグウは極めてスカスカの多孔質(低密度)な物質で、凹凸が激しいということがわかります。

ふわふわなダストが集まり、低密度のスカスカな微惑星が形成されます。これがさらに集まってリュウグウの母天体が形成されます。このとき中心部では圧力が高まり、密度の高いコアのようなものが形成されます。リュウグウ

リュウグウがひし形の理由は、形成初期のリュウグウの自転速度が早かったため、赤道部分が膨らんだと考えられます。その後、何らかの要因で自転が遅くなり現在のリュウグウになったと考えられます。

日本の探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」で採取したサンプルを2つのチームが分析した結果、「リュウグウ」には水と反応してできた鉱物が豊富に含まれていたことから、「リュウグウ」の元となった天体には大量の水があったと考えられるそうです。

「はやぶさ2」が採取した「リュウグウ」のサンプルは、国内の8つのチームが生命に関係するアミノ酸や水の痕跡などの分析し、このうち岡山大学とJAXA=宇宙航空研究開発機構が中心となった2つのチームが分析結果を発表しました。

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 5) リュウグウにアミノ酸

岡山大学のチームによると「リュウグウ」のサンプルから23種類のアミノ酸が検出され、この中には神経伝達物質として知られるグルタミン酸やアスパラギン酸、コラーゲンに含まれるグリシン、それに代謝に関係しているバリンなど、生命の活動に関係が深いアミノ酸が含まれていたそうです。

電子顕微鏡の観察や化学分析で、サンプルの中に水と反応してできた鉱物が豊富に確認されたことから、「リュウグウ」の元となった天体には大量の液体の水があり、天体どうしの衝突などで細かく分裂して徐々に水が失われたと考えられるそうです。

リュウグウは太陽系誕生の約500万年後から今日までの間、100度以上の高温にさらされていないこともわかりました。これは、当時の物質が熱の影響を受けずに残っていることの裏付けになります。

サンプルの隙間の量を示す空隙率が40%余りと高く、当初含まれていた水や氷が宇宙空間に放出されたことなどを示しています。太陽系が形成されてから260万年後で、水の温度は0度から30度程度と推定されるようです。

リュウグウはもともと水が豊富で「ほうき星」とも言われる「すい星」の核のようなものだったと考えれられ、そうした天体では有機物が化学的に進化して生命の誕生につながった可能性もあります。

現在、ダストの集積から惑星が形成されることは予想されていますが、その詳しい仕組みは分かっていません。リュウグウの多孔質構造は、初期の太陽系の天体では一般的な構造であった可能性があります。

もし原始惑星のほとんどが多孔質だったとすると、これまで考えられていた密度の高い原始惑星よりも、崩壊しやすいが容易に元の状態に戻れる可能性があるそうです。

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 6) 太陽系の起源にも影響か

リュウグウの試料は太陽系初期の記憶をふんだんに残しているとともに、人類がこれまで手にしたどの隕石よりも新鮮な状態を保ったものであることがわかりました。太陽系の標準物質を覆す結果が出たので、ある意味、惑星科学の転機になるような研究成果を残せたようです。

小惑星イトカワから帰還した初号機はやぶさは、隕石のもとが小惑星であることを実証しました。「太陽系の起源についても考え直さないといけないですね」と、北海道大学創成研究機構/大学院理学研究院 圦本尚義(ゆりもと ひさよし)教授が話されていたそうです。

2019年7月、はやぶさ2によるクレーター作成と2度目のタッチダウンでリュウグウの地表に人工的に穴を掘り、土砂を採取するという少し荒っぽい採取法を採りました。小さな天体は重力が小さく、ガスを天体のまわりに繋ぎ止めておくことができないかもしれません。

月の大きさ以下の小惑星には大気がなく、太陽から降り注ぐ紫外線を遮るものがありません。そのような小惑星の地表にあった有機物は、紫外線によって既に分解されていると考えられます。

紫外線は人の皮膚で止まるように小惑星の表面でも0.1mm程度しか潜らないので、少し掘れば紫外線の影響をあまり受けていない有機物があるかも知れません。ただ、小惑星の表層は他の小惑星との衝突などにより耕されていて、地下1mくらいまでは有機物が少ない可能性もあります。

