1 第三者管理方式の整備
1 第三者管理方式とは
管理者を組合員ではなく外部の専門家に任せる方式です。第三者管理方式のパターンは三通りあります。
① 理事会がある場合
管理者=理事長 第三者が管理者である理事長に就任する場合。
② 理事会がある場合
管理者≠理事長 第三者が管理者に就任し、区分所有者の理事長は管理者では
ない場合。
③理事会がない場合
第三者が管理者に就任し、理事長がいない場合。
2 第三者管理方式の始まり
管理組合役員の担い手不足(高齢化や無関心)
2017年6月に標準管理規約の改定が行われ、外部専門家が理事長・監事として就任が可能になりました。
2017年6月に外部専門家の活用ガイドラインが策定され、第三者管理方式の導入検討砲身が公表されました。
第三者管理方式は、投資・リゾートマンションですでに普及し、制度整備で居住用マンションでも第三者管理方式が増加し始めました。
3 第三者管理方式の導入状況
管理者の選任状況
[出典]平成20年度、平成25年度、平成30年度マンションン総合調査(端数処理の関係上、合計が100%にならない場合があります。)
想定されていたマンション管理士よりも、管理会社が管理者になる割合が増加していました。管理会社の約半数が新築マンションで第三者管理方式を展開しています。
4 問題事例と検討状況
通帳と印鑑の保管①
通帳と印鑑の管理状況
管理会社で保管が76%、管理組合名義が80%、管理会社・管理者個人が20%という結果でした。
通帳と印鑑の保管②
(事例)管理会社元社員による管理組合財産の着服
2015~2023年の期間で、決算報告書と残高証明書は改ざんされ、通帳も開示していないのに区分所有者は信用していたのです。
元社員は担当している14組合のうち8組合の印鑑を所持していました。したがって、自由に預金からお金を引き出せる立場にあったのです。
管理組合財産の横領・着服される事件はいまだに年数件発生しています。右上の写真は、2024年2月25日付マンション管理新聞の写しです。
通帳と印鑑の保管③
(検討状況)管理組合講座の印鑑等は漢字が保管を必須にすべきです。
監事は総会決議で選任することが必須です。
少なくとも1人は外部専門家(マンション管理士等)を選任し、組合員からも選任することが事故防止のために望ましいと言えます。
5 管理者の権限
(問題事例)標準管理規約における総会・理事会の議決事項が管理者単独でできるようになっています。
(例)・ 管理費及び使用量の額並びに賄課聴取の決定
・ 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
・ 仕様細則等の制定、変更または廃止
・ 専有部分の修繕委関する承認または不承認
・ 管理費等の未納者への訴訟・法的措置
・ 管理者による監事の選任
(検討事項)
・ 標準管理規約の総会決議事項を管理者権限としない。
・ 理事会決議事項について管理者権限の許容事項を整備。
・ その他に追加すべき事項を検討中。
管理者の指定・任期
(問題事例)
規約に管理会社を管理者として記載している
特別決議が必要。管理者の変更はハードルが高い。
(検討状況)
・ 管理者の指定は総会のお決議で選任・解任
(規約に管理会社名を等を記載しない)
・ 管理者の人気を規約に設ける。任期を原則1年。
(毎年開催する総会で選任決議)
組合員の総会招集権
(問題事例)
・ 総会招集要件が標準管理規約よりも高く設定
(他の要件が付加されている)
・ 総会招集要件が削除されている
(通常は組合員の5分の1以上で議決権の5分の1以上)
(検討状況)
・ 総会招集件の設定を整備・明確化
日常の管理における取引・プロセス・情報開示
(問題事例)
・ 日常的な工事報告が事後報告になる
・ エレベータの修繕工事の費用説明がない
・ 不要な修理を強いるケースがみられる
(検討状況)
・ 管理者と同一グループへの発注は集会決議による承認必衰に
・ 管理者ができる発注金額の設定(○万円以下)
管理者が管理会社の場合は、利益相反の可能性は残ります。
大規模修繕における取引・プロセス・情報開示
(問題事例)
・ 自社グループに相見積もりなく発注(割高な費用負担)
・ 設計管理方式で進めても
管理者(=管理組合)の意向で修繕内容・施工業者選定が決定
(注意)
同一グループが選ばれた場合、施工会社の意向によって発注された管理組合の財産が
毀損される恐れがある。
(検討状況)
・ 案A.組合員で修繕委員会を設立して進める
管理者は関与せず
・ 案B.管理者が組合員アンケート等で意見を募りながら進める
管理者の姿勢によっては、そのグループ会社に有利な誘導の危険性も
大規模修繕は組合員で薦めるのが望ましい。
意見反映の体制づくり
(問題事例)
・ 総会以外で組合員の意見を伝える機会がない
(例)
・ 意見箱の設置やオンライン意見聴取)
・ アンケート調査の実施・投票制度の導入)
・ 意見交換・相談会の実施)
・ コールセンタ-やメールによる相談窓口の設定
(検討状況)
・ 組合員の意見反映のため五の体制づくりについて
・ どのような規定を設けるか?
・ 管理意識の熟成をどうしていくか
2 検討スケジュール
マンション関係者との調整を踏まえ、改正外部専門家と活用ガイドラインを取りまとめ中です。近いうちに公開予定です。(公益財団法人)マンション管理センター