そこで、地表を深めに掘って採取することになりました。リュウグウの表面に銅の塊を衝突させることによって、地表を高温に曝すことなく深さ3mの人工クレーターを作ることに成功しました。土の色が変わったので地下の有機物が露出したと考えられます。

続くタッチダウンでは人工クレーターの底に降りたいのですが、底には大きな岩があり着陸には危険が伴います。掘った土が積もっている平らなところを探すと、着陸できそうな場所はたった1か所で10m×3mの広さしかありません。

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 7) 母天体の起源は

JAXA宇宙科学研究所(宇宙研)の工学チームがシミュレーションと訓練を重ねこの難しい挑戦をクリアしました。目的の有機物を含んだ試料が採取できたと考えられます。現在のリュウグウの表面温度は80℃と高いため、できたときにあった表面の水は蒸発したと推定されます。

水と水を含まない鉱物が反応してできる含水鉱物に入った水は、300~500℃の高温にならなければ出てこないので、採取した試料を調べれば水の痕跡は確認できるはずです。はやぶさ2からのリモート観測により、小惑星はほぼ均一の物質で覆われていることが分かっています。

公開している写真では明るく見えますが、リュウグウは石炭のように真っ黒だそうです。地球外物質の分析で最も気を遣うのは、地球の物質で汚染しないことです。

地球の大気に晒しただけで、ミクロな粘土層の間にまるで吸湿剤のように水が入ってしまい、本来の姿が分からなくなります。また、酸素による酸化も進む。試料は大気中ではなく純度の高い窒素中で扱います。

試料は光学顕微鏡でやっと見えるほど小さいので、ガンドルフィカメラに固定する作業は専用のグローブボックス(外気を遮断して作業ができる容器)内で行われます。グローブボックスの扉は二重になっていて、試料に大気が触れないように工夫されています。

リュウグウの光学特性分析から、炭素質コンドライト隕石の母天体がC型小惑星であることは推定されていた。はやぶさ2がリュウグウの試料を地球に送り届けたことで、C型小惑星が炭素質コンドライト隕石の母天体であるかどうかが実際に確かめられるようになった。

小惑星リュウグウの試料から見つかった始原的な鉱物を分析した結果、ビルト彗星と似た傾向を示したそうです。リュウグウの母天体が生まれた場所は太陽から遠く、彗星の故郷に近いかもしれない。

小惑星リュウグウの試料に含まれる鉄や銅など様々な元素の同位体組成は、イブナ型炭素質隕石と呼ばれる珍しい隕石に類似していたそうです。その組成は太陽系の内側で形成された物質とは異なることから、リュウグウもイブナ型炭素質隕石も太陽系外縁に起源があると予想されています。

資料を分析すると、どちらも摂氏1000度以上の高温環境だった太陽系の内側で形成され、やがて太陽系の外側へと輸送されたと考えられる鉱物がありました。難揮発性包有物の方が固まるのが早いので、その分だけ太陽から遠くへ運ばれたとされています。

その結果、リュウグウやイブナ型炭素質隕石の母天体が形成された場所は、通常の炭素質隕石の母天体よりも太陽から遠く、彗星が生まれるような領域に近かったのではないかと考えられるそうです。

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 8) 太陽系外縁天体

海王星より遠い太陽系の果てにも、数多くの小天体が発見されています。もっとも、冥王星を除けば発見第一号は1992年のことですから、最近になってようやく本格的な観測と研究が始まった領域ともいえます。

最初のうちはこうした天体も「小惑星」と呼ばれてきましたが、現在では小惑星帯とはまったく異なる天体のグループ「太陽系外縁天体」として認識されています。

現在見つかっている太陽系外縁天体のほとんどは、天体がベルト状に存在していることを予言した科学者の名前にちなんで「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれる領域に存在します。

エッジワース・カイパーベルトに存在する天体は、短周期彗星の元となっているとも考えられています。一方、さらに外側には長周期彗星の元となる「オールトの雲」の天体が存在すると予想されています。

太陽系外縁天体の代表は、1930年に発見された準惑星の冥王星です。小惑星帯と比べて大きめの天体が多く、現在最大のもので準惑星に分類されるエリスの直径は約2400kmです。

冥王星やエリスのように大きくて、準惑星にも分類されている太陽系外縁天体のことを特別に「冥王星型天体」と呼びます。2009年8月現在、冥王星型天体は冥王星、エリス、マケマケ、ハウメアの4つです。また、1000をこえる太陽系外縁天体が見つかっています。

準惑星の「セドナ」は、2003年に発見された天体で、太陽の周囲の非常に離れた距離を長円形の軌道で回っている。まだ発見されていない惑星の正確な数は不明ですが、少なくとも2個、恐らくはもっと多いことが計算で示されているそうです。

これらの新しい惑星は海王星よりも遠い軌道を回っており、ほかの小さな天体に与える引力から推測して地球よりも大きい可能性がありそうです。2012年には、「オールトの雲」(太陽系を球殻状に取り巻いていると考えられる仮想的な天体群)の中で、「2012VP113」と名付けられた準惑星が見つかりました。

冥王星よりもはるか遠くにある氷と塵でできた天体で、その軌道は最大で地球の10倍の大きさがあり、暗くて氷に閉ざされた惑星の影響を受けていると推測されています。現代の太陽系形成論では、太陽系外縁天体は基本的に、46億年前の太陽系形成時の始原的な天体である「微惑星」の生き残りと考えられています。

2 小惑星による災害

 1) 恐怖の小惑星

宇宙からくる危険の最大のものは小惑星です。もし何の対策も講じなければ、人類の大半は消滅するかもしれないというのがバリンジャークレータ-私たちの未来です。地球への衝突は過去にもありました。およそ5万年前、直径40mほどの小惑星が、米国アリゾナ州に衝突、巨大な穴を残しました。

時速4万km以上の速度で衝突した小惑星は、直径は1200m、深さは170mというバリンジャークレータ-を残しました。6600万年前には直径がその200倍以上もある小惑星が1.5倍以上の速度で地球に衝突しました。チクシュルーブ小惑星です。

1超トン以上の小惑星が時速7万2千kmで衝突し、地球上に繁栄していた恐竜の絶滅を招きました。2018年7月にNASAは地球近傍小惑星地球近傍小惑星の写真の写真を公開しました。2018年1月までに発見された地球近傍小惑星は18000個です。

比較的大きな小惑星の存在は分りましたが、直径30m以下の小惑星を見つけ出す必要があります。直径30m以下の小惑星でも都市を直撃すれば大きな被害が出ます。すべての小惑星を発見することが重要です。

小惑星との衝突を回避する方法は、小惑星を破壊するか軌道をそらすかです。小惑星を破壊するとそのかけらが地球へ衝突するかもしれません。最も安全なのは軌道をそらすことですが、そう簡単にはできません。

2018年11月25日太陽観測衛星ソーホーは大きな物体が太陽へ飛び込む姿を捉えました。衝突のスピードは時速150万kmを超えていました。これは最も予測が難しい危険な天体、太陽系外苑部からくる彗星です。オウムアムア

2017年オウムアムアと名付けられた巨大な恒星間天体が太陽系を通過しました。この天体は科学者たちを困惑させました。ある人は彗星だと考え、ある人はエイリアンの宇宙船だと指摘しました。新たな研究によると、オウムアムアは他の太陽系に属する冥王星のような惑星のかけらだそうです。

天文学者がオウムアムアの存在に気づいたときには、すでに時速31万5400kmの速さで地球から遠ざかっていました。そのため、超高層ビルほどのサイズの奇妙な物体を観測できる期間は、わずか数週間しかなかったのです。

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 2) 地球に接近する小惑星

1898年8月にベルリンでウイットによって発見された小惑星エロスは、その軌道の平均距離1.46天文単位と計算されました。これは火星の平均距離1.52天文単位より小さく、当時、小惑星は火星軌道と木星軌道の間にあると信じられていた従来の概念を打ち破った最初の小惑星となりました。

しかも、離心率0.22とかなり大きく軌道傾斜が小さいために、最大で地球に0.15天文単位まで近付くことがわかりました。0.15天文単位と言えば約2230万キロの距離です。さらに、1932年にはアモール、アポロという2つの地球に接近する小惑星が発見されました。

とくに、アポロは平均距離1.49とエロスとほとんど変わらず、離心率が0.566と異常に大きく、軌道の最内周は金星軌道の内側まで入り込み、最外周は火星軌道の外側にまでおよんでいました。

そして、最接近時には0.076天文単位(約1140万キロ)まで地球に近付くことがわかりました。以後、このタイプの小惑星を「アポロ型小惑星」と呼んでいます。

アポロ型小惑星としては、1949年に発見されたイカルスが有名で、近日点距離0.19天文単位、離心率0.83という値を持っています。イカルスは近日点付近では、水星軌道よりさらに太陽に接近することになります。

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 3) 小惑星の大気圏突入

2018年12月アメリカ軍は地球の大気圏内で巨大な爆発を探知しました。場所はアラスカ沖ベーリング海上空です。爆発したのは小惑星でした。直径およそ10m重さ千トン以上の小惑星が秒速30km以上の猛スピードで地球へ突っ込んで来たのです。

この小惑星は比較的小さく、海の上空で爆発したので被害はありませんでした。もし、もう少し大きなものだったり速度が早かったり、別の場所だったりしたらと考えるとゾッとします。なにより恐ろしいことは、予測できなかったことです。

幸運にも被害はなかったのですが、ほぼ年に1度核爆弾が大気圏で爆発しているようなものです。でもほとんどは海の上空なので誰も気が付きません。しかし、いつかは都市部へ衝突が起こるのです。これは避けられない事実です。

あらゆる可能性を考えて対策の訓練をしているのですが、現実に危機が迫っていたらどうでしょう。小惑星は時速9万5千kmで大気圏に突入します。突進してくる小惑星は空気の圧力を受けて超高温になります。その熱が小惑星を過熱し輝かせるのです。

これを火球と言います。小惑星の大チェリャビンスクの隕石気圏侵入が2013年にチェリャビンスク上空で観測されました。火球となった小惑星は熱と圧力で爆発します。チュルビンスクの空中爆発は猛烈な衝撃波を放ちました。衝撃波は160kmもの彼方まで達し7千もの建物が被害を受けました。

チェリャビンスクでの負傷者は1500人にまでおよびました。直径20mほどの小惑星の隕石の重さは推定約10トン、高度50~30キロで砕けましたが相当な威力でした。NAKAはこれを深刻に受け止め、小惑星の衝突を最優先課題としています。

対策として地球防衛シュミレーションが考えられました。地球防衛シュミレーションでは、その3倍もの小惑星が襲ってきたと仮定しています。広島へ投下された原爆の1千倍もの威力です。

200人の科学者が5日間、巨大小惑星との衝突を回避できるかシュレーションを行ったのです。そこが都市なら何100万人ともいえる死者が出るでしょう。こうした危険な小惑星は2000個以上見つかっています。

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 4) 小惑星アトフィス

地球に近づく危険な小惑星アトフィス。エンパイヤステートビルほどの大きさのものが時速2万6千kmで疾走しています。アトフィスの名はエジプト神話の破壊の神に由来します。2029年にはかなり地球に接近しますが、この時は地球に衝突しません。

直径約340mのアポフィスは2004年に発見されて以来、小惑星のなかでも特に衝突の危険性が高い「潜在的に危険な小惑星(PHA:Potentially Hazardous Asteroid)」の一つとして注視されています。

アポフィスについては2029年や2036年に地球へ接近する際の衝突リスクはないとされていたものの、2068年に衝突する可能性は否定されておらず、NASAのジェット推進研究所が管理する地球近傍天体研究センターはその確率を15万分の1と見積もっていました。

2021年3月6日頃、アポフィスは地球から約1700万km(地球から月までの距離の約44倍)離れたところを通過していきました。NASAは今回の接近にあわせて深宇宙通信網「ディープスペースネットワーク」の通信アンテナ(送信用)とグリーンバンク天文台の電波望遠鏡(受信用)を組み合わせたレーダー観測を行いました。

通過していくアポフィスまでの距離を約150mの精度で観測することに成功したといいます。なお、アポフィスは2029年4月13日に地球の静止軌道よりも低い高度約3万2000km以下を通過していくと予想され、一部地域からは通過するアポフィスを肉眼で見られるそうです。

小惑星アポフィスが仮に地球に衝突した場合、威力が広島型原爆の2万5000倍と予想されます。NASAはこの8年後の通過について差し迫った危険ではないとした上で、接近する小惑星を観測するまたとない機会になると期待を寄せています。

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参考文献:国立天文台、NASA(アメリカ航空宇宙局)。